クルマに関しての知恵や知識は、書籍やWEB、クチコミなどを通じて得ることができますが、その中には技術の進歩などにより、今となっては当てはまらなくなっているものもあります。今回はそんな、都市伝説化した車のアレコレについて、ご紹介しましょう。

このWRX STIのように、「燃費は悪いがそれ以上の魅力」ゆえに歓迎されてきたスバル水平対向エンジンだが、改善する努力は常に行われてきた。/Photo by The NRMA

1.水平対向エンジンは燃費が悪い

スバルの最新型!1.8リッター水平対向4気筒直噴ターボエンジン「CB18」 / 出典:https://www.subaru.jp/brand/technology/technology/driving_boxer.html

かつてスバル車といえば、エンジンルームで縦置きされた水平対向エンジンによる「左右対称の重量バランス」や「低重心」といったメリットが強調されたものの、「同クラス車に比べて燃費が悪い」というデメリットも根強く言われ続け、現在もスバル車の弱点のように語り継がれています。

それは、WRC(世界ラリー選手権)で勇名を轟かせる原動力となった2リッターターボの名機「EJ20」をはじめとするEJ系および、その派生エンジンに関してそれは事実であり、むしろ時代にそぐわない燃費の悪さを堂々と公表している事が、スポーツ派ユーザーにとっては頼もしいと好感を持たれたりもしたものです。

しかし2010年代に入って登場した新世代のFA系、FB系、さらに2020年代に登場した最新の「CB系」エンジンでは、電動化技術を取り入れつつも水平対向エンジンの生き残りを賭けたスバル技術陣の努力により、同クラス純ガソリン車同士のスペック比較では、かなり健闘するようになりました。

現行モデルのWLTCモード燃費で、いくつか比較してみましょう。

スバル フォレスター スポーツ(1.8Lターボ/CVT・177馬力/30.3kgm・1,570kg):13.6km/L
マツダ CX-5 25S 4WD(2.5L自然吸気/6AT・188馬力/25.5kgm・1,610kg):13.0km/L
ホンダ CR-V EX 4WD5人乗り(1.5Lターボ/CVT・190馬力/24.5kgm・1,570kg):13.6km/L
トヨタ RAV4 X 4WD(2.0L自然吸気/CVT・170馬力/21.1kgm・1,570kg):15.2km/L

 

スバル インプレッサスポーツ 1.6i-SアイサイトFF(1.6L自然吸気/CVT・115馬力/15.1kgm・1330kg):14.0km/L
トヨタ カローラスポーツ G Z FF(1.2Lターボ/CVT・116馬力/18.9kgm・1,340kg):16.4km/L
マツダ MAZDA3ファストバック 15Sツーリング FF(1.5L自然吸気・111馬力/14.9kgm・1,340kg):16.6km/L

改めて見てみると、さすがにトヨタやマツダの最新エンジンには及ばないとはいえ、今や燃費が悪すぎて購入を躊躇するほどではなくなっており、実燃費ならば同等以上の勝負になる事も考えられる程度にまで差が縮まっています。

もちろん現在の市販車はハイブリッドなど電動車が販売の主力になっており、スバルの水平対向エンジンも現在フォレスターの一部グレードに搭載されているe-BOXER(マイルドハイブリッド)のほか、今後はトヨタのフルハイブリッドシステム「THS」を導入するとも言われているため、今後も期待したいところです。

2.オートマは燃費が悪い

コスト面で過去のモデルから使い続けているMTと最新のCVTなら、後者の効率が高く燃費がいいのも当然かも知れない。ダイハツのコペンGR SPORTもそんな1台。 / 出典:https://www.daihatsu.co.jp/lineup/copen/special_gr/journalist2.htm

昔の3速ATや4速ATが主流だった時代だと、MT車でのクラッチの役割を果たすトルコン(トルクコンバーター)の特性によって生じる「トルコンスリップ」や、変速段数の少なさにより効率的なエンジン回転数を活かせないという問題もあり、「オートマは運転が楽だけど燃費が悪い」が常識でした。

しかし、現在はキメの細かいギア選択が可能で、トルコンをスリップさせずに固定できる6速以上のATや、状況に合わせて最適なエンジン回転数を常時キープできる無段変速機CVTと、電子制御スロットルなどによるエンジンとの統合制御、さらに電動化技術もあって、MTとAT双方が設定されている車種では同等か、むしろATの方が燃費がいい車種もあります。

