1990年代の数年間大ヒットしたものの、ミニバンやSUVの台頭で急激にブームが終息していったステーションワゴン。一時はこのまま消えていくかと思われましたが、カローラツーリングの販売好調で、「またワゴンブームが来るか?」と期待が高まっています。そこで今回は、過去のステーションワゴンから、名車を11台ピックアップしてご紹介します。

初期国産ステーションワゴンの名車といえば、初代日産 サニーカリフォルニアは外せない / 出典:https://www.favcars.com/images-nissan-sunny-california-b-310-1979-210247.htm

1.日本で「ワゴン」の意味を変えたゲームチェンジャー、初代スバル レガシィツーリングワゴン

日本の近代ステーションワゴン史は、この初代レガシィツーリングワゴンが全ての始まりだった Photo by RL GNZLZ

1989年までは、ほとんどライトバンとボディを兼用。マイカー時代到来後も、しばらくは業務用を兼ねた自家用車として、貧乏くさいイメージがつきまとっていたステーションワゴンに、商用登録ライトバン仕様を持たず、セダン同様のターボエンジンを搭載した「GTカー的なワゴン」として登場したのが、初代スバル レガシィツーリングワゴンです。

スバル(当時は富士重工)が自動車メーカーとしての存続を賭けて開発しただけに、その走りは絶賛され、乗用登録ワゴンや5ドアハッチバックに一気に市民権が与えられ、ここからステーションワゴンブームが始まりました。

2.1970年代にも存在したスポーツワゴン、マツダ サバンナスポーツワゴン

1970年代の段階で「スポーツワゴン」を名乗ったサバンナスポーツワゴン / Photo by Alex V

レガシィ以前の日本には、スポーツワゴンがなかったわけではなく、1972年にマツダが発売したサバンナスポーツワゴンは、後のレガシィのようにワゴンのみで、しかも唯一の「ロータリーワゴン」でした。

実際には姉妹車「グランドファミリアバン」のロータリー版で、「サバンナバン」も少数ながら実在したため「ワゴン専用ボディ」とは言い難いものの、ロータリーエンジン搭載のワゴンというだけで、インパクトは抜群でした。

3.元祖クロスオーバー!初代トヨタスプリンターカリブ

ワゴンに現在で言うクロスオーバーの可能性を示した、初代スプリンターカリブ(画像は海外仕様のターセルワゴンSR5) / Photo by RL GNZLZ

レガシィ以前のワゴン専用ボディながら、なぜかあまり話題にならないのが、1982年に発売されたトヨタの「スプリンターカリブ」で、ステーションワゴンというより現在で言うクロスオーバーSUVに近い車でした。

全グレード4WDでオフロードを意識したゴツゴツさと、個性的な縦型テールランプユニットが特徴で、1988年にモデルチェンジした2代目以降は正真正銘のスプリンターベースとなりましたが、最後の3代目まで一貫してクロスオーバー的なキャラクターを維持し、元祖RVワゴンとして根強い人気がありました。

4.ホントは5ドアハッチバック車だった?初代スバル インプレッサスポーツワゴン

JTCC(全日本ツーリングカー選手権)へ唯一出場したスバル車だった、シムスの初代インプレッサスポーツワゴン / 出典:https://www.favcars.com/wallpapers-subaru-impreza-wagon-jtcc-syms-racing-team-gf8-1998-339537.htm

1992年に、レガシィ、アルシオーネSVXに続く新世代スバル車第3弾として発売された初代インプレッサには、4ドアセダンのほかに「スポーツワゴン」が設定されていました。

本来なら「インプレッサ5ドアハッチバック」となるはずでしたが、レガシィツーリングワゴンの大ヒットと、それに伴うステーションワゴンブームの到来で「インプレッサスポーツワゴン」として発売。これが見事に当たって大ヒットとなり、セダン同様の2リッターターボ車となるWRXも追加され、名実ともに売れ筋スポーツワゴンとなりました。

