クルマの運転に欠かせないパーツといえば、ステアリングです。そして”ナルディ”はステアリングホイールに革命を与えたブランド。そのナルディが、レーシングカーを作っていたことを知っていますか。今回は、ナルディが「ル・マン24時間耐久レース」に参戦したマシン”ビシルーロ”を、その経緯や歴史と合わせてご紹介しましょう。

出典:https://www.24h-lemans.com/

イタリアの自動車産業発展に貢献した男 エンリコ・ナルディ

ステアリングホイールで有名なブランド”ナルディ”の創設者である、エンリコ・ナルディは、イタリアの自動車業界発展に貢献し、カリスマとも称えられる実業家です。

1907年にイタリア・ボローニャで誕生したナルディは、自動車関連のエンジニアおよびデザイナーとして活躍。エンジンやサスペンション、ブレーキなど、クルマに必要なパーツすべての作りに大きな影響を与えました。

そしてエンツォ・フェラーリやビンチェンツォ・ランチアなど、有名な自動車業界の先駆者たちのもとでテストドライバーを務め、経験を積んでいきます。

すぐれた発想力を持ち、25歳からすでにオリジナルの車体を設計するなど、才能を発揮。1950年に始まったフォーミュラ1(F1)のアルファロメオチームのマシンや、小型な2シーターカーの開発、クラシックカーレースでの活躍が認められ、1951年に手作りでのステアリングホイールの製造を開始します。

その製品の洗練されたデザインが、カーインテリアにアクセントを加えられると高評価。多くの自動車メーカーからの支持を受け、さらには手掛けたマシンがF1などのモータースポーツでチャンピオンを獲得するなどの活躍も見せ、ナルディを多くの人々や企業から信頼の厚いを得るメーカーに、育て上げていったのです。

ナルディ・ビシルーロとは

https://twitter.com/RealSardonicus/status/1350906345277575169

F1マシンやオリジナルカー、パーツの開発に長けていたナルディは、1954年にフランス・サルテサーキットで行われる名物レース「ル・マン24時間耐久レース」へ参戦します。

ランチアやフェラーリのテストドライバーで得た経験を生かしたいナルディは、「性能指数賞」と呼ばれる特別賞の獲得を目指し、クルマの開発に注力。その中で1955年に生まれたマシン”ビシルーロ”は、今までの参戦マシンとは一線を画すクルマとして話題となりました。

”双胴魚雷”=ビシルーロの愛称を得たナルディのオリジナルカーは、左右非対称のボディデザインを採用。片側にドライバーのコクピットと燃料タンク、反対側にエンジンとトランスミッションを搭載した車体バランスを実現しています。

車体中央は空力を重視した凹凸があるデザインに仕上げられ、450kg程度の軽量なボディを生かす仕掛けを採用。一般乗用車は車体前部に、フォーミュラカーは後部にエンジンを備えているのに対して、エンジンをコクピット横に備えた珍しいパターンのクルマでした。

ル・マンへのチャレンジ結果は

1955年のル・マン24時間耐久レースに挑戦したナルディ・ビシルーロは、サバイバルレースになる事が多いル・マンで、当然のごとく困難を極めます。

そして、わずか3時間で他車の追い越しによるハプニングでリタイヤ。魚雷のようなデザインが施されたビシルーロは、あっけない結果でル・マン挑戦の幕を閉じたのです。

まとめ

ステアリングホイールで多くのクルマファンや自動車業界関係者をうならせてきたナルディ。

大昔にモータースポーツへ自社参戦をし、奇抜なデザインのクルマで果敢な挑戦をしていたことを、初めて知った方も多いのではないでしょうか。

ビシルーロは現在、イタリア・ミラノにある「レオナルド・ダ・ヴィンチ記念国立技術博物館」に展示され、余生を送っています。

機会があれば、その奇抜なデザインにうっとりしてみてはいかがでしょうか。

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