1998年10月に軽自動車が現在まで続く新規格へ改訂された時、安全性向上のためボディが一回り拡大を許されたことにより、さまざまなデザインやコンセプトが試された時期がありました。それらは結局ワゴンRに始まるハイトワゴン、もっと背の高いスーパーハイトワゴンに集約されていきますが、販売台数はともあれ面白い車の多い時期でした。ダイハツ ネイキッドもそんな1台です。

 

ダイハツ ネイキッド / © 1998-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION.

 

各社一斉に試行錯誤を競った新規格軽自動車ブーム

 

ダイハツ ネイキッド / © 1998-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION.

 

戦後に軽自動車が登場してから何度か企画改訂を経ていますが、現在の姿に至る大きな改正は1990年1月の排気量660ccへの拡大と、1998年10月の衝突安全性の能引き上げで、それに伴ったボディ寸法の拡大が成されて今の形になりました。

そんな660cc化の差異は各社とも『既存車(550cc)の排気量拡大と前後バンパー拡大による最低限の衝突安全性能クリア』に留まり、たまたまその時期に改良がきまっていたものを除けばモデルチェンジすらされない例がほとんどでしたが、1998年10月の改正は軽自動車を根本から変える事に!

旧660cc時代の1993年に登場したワゴンRで『これからの軽自動車はトールワゴンが主役』という空気が出来上がった上に、かつては狭くて実用性が低い後席のために、車重や価格が増加してまで利用されなかった5ドア車が、急激に台数を伸ばしたのです。

そして小さくて軽く、キビキビ走るシティコミューターや、強力なターボエンジンを載せればリトルダイナマイトとして人気のあった3ドアホットハッチは急激に廃れ、バブル時代に開発された軽スポーツABC(AZ-1、ビート、カプチーノ)も価値観の多様化に拍車をかけました。

そんな”一石を投じればその波紋は津波になりかねない”ような状況の中、衝突安全性能向上のために根本的なフルモデルチェンジを余儀なくされるならばと、各社とも自らが今後の軽自動車界でリーダーシップを取る一石を投じるのだと躍起になって、さまざまなモデルを投入。

その中の1台が、1999年11月に発売されたダイハツ ネイキッドでした。

 

文字通り、見たままの 『むき出しの素材感』ネイキッド

 

ダイハツ ネイキッド / © 1998-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION.

 

ネイキッド(L750系)はダイハツがL700系ミラ(5代目) / L900系ムーヴ(2代目)をベースに開発した派生モデルの1つで、ムーヴほど車高は高く無いもののミラよりスペース効率に優れ、それでいて機械式立体駐車場も利用可能なセミトールワゴンでした。

同時期のダイハツ軽セミトールワゴンには他にMAX(L950系・2001年10月発売)もありましたが、後のソニカに近い軽GT路線のMAXに対しネイキッドは最低地上高にやや余裕を持たせたSUVルックで、現在のスズキ ハスラーに近い箱型ルックスです。

ドアヒンジを外装式としてプレスを単純化、外装各部も外側から単純にボルト止めされており、まさに「骨組みにパカパカと組み付けました!」と言わんばかりの素材むき出し感。

このネイキッドスタイルが東京モーターショー1997で人気を呼んで市販化が決定。

メカニズムはミラ / ムーヴとほぼ共通だったもののデザインだけでも大きな売りとなり、2004年4月まで販売されています。

 

早すぎた『軽クロスオーバーSUV』再販すればキャストより売れたかも?

 

ダイハツ ネイキッドF  / 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%8F%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%8D%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%83%E3%83%89

 

ネイキッドの魅力はそのデザインだけではありません。

外側からボルト止めされただけに見える前後バンパーなどの一部外装は、実際に個人のDIYで簡単に脱着可能で、純正オプションのエアロパーツやネットオークションで仕入れた交換部品を自分で装着する事も可能でした。

さらにインターネット黎明期であった当時は個人でHPを作ってオーナーズクラブを立ち上げ、『オフ会』に参加するカーライフが一般的で、知り合った仲間同士で色違いのパーツを交換し、オリジナルカラーのネイキッドを作ることができたのです。

そんなことが手軽にできる車は少なくとも国産車ではほとんど存在せず、当時のライフスタイルに非常にマッチしていたのがネイキッド最大の魅力でした。

さらにはフルトリムが当たり前になっていたドア内装の内張りもあえて省略するなど簡素に見せた部分もかえって新しく、その後のトールワゴン全盛期やライフスタイルの変化で広まりこそしなかったものの、個性と実用性を兼ね備えた実に優れた1台で、丸目2灯式のヘッドライトもレトロ&ネイキッドスタイルだったものの、後に近代的な角目2灯式ヘッドライトを装備した『ネイキッドF』が追加されると、ダイハツ初の軽乗用車、L37Sフェローに似てきてかえってレトロチックになりました。

惜しかったのは、ネイキッド登場時点で既に流行の兆しはあったとはいえ、現在のように「とにかくクロスオーバーSUVを出せば売れる」という時代では無かったため、今のスズキ・ハスラーほどのヒット作とはならなかったこと。

現在のダイハツが販売しているハスラー対抗馬はキャスト・アクティバですが、ハスラーをネイキッドの再来と考えるユーザーにとっては、ダイハツに2代目ネイキッドを作ってほしいところだったと思います。

 

主要スペックと中古車相場

 

ダイハツ ネイキッド / © 1998-2018 TOYOTA MOTOR CORPORATION.

 

ダイハツ L750S ネイキッドターボ 1999年式

全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,550

ホイールベース(mm):2,360

車両重量:800kg

エンジン仕様・型式:EF-DET 水冷直列3気筒DOHC12バルブ ICターボ

総排気量:659cc

最高出力:64ps/6,400rpm

最大トルク:10.9kgm/3,600rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:0.1万~119.8万円(各型含む)

 

まとめ

 

個性的な軽自動車が多数登場した新規格軽自動車導入初期に、画期的なメカニズムを持つでもなく、むしろベース車に対して見た目でわかりやすい簡素化をファッションとして取り入れ、それだけで一時はかなりの人気を誇ったダイハツ ネイキッド。

今や判で押したように同じようなデザインで過剰とも言える装飾か、高度なメカニズムで差別化を図らねばならないモデルが多い現在からすると、このネイキッドのような「単純だけどユーザーの欲しいというツボを刺激した車」は新鮮な存在。

2014年に久々の軽クロスオーバーSUV、スズキ ハスラーが登場して大ヒットとなった時、本来ならこういう仕事を得意としていたダイハツが先を越された!と感じたファンは少なくなかったと思います。

ハスラーよりも10年以上前に似たようなコンセプトを持って勝負に出ていたダイハツには先見の明があったと言えるかもしれません。

今もっともハコ型ボディを極めた同社のウェイクなどをベースに、2代目ネイキッドのようなモデルが再来することを、切に願わずにはいられません。

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