5.輸入ワゴンのヒット作、ボルボ850エステート

1994年のBTCCへ参戦したボルボ850エステート / Photo by Martin Lee

1990年代ステーションワゴンブームは国産車のみならず輸入車へも影響し、中でも240や940で定評を得ていたボルボの新型、FFベースの新世代ボルボとして登場した850エステート(ワゴン)は、日本人好みのターボ車も設定されて好評でした。

1994年にはBTCC(英国ツーリングカー選手権)へ、当時異色のワゴンとして参戦。残念ながら目立った成果はないままセダンでの参戦に切り替えられましたが、スポーツワゴンとしての華々しいエピソードのひとつとなっています。

6.待望されたギャランVR-4のワゴン版、三菱 レグナムVR-4

280馬力のパワフルな2.5リッターV6ツンターボを積むレグナムVR-4もあった / Photo by Aidan Cavanagh

ディアマンテワゴンやリベロをラインナップするも今ひとつパッとせず、ワゴンブームに出遅れていた三菱に喝を入れたのが、8代目ギャランベースで1996年に発売された「レグナム」です。

特に熱望されていたギャランVR-4のステーションワゴン版であるレグナムVR-4は、280馬力の2.5リッターV6ツインターボを搭載。電子制御リアデフ「AYC」など、電子制御デバイスが搭載されたこともあり、レガシィツーリングワゴンにも対抗できるGTワゴンとして現在も、VR-4を中心に中古車は根強い人気があります。

7.スカイラインGT-Rの魂を得たワゴン、日産ステージア260RS

スカイラインGT-R以外で唯一、RB26DETTを積んで販売されたステージア260RS / 出典:https://www.favcars.com/images-nissan-stagea-autech-version-e-wgnc34-1997-2001-36499.htm

ステーションワゴンブームでは1990年代前半までは意外と大型高級モデルのラインナップが薄く、トヨタのクラウンやマークII、日産のセドリック/グロリアのライトバン兼用ボディなワゴンを除けば、三菱がオーストラリアからマグナやディアマンテのワゴンを輸入販売しているくらいでした。

そのスキをつくように1996年にデビューしたのが初代日産 ステージアで、ベースのローレル/スカイライン同様に直列6気筒2~2.5リッタークラスのRB系エンジンを搭載し、ターボ車も設定された豪華高級大型スポーツセダンとして、人気を得ます。

さらにオーテックジャパンの手でRB26DETTを純正スワップし、迫力ある専用エアロで武装したワゴン版GT-Rとして1997年に追加されたのが「ステージア260RS」。

単に高性能ワゴンというだけでなく、RB26DETTをスカイラインGT-R以外で搭載した唯一の市販車であり、1990年代ステーションワゴンブームで最強マシンのひとつです。

8.ビジネスで使われると迫力満点?トヨタクラウンエステートアスリートG

末期は霊柩車需要が一番とはいえ、登場時のコワモテLクラスワゴンっぷりは見事だったクラウンエステート / 出典:https://www.favcars.com/toyota-crown-estate-athlete-s170-1999-2007-wallpapers-186211.htm

大型ワゴンにはなんとなく及び腰で、旧型クラウンワゴンの継続販売でお茶を濁していたトヨタですが、ライバルの日産がステージアで大型ワゴン市場へ新たな可能性を開いたとなれば黙っておれず、クラウンワゴンを12年ぶりにモデルチェンジさせた豪華高級大型ステーションワゴン「クラウンエステート」を1999年にデビューさせました。

ベースとなったS170系11代目クラウンは、2.5リッターターボエンジン1JZ-GTEを搭載。豪快な加速でユーザーの若返りを図ったスポーツグレード「アスリート」が話題となっており、クラウンエステートでも同様の2.5リッターターボ車「クラウンエステート アスリートG」を設定します。

その後、ステーションワゴンブームが去ると、クラウンのキャラクターゆえに霊柩車需要が長らく続いたと聞いていますが、デビュー当時はちょっとワルイ雰囲気のある高級ワゴンでした。

