かつてのミニバンや軽バンは、前輪よりも運転席が前にあるキャブオーバー型が主流でした。しかし、昨今ではボンネットがあるミニバンや軽バンばかりです。スペース効率だけを考えれば、キャブオーバー型の方が有利であるにも関わらず、なぜボンネットがあるミニバンや軽バンが増えたのでしょうか。

出典:https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/release-f5303611374b3a0856b2d6bf51013dc5-190801-02-j

衝突試験の義務化がミニバンや軽バンのスタイルを変えた

ボンネットがあるミニバンや軽バンが増えた理由には、1993年に改定された「道路運送車両法の保安基準」により、1994年から義務付けられた「衝突試験」が影響しています。

衝突試験は、1994年に始まった前面衝突のフルラップ試験から始まり、1995年にブレーキ性能試験(2015年に終了)、1999年に側面衝突試験、2000年にオフセット前面衝突試験と、試験項目が拡大。現在では、衝突軽減ブレーキ試験までが、行われています。

しかし、キャブオーバー型のミニバンや軽バンの場合、前面衝突をした際に、乗員の安全や衝突したときのクラッシャブルゾーンの確保が難しく、安全基準を満たせません。

そのため、全長を伸ばしてボンネットを設けたり、キャビンスペースを少し犠牲にしてクラッシャブルゾーンを設けたりするようになったのです。

また、軽自動車は、衝突安全の観点から1998年に軽自動車規格が変更され、全長と全幅を拡大することで、衝突安全性を向上させました。

なお、軽自動車の衝突試験は、1999年から開始されています。

万が一の事故が起きたときに、乗員や歩行者・自転車を保護する衝突安全ボディの採用により、スペース効率に優れるキャブオーバー型のミニバンや軽バンが、減っていったのです。

出典:https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/02assessment/car_h26/data/pamphlet_car_h26.pdf&ved=2ahUKEwiEhva18YzvAhWadXAKHcLLAskQFjAFegQICRAD&usg=AOvVaw3VBaj3xqwdtmHXk1b-lfAB

キャブオーバー型はスペース効率が良いけど衝突安全面で不利

キャブオーバー型のワンボックスミニバンや軽バンは、限られたサイズの中で、スペースを最大限に活用できる最適なレイアウトです。

特に仕事用の車では、大きな荷物や長さのある荷物を積載することが多くあり、荷物をより多く積載するためには、ラゲッジスペースの長さが必要です。

そのため、事業用の車はキャブオーバー型のミニバンや軽バンが好まれます。

しかし前述したように、衝突安全の観点から見ると、運転席と助手席が前輪よりも前にあるキャブオーバー型は、衝突したときに最前席の乗員が危険な状況になってしまう可能性が高まってしまいます。

また、前面から衝突した際に命が助かったとしても、潰れたキャビンスペースにより、救助が困難を極める事も考えられます。

人の命を守るために、車の構造変更や衝突試験が導入されたことで、キャブオーバー型のミニバンや軽バンの数が減少していったのです。

ただし、キャブオーバー型のミニバンや軽バンが完全に姿を消したわけではありません。

一部の車種においては、現在でもキャブオーバー型に近いセミキャブオーバー型ボディが採用されているモデルも存在。

ちなみに、現在販売されているセミキャブオーバー型のミニバンや軽バンは、衝突安全基準をクリアしているため、安心です。

出典:https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/30486338.html

ボンネットは安全性を高めただけではなかった

前面衝突のフルラップ試験やオフセット前面衝突試験などの衝突安全をクリアするためには、ボンネットを設け、クラッシャブルゾーンを作ることが有効です。

また、ボンネット部分にエンジンやトランスミッションを搭載することで、キャビンスペースおよびラゲッジスペースの床面を低くすることができます。

床面が低ければ、乗員の乗り降りや荷物の出し入れが容易です。

ボンネットを設けたミニバンや軽バンは、キャビンスペースの長さこそ少し犠牲になったものの、衝突安全をクリアしながら、ユーティリティを向上させることに成功。さらに、ボンネットを設けることで、乗用車らしいスタイリングも獲得しています。

出典:https://www.suzuki.co.jp/car/spacia_custom/

ベースとなる基本設計が前輪駆動や乗用車になったミニバン

近年のミニバンや軽バンでは、前輪駆動や乗用車の基本設計が採用されたモデルが増えていることも、ボンネットのあるミニバンが普及した理由のひとつと言えるでしょう。

かつてのワンボックスといえば、車両の中央や後ろ側にエンジンを搭載した車種や後輪駆動を採用したモデルが多くラインナップされていました。

しかし近年では、前輪駆動のシャシーをベースとした車種が増えています。

前輪駆動のレイアウトは、エンジン・トランスミッションをボンネット内に搭載することができる上に、床面の高さを下げたり、フロアトンネルをなくすことが可能です。

そのため、車内の高さや広さを確保するためには、前輪駆動レイアウトが最適と言えるのです。

出典:https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/32256270.html


まとめ

衝突安全の観点から数を減らしていったキャブオーバー型のミニバンや軽バンは、セミキャブオーバー型へ姿を変えたり、前輪駆動をベースとしたシャシーを採用することで、ボンネットがあるミニバンや軽バンに変化していきました。

ボンネットがあるミニバンや軽バンは、車両全体の長さが大きくなってしまうものの、床面を低くすることができたり、衝突時の安全を確保できたりするメリットも存在します。

それらのメリットにより、現在の主流ボディスタイルになっていると言えるでしょう。

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