モータースポーツで活躍したAW11

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前年にデビューしたAE86がグループAレースで活躍したのとは対照的に、AW11が主な活躍の場としたのはジムカーナやダートトライアル、ラリーといった、「競技会」でした。

特にジムカーナでは、エンジンなど重量物が車体のZ軸(旋回中心)にあるため、ターンセクションではコマのようにヒラヒラと回る事ができた事。

さらには、同門ライバルであるAE86とはレイアウトの違いでデフも異なり、LSDの進化でAW11の方が優った事から立ち上がり加速にも優れ、一躍最強クラスのマシンにのし上がったのです。

 

オクヤマS1Dと激闘を繰り広げたADVAN MR2

中でもAW11最高峰の戦いといえば全日本ジムカーナDクラスでしょう。

当時の名ドライバー、山本真宏選手の駆るADVAN MR2と、遠藤毅志選手のミッドシップ・スーパーD車両、トムスオクヤマS1Dによる激闘が行われました。

カローラFX用のカウルを被りながら中身は純レーシングカー(元はダートラ車)というS1Dに対し、市販車ベースのADVAN MR2の劣勢は明らかながらも山本選手は善戦、1990年6月のジムカーナフェスティバル第2戦ではS1Dを下す大勝利をあげています。

このように、SW20のデビュー後もAW11は改造範囲の広いクラスで引き続き活躍を続けたのでした。

トヨタ AW11 MR2(初代・最終型1.6Gリミテッド スーパーチャージャー)のスペック

全長×全幅×全高(mm):3,950×1,665×1,250
ホイールベース(mm):2,320
車両重量(kg):1,180
エンジン型式:4A-GZE
エンジン仕様:直列4気筒DOHC16バルブ スーパーチャージャー
総排気量(cc):1,587
最高出力:145ps/6,400rpm
最大トルク:19kgm/4,400rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:MR
中古相場価格:690,000〜1,490,000 円

 

幻のグループSマシン、トヨタ222D

折しもWRC(世界ラリー選手権)では、過激なチューニングが施されて高速化したグループB時代が到来していました。

そこではプジョー205T16やランチア・デルタS4などミッドシップ4WDの独壇場となっていたのです。

トヨタもグループBから進化移行予定だったグループSにターゲットを絞り、AW11をベースに3S-Gを搭載して4WD化したミッドシップ4WDターボマシン「222D」を開発。

打倒プジョー、ランチアを目指して熟成を勧めていたものの、1986年にヘンリ・トイヴォネンの死亡事故でグループBの廃止、および進化系のグループSも消滅したため、222Dが世に出る事はありませんでした。

トヨタ 222D(AW11改 試作グループSラリーマシン)のスペック

全長×全幅×全高(mm):3,985×1,880×1,290
ホイールベース(mm):2,470
車両重量(kg):1,023kg
エンジン型式:3S-GTE改
エンジン仕様:直列4気筒DOHC16バルブ ICターボ
総排気量(cc):2,053
最高出力:500馬力以上
最大トルク:およそ60kgm
トランスミッション:5MT
駆動方式:トルクスプリット4WD
中古相場価格:- 円

 

2代目SW20は段階的な熟成が特徴

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Photo by Michael Joseph

AW11の成功に勢いを得たトヨタは、今度はコロナ / カリーナとプラットフォームを共用し、FF化していたセリカをベースに変更。

1回り大きくなるとともに、2リッターDOHCの3S-GE、または同ターボの3S-GTEを搭載して1989年モデルチェンジしました。

今回はNA、ターボともに型式は同じSW20です。

しかしAW11から1転、足回りなどの熟成不足で走行安定性、制動力、ステアリングレスポンスともに「著しく不良」と言われ、その散々な評価は現在に至るまでSW20のエピソードには欠かせないほどでした。

その通称「I型」を徹底的に見直すマイナーチェンジが1991年に行われ(通称II型)面目を一新すると、1993年のマイナーチェンジ(通称III型)でNA / ターボともにパワーアップし、これがSW20の決定版となります。

その後は1996年の一部改良(通称IV型)でABSやトラクションコントロールの変更、1997年にはNA仕様の3S-GEをVVT-i化して200馬力にパワーアップした一部改良(通称V型)を受け、1999年まで生産されました。

 

時代の変化でマイナー車に

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Photo by MIKI Yoshihito

しかし、III型デビュー時点でSW20のモデルライフは既に尽きていたのです。

世はスカイラインGT-Rやスープラのようなハイパワーマシン、あるいはランサーエボリューションやインプレッサWRX STIのようなハイパワー4WDになっていました。

その中で唯一の2シータースポーツだったSW20は「走るだけで実用性無し」とされて、急速に影が薄くなっていったのです。

しかし、モータースポーツの場ではまだまだ活躍の場がありました。

 

初代に続きモータースポーツでも活躍

実はそのモータースポーツでも、4WDターボの熟成と共に叩き出される形となり、一時期SW20は短命のモータースポーツマシンに終わるかに思われていました。

出展:https://twitter.com/seino_takashi

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しかし、駆動方式や排気量でクラス分けがなされるようになると、ラリーの2輪駆動部門やダートトライアルの2WDクラスでSW20が復活。

90年代後半には手頃なレースベースとしてJGTC(全日本GT選手権、現在のスーパーGT)で活躍姿が見られるようになったのです。

出典:http://ms.toyota.co.jp/

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さらに2000年代に入ってからのジムカーナで、ほぼ公道仕様フルチューンと言えたA車両から改造制限の厳しいN車両に移行すると、使用可能なタイヤなどの関係でFD3S(RX-7)と共にSW20が復活。

ミッドシップレイアウトを活かした旋回性能と、抜群のトラクションで戦闘力の高いマシンとなり、その後も長く使われています。

トヨタ SW20 MR2(2代III型・2.0GT-S)のスペック

全長×全幅×全高(mm):4,170×1,695×1,235
ホイールベース(mm):2,400
車両重量(kg):1,260
エンジン型式:3S-GTE
エンジン仕様:直列4気筒DOHC16バルブ ICターボ
総排気量(cc):1,998
最高出力:245ps/6,000rpm
最大トルク:31kgm/4,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:MR
中古相場価格:298,000〜1,690,000 円

 

まとめ

Photo by Tommy Wong

世のクルマがFFへと流れていく中、それでも後輪駆動スポーツカーを残す方法のひとつ、FF流用型ミッドシップスポーツの日本代表がMR2だったと言えるでしょう。

海外ではSW20の後継であるMR-Sも「MR2」名で販売されましたが、日本でのMR2はSW20までの2代こっきり。

MR-Sが当時世界的に流行していたライトウェイト・オープンスポーツとしてパワフルな動力性能を求めない「雰囲気派」であり、ストイックな2シータースポーツだったAW11、SW20とキャラクターが異なった事を考えれば、それで良かったのでしょう。

現在では安価なミッドシップ・スポーツなど望むべくも無く、「あの頃は良かった」という時代に属する1台となっています。