9.現代でもヒットしそうな「どこでもドア」、日産 ラシーン

クロスオーバーSUVという言葉が一般的でなかった当時は謎ジャンルだったが、現在も根強い人気を誇るラシーン / Photo by peterolthof

これをステーションワゴン枠に入れていいのか?と疑問に思う人もいるかもしれませんが、ジャンルとしてはスプリンターカリブと同じクロスオーバーワゴン。しかも1980年代に一斉を風靡した日産パイクカー路線の延長線上にあるユニークな車が、「ラシーン」です。

日産パイクカーの中でも「パオ」と同じく「日頃のドライブでも冒険に出かけるような、現実の中での非日常感」がテーマになっているため、サニーがベースの平凡な生活用4WDとはいえ、雰囲気は本格オフローダーです。

1994年に発売されてから27年がたった今でも専門店が存在するほどの人気車種で、日産がステーションワゴン市場へ再参入するなら、ラシーンのリメイクを持ってくればヒットは間違いなしかもしれません。

10.三菱最後の?そして最強のワゴン、ランサーエボリューションワゴン

ランサーセディアワゴンの登場で可能になった「エボワゴン」 / 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/company/history/car/

三菱のスポーツワゴンといえばレグナムVR-4やリベロGTもありましたが、ランサーエボリューションのワゴン版が2005年に初登場。ランサーエボリューションIXへ、ランサーワゴンのワゴンボディ上半分を載せた仕様で、ワイドフェンダーの迫力あるデザインとなっています。

もはや日本国内では独自生産のセダンやワゴンを作らなくなった三菱にとっては、おそらく最後にして最強のスポーツワゴンになると思われますが、15年ほど前の三菱はこういう車を販売できるほど元気でした。

11.レガシィとインプレッサの血筋を受け継ぐ最先端ワゴン、スバル レヴォーグ

2016年からBTCCへ出場、2017年に総合優勝を果たすなど21勝を上げた初代レヴォーグ / Photo by Matt Buck

「ステーションワゴンブーム」を制したスバルのレガシィツーリングワゴンですが、北米市場からの要望で年々大型化。日本市場で使いにくくなったこともあり、インプレッサワゴンは廃止され、5ドアの「インプレッサスポーツ」となって日本市場におけるスバルワゴンも岐路に立たされます。

そこで心機一転、インプレッサWRXの後継としてインプレッサから独立した、スポーツセダン「WRX」の高級版「WRX S4」のステーションワゴン版として、2014年にデビューしたのが「レヴォーグ」です。

肥大化したレガシィよりコンパクトなボディに、1.6リッター/2リッター水平対向ターボエンジンを搭載。トップモデルが300馬力を発揮するなどの高性能ぶりは、2017年に総合優勝したBTCC(英国ツーリングカー選手権)でも証明されています。

さらに、単に高性能というだけでなく、運転支援システム「アイサイト」の最新版を搭載するなど先進技術へのアップデートにも熱心で、2020年にモデルチェンジした2代目でも引き続き「ワゴンといえばスバル」のイメージリーダーとなっています。

セダンにもミニバンにもSUVにも飽きたら、次はワゴン?

販売好調なカローラシリーズの稼ぎ頭がカローラツーリングという事実に、「次のブームはワゴンか?」という予想もある / 出典:https://toyota.jp/corollatouring/gallery/

2021年現在ではだいぶ車種も減り、特に5ナンバー車は少々古くなりつつも継続生産されている、トヨタのカローラフィールダーとホンダのシャトルくらいになってしまいました。

他のサイズでも、レヴォーグやトヨタのカローラツーリング、マツダのマツダ6ワゴン(旧アテンザワゴン)くらいと、残りわずかです。

しかし、最近になって販売好調の「カローラ」シリーズにおいての稼ぎ頭がカローラツーリングだと広く知られるようになり、日本市場でもハイルーフのミニバンやSUV、セダンを敬遠するユーザー層にとって、ステーションワゴンの魅力が再び注目されるようになってきています。

「次のブームはワゴンだ!」と予想する人もいるくらいで、今回紹介した過去~現在の名車の再来となるステーションワゴンが、今後登場してくるやもしれません。