昔なら専門誌を読み漁り、今なら中古車情報サイトやオークションサイト、フリマアプリで探しまくる「魅力的な中古車」ですが、ついつい注目してしまうのが「ASK(価格応談)」表記です。一体どのような意味があるのでしょう?

同じ予算でも1ランク上の車が欲しい人に魅力ある中古車店 / Photo by promich

ASK(価格応談)とは何?

華やかに飾りつけられた目玉商品もあれば、「ASK(価格応談)」な車も… /©photoAC

「ASK」は何かの略ではなく、英語で「尋ねる」や「質問する」という意味ですが、中古車業界では文字通りの「価格応相談」、つまり「この車の値段を知りたければ、問い合わせてください」という意味です。

中古車情報サイトで、例えば掲載台数が数十台ある車種の相場を見ようと思い、価格が高い順に並べ直した際などに、一番上に表示された車が思わぬ高額!あるいは意外と安いなど、いろいろな感想を持つと思います。

しかし、本当に一番高い車は、その1台ではないかもしれません。なぜなら、価格が高い順でも安い順でも、並べた一番最後に来るのが「ASK」と表示された車となるからです。

このASKは、「この店で、この車を売ってはいますが、値段は誰にでもわかる形では公開しませんよ」と宣言しているわけですが、なぜこのような表示となっているのでしょうか。

値付けの理由を説明しにくい

コンディション維持に手がかかっていそうな1963年型ジャガーMl.II / Photo by SoulRider.222

「ASK」表記の車では、写真や基本的な装備の有無、その車の来歴など、その情報サイトに掲載する際に、お店の側で入力できる最低限の欄については公されているものの、さらに細かい情報を備考欄や宣伝文句として記載しないケースが多々あります。

中古車にはノーマルと異なる仕様であったり、あるいは過去に有名人が所有していた、今では入手困難なパーツがついているなど、特殊な仕様や来歴を持つものもあり、さらには「レストア」と呼ばれる修復作業で苦労を重ねた車も、存在します。

しかし、それら全てを説明してしまうと、長文になるため読みにくくなってしまったり、ただ面白い読み物のように扱われ、興味本位のネタにされてしまうなどの理由が存在するのです。

また、高額車などの場合は、なぜその値段が付いたのかを説明しきれない場合や、表向きにしにくいケースなどがあり、「ASK」とする事もあります。

本当に欲しい人にだけ関心を持ってほしい

値付けをしてわかりやすく売りたい車と、そうでない車がある / Photo by MIKI Yoshihito

希少車や流通台数の少ない車、その他何らかの理由で目立つ車は、特に買う気があるわけでもないのに、冷やかしで問い合わせが来る事にウンザリしている店舗もあると言われます。

場合によっては、「ただ興味本位で電話をしてくる人のおかげで、仕事にならない」や、お店によっては1人だけ、あるいは少人数で回しているため、できれば単に世間話程度の電話は避けたいというお店もあり、中にはメールでの問い合わせに回答するだけでも疲れるというケースもあるようです。

「時は金なり」というのは商売の基本なので、値段を公表してしまうと問い合わせが殺到しそうな車の場合は、たとえ遠かろうと実際に来店してくれるほど気合の入った見込み客だけを相手にしたいなど、目的を持って「ASK」表記にするお店もあります。

おっこれはなんだ?とお宝感覚で目立つから

フェラーリF12ベルリネッタ。このような車に「ASK」とあれば、何かサプライズを期待するかも? / Photo by Damian Morys

少し変わったパターンでは、問答無用で掲載車種の全てを「ASK」にしてしまうケースもあります。

この場合は「この店に置いてある車はASKばかりだけど、なぜなんだろう?どんな理由があるんだろう?」と、見る側に謎めいた印象を与えたり、サプライズを期待させるなど、車というより、お店そのものに関心を持ってほしいとの理由もあるようです。

これがお寿司屋さんなら、「値札が全部『時価』じゃ、もう大将に予算を伝えてオマカセにするしかないよ!そもそも怖くて入れないよ!」となるかもしれませんが、中古車店なら見るだけはタダですし、値段を聞いてみると意外に話が弾んで、いい商談ができるかもしれません。

つまり「来店客との商談に自信がある、少なくとも不快にはさせないだけの話がうまい車屋さん」という事かもしれないわけで、そういうお店は一度足を運んでみる価値がありそうです。

ASK(価格応談)にはサプライズの可能性が詰まっている!

近年は海外で人気と話題な日産のパイクカー、フィガロ / Photo by JC Awe

「ASK(価格応談)」は、お店からドンと1枚分厚い壁を貼られたようで、敷居が高そうに感じますが、実際はきちんと説明したい、お客さんと話し合った上で納得して買ってもらいたい、という想いがこめられています。

そもそも、車に限らずどんな商品でも、表に出ている情報はホンの一部なので、本当の掘り出し物は実際に足を運んで初めて見つかったり、あるいは訪問したタイミングで運命的な出会いがあったりと、問い合わせたり実際にお店に行ったりしてのサプライズがショッピングの醍醐味!

「ASK」もそんなサプライズのキッカケを積極的に作ろうという意図があるのかもしれません。皆さんも「聞けばわかるというなら、ようし聞いてみようじゃないか!」と、小さな冒険をしてみませんか?