トヨタ カローラスポーツ(FF):6MT/15.8km/L・CVT/16.4km/L
マツダ MAZDA3 Xプロアクティブ(FF):6MT/17.9km/L・CVT/17.3km/L
マツダ ロードスター Sスペシャルパッケージ(FR):6MT/16.8km/L・6AT/17.2km/L
ホンダ シビックハッチバック(FF):6MT・CVTともに16.4km/L
日産 フェアレディZ(FR):6MT/8.5km/L・7AT/8.8km/L
ダイハツ コペン GR SPORT(FF):5MT/18.6km/L・CVT/19.2km/L
スズキ スイフトスポーツ(FF):6MT/17.6km/L・6AT/16.6km/L

実際に比較してみても、MAZDA3やスイフトスポーツのように、FFの6速AT車で6速MTの方が若干燃費が良好というケースはあるものの、大抵はATやCVTの方が燃費がよいという結果です。

さらにMTはDCTなど電子制御でのクラッチペダルレスセミATを除き、ユーザーの技量で燃費の良し悪しが決まるのに対し、ATにもアクセルなど操作による差はあるとはいえ、少なくともギアチェンジ操作での差はなく、誰でも同程度の低燃費を叩き出しやすくなっています。

大昔のように「燃費がいいから」という理由でMT車を買うユーザーは今やあまりいないと思いますが、少なくともAT車を買ったから燃費が悪いのでは?という心配だけはしなくて良さそうです。

3.スポーツタイプの車は、エンジンを切る前には空ぶかしをした方がいい

日産S30フェアレディZのように、古い機械式キャブレターのスポーツカーならエンジン停止前の空ぶかしにも意味がある。 / Photo by Falcon® Photography

今でも主にスポーツタイプの車で、空ぶかしをしてからエンジンを切るドライバーがいて、「それって必要なの?カッコつけてるだけなんじゃないの?」と疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。

それは、半分は必然性があるものの、もう半分は「儀式」(「カッコつける」に含まれるかもですが)であり、機械的な必然性はありません。

必然性がある車というと、筆者のように燃料供給方式が古い機械式キャブレター(あるいは機械式インジェクター)のエンジンか、電子制御インジェクションでも燃料調整を濃い目にしたチューニングエンジンを搭載した車で、次のエンジン始動を容易にするべく、プラグを乾かしておくために行っています。

そのため、一般的な電子制御インジェクションを使ったエンジンなら、たとえスポーツタイプでも新しくなるほど「切る前の空ぶかし」は不要。

ただし、古い車や新しくともスポーツタイプの車は、操っている時の「気分」が普通の車と異なり、少なくともドライバーをそんな気分にさせる車も多いため、「ドライバーとしての自分」から「いつもの自分」へと気持ちを切り替えるために必要な「儀式」が大事な時もあるため、「機械的必然性がない、不要な操作をしている!」とは、一概には言えません。

これからはさらに「先入観が通用しない時代」

電気自動車や超小型モビリティ、自動運転への根強いネガティブなイメージも、いずれは「もはや都市伝説」とされる時代が来るかもしれない。/ Photo by Raphael Desrosiers

都市伝説とは「近年発祥し、根拠が曖昧だったり不明な噂話」の事ですが、車にまつわる都市伝説の場合は、「昔はともかく今となっては根拠が曖昧」、「単に昔からそう言われてるので、今でもそうだと思われている」程度のものが多く、他にまだ民間向け周波数の精度が低かった頃の「GPSで表示される位置はアテにならない」などもあります。

2020年代に入ってからは車の電動化や運転支援/自動運転システムの進化が著しく、今までの伝承をもとに「電気自動車はすぐバッテリーがダメになる」、「自動運転なんて機械任せは危ない」と思い込んでいたら、気がつけば時代がとっくに変わっていた、なんて事態が、皆さんの身にも起きるかもしれません。

時代が移り変わる過渡期に、いつの間にか都市伝説化してしまった話を広めないためには、先入観にとらわれず「昨日の事は昨日!今日は、昨日とは違っているかもしれない」と思う気持ちが大事かもしれません。