車体外装にに木枠を持ち、観音開きのテールゲートのステーションワゴンと言えばモーリス・ミニ トラベラー / オースチン・ミニ カントリーマンが日本では著名ですが、その元祖的モデルがモーリス・マイナートラベラーです。1948年に発売されたマイナーに1952年のシリーズIIから追加されたトラベラーは、その基本設計の古さにも関わらず、1971年までと20年近く生産されていました。
モーリス・マイナー トラベラーとは?
かつてイギリスに存在した老舗自動車メーカー、モーリスは第2次世界大戦前にはウーズレーやMG、ライレーといったメーカーを傘下に収め、創業者のウィリアム・モーリス(初代ナッフィールド子爵)の名前にちなんでナッフィールド・オーガニゼーション社へと改名。
第2次世界大戦中は軍需に関わり戦車用のエンジンや、やがては戦車そのものも生産する一大重工メーカーとなっていました。
そして1945年に戦争が終わると、戦前からのモーリス・エイトやテンなど民需向け自動車の生産を再開するとともに、アレック・イシゴニスを設計者として戦後第1世代の小型車、マイナーを開発して1948年に発売します。
戦前にも販売していた車名を復活させたマイナーは当初2 / 4ドアサルーンと2ドアコンバーチブルボディを持つ918ccのサイドバルブ4気筒エンジンを搭載した大衆車でしたが、1952年にOHV4気筒で803ccのAシリーズエンジンに換装したシリーズIIへマイナーチェンジ。
この時に新たなボディタイプとして2ドアのステーションワゴンとバンが追加され、税金の関係でスチール製の後部側面窓を持たない商用バンも特徴的でしたが、それ以上に特異なボディを持っていたのがステーションワゴン版のマイナートラベラーです。
マイナートラベラーの特徴
マイナーの派生車として追加されたトラベラーはボディ後部側面とテールゲートの外側に木枠を貼り付け、ステレオタイプな観点からすると何ともイギリスらしい見かけをしていました。
それも木枠に使われた木は『木目調』ではなく本物の木であり、高温多湿な環境で手入れを怠ると、キノコが生えてくることも。
もちろん同郷のモーガンのごとく強度を受け持つ木製フレームというわけではありませんが、この英国情緒漂う見かけだけがマイナートラベラーの特徴ではありません。
テールゲートは観音開きで両側に大きく開けば荷物の出し入れは容易で、後席を折りたためば広大なラゲッジスペースが現れます。
いわば現在のステーションワゴンと変わらぬ実用性を持っていたわけですが、木枠のおかげで商用車然とした雰囲気は無く、そこから察するにイギリスでも日本と同じく「ただのステーションワゴンでは商用ライトバンのようだ。」という雰囲気があったのかもしれません。
この特徴ある木枠とテールゲートを持つステーションワゴンというコンセプトは、後にモーリス ミニ・トラベラー / オースチン ミニ・カントリーマンにも受け継がれますが、マイナートラベラー自体も1971年まで作られていました。
主要スペックと中古車相場
モーリス マイナートラベラー 1963年式
全長×全幅×全高(mm):3,785×1,549×1,537
ホイールベース(mm):2,184
車両重量(kg):797
エンジン仕様・型式:Aシリーズ 水冷直列4気筒OHV8バルブ
総排気量(cc):1,098
最高出力:48ps/5,100rpm
最大トルク:8.3kgm/2,500rpm
トランスミッション:4MT
駆動方式:FR
中古車相場:209.5万円(専門性の高い輸入旧車のため一般的な中古車市場へはほぼ流通無し)
まとめ
モーリス・マイナーは1956年にシリーズIIIへとマイナーチェンジ、その際にAシリーズエンジンは排気量アップ版の948ccと1,098ccへと換装され、ひとまわり小さいミニが登場してからもマイナー1000として生産は続きました。
そして、ミニがヒットしてからはその役割を譲りつつもシリーズV(ちなみに、シリーズIVはモーリス・ミニ マイナー……つまりミニです)が1972年まで作られ、マイナートラベラー(およびマイナーバン)も1971年4月に最後の1台が作られてミニ・エステートを後継として消滅しています。
また、ミニと同じAシリーズエンジンを搭載していることもあってミニのノウハウが通用するのか、今でも旧車イベントにはイギリス車の定番的存在。
後にミニで名設計者として歴史に名を刻むアレック・イシゴニスの初期の傑作、マイナーの派生車として今でもイギリス車ファンに愛され続ける1台です。
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