近年よく耳にするようになった「オールシーズンタイヤ」。履き替えが必要ないタイヤとして、気になっている方も多いはず。そこで気になるのが、実際に雪道で使えるのかということと、耐久性はどうなのかということではないでしょうか。
そこで今回は、オールシーズンタイヤ「ネクセン N blue 4Season Van(以下:Nブルー 4シーズン バン)」を、昨年実際に交換し約1年10,000km使用したものと新品で比較。性能の劣化具合を検証すると共に、一般ユーザーの素直な感想をお届けします。
Photo : Takanori ARIMA Text : Shingo MASUDA
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仕事の相棒にピッタリのオールシーズンタイヤ
まずは、ネクセン Nブルーバン4シーズンバンの概要と、実際に筆者が装着した直後の印象について振り返ってみたいと思います。
ネクセンタイヤのバン用オールシーズンタイヤ Nブルー 4シーズン バンは、欧州で冬用タイヤであることが認められた3PMSF(スリーピーク・マウンテン・スノーフレーク)マークを取得。夏のドライ路面はもちろん、グリップが低下しやすい低温下のウエット路面でも、安定したグリップ性能を発揮します。
バンタイヤに求められる荷重指数をクリアしたうえで、速度記号「N (140km/h)」の表示を実現。急な雪に慌てることなく年中通して使えるため、まさに、ハイエースやキャラバンといった、仕事の相棒であるバンにピッタリなオールシーズンタイヤです。
装着直後の印象
以前の試乗記でもお伝えしていることですが、交換直後のドライ路面で感じた印象は「夏用タイヤ」でした。スタッドレス特有の頼りなさがなく、重心が高く重量のあるボディをしっかりと支えてくれ、高速道路のレーンチェンジもふらつくことはありません。
そして、肝心の雪道では、スタッドレスタイヤほどではないものの確かなグリップ感が得られ、「雪道を走っている」という意識をもっていれば、特に不安を感じることは皆無。夏タイヤでは到底無理なシチュエーションでも、脱出できない、止まらない、曲がらないということは一切ありませんでした。
約1年10,000km使用していても目立った劣化はナシ
そんな好印象だったNブルー 4シーズン バンですが、気になるのは走行距離による摩耗と経年劣化。正直なところ、試乗後も日常使いのタイヤとして使用し続けているため、劣化具合を具体的に感じることはありません。
そこで、今回は一般ユーザーKさんのハイエース(6型)に、新品のNブルー 4シーズン バンを装着してもらい、筆者のハイエース(1型)に装着された、約1年10,000km使用のものと比較してみました。
快適なドライ性能と不安を感じない雪上性能
まずは高速道路から改めて新品に乗ってはみたものの、想定していた以上に違いが感じられません。あくまでも目測ですが、溝の深さは1~2mm減っているかどうか。筆者のハイエースの方は、明らかな羽状の摩耗が見られるものの偏摩耗もなく、きれいに摩耗しているという印象です。
ドライ路面の走行音もまったく変化が感じられず、昨年装着直後に感じた“安定感”も健在。また、圧雪凍結路に約5cm新雪が乗った状態の雪道でも、筆者のハイエースは新品と変わらないグリップ力を発揮し、やはり「雪道を走っている」ということにさえ注意していれば、特に不安を感じることがありませんでした。
“タイヤの差”というよりも“年式の差”が顕著に
唯一差が出たのは、発進時のトラクション性能。筆者の1型ハイエースがスタックして進めなくなってしまった場面でも、Kさんの6型ハイエースは難なく発進していきます。
しかし、Kさんのハイエースに乗らせてもらうと、すぐにその“差”が生まれた原因が判明しました。筆者のハイエースがスタックしてしまった原因は、ご察しの通り“年式”による差だったのです。
筆者のハイエースは平成18年(2006年)1月登録の1型、対してKさんのハイエースは2021年に納車されたばかりの6型。両者のあいだには、発進・加速時に駆動輪の空転を抑えてくれる「トラクションコントロール(TRC=Traction Control)の有無」という大きな差があったのです。
さらに、6型ハイエースには雨や雪で滑りやすい路面などで横滑りが発生した時、ブレーキとエンジン出力を自動的にコントロールしてくれる「横滑り防止機能(VSC=Vehicle Stability Control)」も搭載されており、雪上はもちろん、シャーベット路面のコーナリングも安定感バッチリ!
つまり、1型ハイエースでも十分に感じられたNブルー 4シーズン バンの雪上性能ですが、最新の電子制御が採用されたモデルでは、さらなる安心感を得られるということなのです。
夏タイヤ用チェーンが使える
ちなみに、リアルにスタックしてしまった筆者はどうしたかというと、念のため購入しておいた“夏タイヤ用”のチェーンを後輪に装着し、難なく脱出することができました。
チェーンを巻くという行為は、一見するとごく当たり前かもしれませんが、筆者の購入したチェーンが“夏タイヤ用”だということが大きなポイント。通常、スタッドレスタイヤの場合、夏タイヤと同じサイズに対応したチェーンが使用できないことがほとんどです。
しかし、オールシーズンタイヤのNブルー 4シーズン バンの外径は、夏タイヤと外形が同じなため、夏タイヤ用のやや安価なチェーンが使用できてしまいます。(バンでチェーンを使用する場合は耐荷重に注意してください)
しかも、フロントは夏タイヤより冬の道に強いオールシーズンタイヤであるため、夏タイヤ+チェーンという組み合わせよりも、かなり安心感を持って走ることができました。
オーナーインプレッション
それでは、最後に6型ハイエースのオーナー、Kさんの率直な感想を聞いてみましょう。
「これまで、オールシーズンタイヤは中途半端なタイヤというイメージを持っていました。そして、今回はバン用のスタッドレスタイヤから履き替えたため、夏用タイヤに戻ったかなという程度にしか感じませんでした」
「自分は関東に住んでいるので、普段雪道に遭遇するのは年に1度か2度。『夏タイヤよりはマシ』くらいで十分と思っていたのですが、思っていた以上に走れて正直かなり驚いています」
「また、夏タイヤという側面で考えてみると、スタッドレスタイヤのフニャフニャ感がなく、しっかりと支えてくれている感じで、高速道路も安心して走れました。面倒な履き替えがないし、自分のように仕事のためにハイエースを所有している人に勧めたいですね」
まとめ
取材当日の「冬用タイヤ規制」もクリアできるネクセン Nブルー 4シーズン バンは、その名の通り日本の四季と天候に対応した万能タイヤといっても差し支えない性能を発揮。また、今回は約1年10,000km使用した状態と新品を比較し、耐久性も十分担保されているオールシーズンタイヤであることもはっきりと分かりました。
もちろん、凍結路や雪上での絶対的なグリップ性能はスタッドレスタイヤに敵いません。しかし、年に2回の履き替えが必要なく、急な降雪予報にも慌てることがないと考えれば、「ハイエース(NV350キャラバン)じゃなきゃダメ!」というユーザーは、ぜひ検討していただきたいオールシーズンタイヤです。