”バッジエンジニアリング”は、クルマ好きでも耳慣れない単語かもしれません。1台のモデルをより多く販売するために取られる方法の1つで、街なかでも気が付かないうちに、すれ違っているはずです。そんな、”兄弟や姉妹”とも言えるクルマの販売方法は、近年拡大傾向になっています。

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同じクルマを別のメーカーでも販売している”バッジエンジニアリング”

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「バッジエンジニアリング」は、ある一台のクルマを、別のメーカーで異なる車名やブランドとして販売する手法です。

別名、OEM(Original Equipment Manufacturing)やリバッジとも呼ばれ、メーカーのエンブレムを差し替えてエクステリアデザインを変更するなど、差別化が図られています。

みなさんが街なかで見かけるクルマたちも、同じような外観でありながら、実は販売しているメーカーが異なる場合があるのです。

バッジエンジニアリングのメリットとデメリット

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一台のクルマが、別のメーカーから別のネーミングやブランド名で販売される、バッジエンジニアリング。

そのメリットとデメリットを、挙げてみました。

メリット:メーカーラインナップを手軽に揃えられる

バッジエンジニアリングのメリットで真っ先に挙げられるポイントは、「メーカーラインナップ」を手軽に揃えられる点です。

特に、バッジエンジニアリングが活用されているジャンルは商用車。

営業用の商用バンやトラックなど、同じ車種でメーカーのバッジを変えたクルマたちを、街なかで見かける機会は多いでしょう。

自社で生産していないジャンルの車種を、他社に依頼して供給してもらい販売できるようにして、ラインナップの強化を手軽に図れる強みがあります。

また、供給する側には、生産したクルマを他社で販売できるので、販売経路を増やせるメリットも備えているのです。

受注側も供給側も互いに”win-win”となれる仕組みが、バッジエンジニアリングの強みとなります。

デメリット:ほとんど同じ内容のモデルであるので差別化が図りにくい

バッジエンジニアリングのデメリットとしては、差別化が図りにくい点です。

外観から内装、装備のほとんどが、供給元と供給先で同じモデルを販売するため差別化がしにくく、違いが判りづらい点が挙げられます。

中には、フロントグリルなど、外観の違いで見分けがつくようになっているモデルもありますが、メーカーバッジのみの違い程度でとどめられている場合がほとんどです。

加えて、供給先のメーカーで販売されているモデルを購入する場合、ユーザーには下取り買い取りでのリセールバリューが供給元のモデルよりも下がってしまう難点があります。

バッジエンジニアリングの代表例

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それでは、バッジエンジニアリングの代表例をご紹介しましょう。

みなさんが何気なく街なかで見かけているクルマも実は、メーカーバッジが異なっているだけかもしれません。

その1:トヨタ・プロボックス/サクシード=マツダ・ファミリアバン

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「ファミリア」は、マツダの乗用車ラインナップを長く支えたネーミングです。

現在は、商用バンのネーミングとして使用されています。

1994年から2018年まで日産自動車、2018年以降はトヨタより供給を受けて販売されています。

トヨタを代表する商用バン「プロボックス/サクシード」と外観はほぼ同じ。フロントボンネットに張り付けられたメーカーバッジが異なる仕様となっています。

装備内容もトヨタが誇る衝突回避サポートシステムをそのまま取り入れているなど、プロボックス/サクシードが、マツダのディーラーでも手に入るのです。

その2:日産・セレナ=スズキ・ランディ

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スズキといえば、軽自動車で販売台数No.1をダイハツと争う印象が強いメーカーですが、実は普通乗用車も扱っています。

普通乗用車ラインナップの最上位に位置する「ランディ」は、日産 セレナのバッジエンジニアリングにあたるクルマです。

セレナとの違いは、フロントグリルやメーカーエンブレム、一部装備類が異なるのみ。

しかし、上記のポイントを除けば、セレナそのもので、軽自動車に乗っているユーザーが買い替えの際にチョイスできるラインナップを増やす狙いがあります。

その3:スズキ・ソリオ=三菱・デリカD:2

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軽自動車の名車を生み出し続けているスズキが手掛けたハイトールコンパクトカーが、「ソリオ」です。

実は、ソリオが三菱自動車でもバッジエンジニアリングを活用し、販売されています。

三菱のミニバンで長く使用されている、「デリカ」のネーミングを背負った「D:2」。

軽自動車やコンパクトカー、SUV、ミニバンなどを揃えるラインナップで、その間を埋める役割を担っています。

2020年に登場した3代目 MB37S型は、マイルドハイブリッドシステムを搭載した環境にやさしいパワーユニットと、室内の広さをさらに確保するためにボディサイズを拡張しつつ、取り回しの良さをキープしたモデル。

三菱自動車の販売に、大きく貢献しているクルマです。

まとめ

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街なかを見ると、上記で挙げた車種以外にも、バッジエンジニアリングを活用したクルマがたくさん走っています。

自動車メーカーが、ラインナップの合理化や効率化を目指しておこなっているバッジエンジニアリング。

クルマを買おうか迷っている際は、バッジエンジニアリングを活用するモデルたちに注目し、お得かつ人との違いを味わってみてはいかがでしょうか。