冬装備の必需品となりつつあるスタッドレスタイヤ。2022年の冬には東京でも積雪を記録し、その必要性を感じている方も多いと思います。しかし、大手国産メーカーのスタッドレスタイヤは高いというイメージを持っている方も少なくないでしょう。
そこで気になるのが、国産メーカーよりもお手頃価格で販売されている格安輸入スタッドレスタイヤのネクセンタイヤ WINGUARD ice2(以下ウインガードアイス2)。今回は東北6県+新潟県、総走行距離2,000kmを超えるロングランテストを行い、その実力を体当たりで検証していきます。
Photo :Motorz Text : Shingo MASUDA

いきなりの好感触!ドライ路面の静粛性と安定感はワールドクラス

まずは、関東県内在住の筆者のように雪が積もるのは年に1度か2度という場合に気になる、オンロードの走行性能からチェックしていきます。

高速道路での第一印象は、スタッドレスタイヤらしからぬしっかり感あるということ。ゴムの柔らかさが必須であるスタッドレスタイヤは、乗り心地がソフトな反面、どうしても頼りなさが出てしまうものです。
ここで効いてくるのが、ウインガードアイス2非対称トレッドパターンと3Dサイプ。いわゆる通常の車線変更や合流といった加速しながらというシチュエーションでも、アウト側の高剛性ブロックとサイプ同士が支えあうことで、しっかりと下支えしてくれています。

また、安いタイヤ=うるさいというイメージを持たれがちですが、ウインガードアイス2の走行音はいたって静か。もちろん静かさを売りにしているコンフォートタイヤに比べれば、多少のパターンノイズは聞こえてきます。しかし、車内での会話は全く問題なく、日常使用のタイヤとしては十分な静かさです。

【DAY1:福島県~新潟県~山形県】関東民が慄く雪道に突入!その実力はいかに?

最初の目的地は、白虎隊で有名な会津若松市にある鶴ヶ城。どうやら取材の前日まで雪が降っていたらしく、関東住みの人間にとってはいきなりの雪の量に少々尻込みしてしまいます。交通量の多い大通りは除雪がされているものの、大きな轍ができ所々凍っている状態です。

まさに雪国の市街地といった様相で、スタッドレスタイヤとしての実力が試される場面。本格的な雪国の道、そして、格安輸入スタッドレスタイヤということで、やや緊張しつつ鶴ヶ城を目指します。

しかし、いざ走ってみると意外や意外。雪道を走りなれた地元ナンバーの方々に交じりながら、特に不安を感じることなく走れます。

筆者が安心感を得た要因は、ブロック一つ一つが雪を掴むようなグリップ感。昨今の国産メーカーのスタッドレスタイヤにある、接地圧によって氷と雪に食いつかせる感覚とは明らかに違うグリップ感です。

会津若松城(鶴ヶ城)

除雪が完全にされておらず、氷と雪がふんだんに残る駐車場へのアプローチも難なく走り、無事鶴ヶ城に到着。

今回のロングランテストは、2泊3日という弾丸スケジュールということで、会津若松市内を観光はお預け(お昼に喜多方ラーメンはいただきました)。次なる目的地、新潟県新発田市の新発田城に向かいます。

除雪された市街地ではブロックの存在感が顕著に

新潟県新発田城

しっかりと除雪の行き届いたいわき新潟線(東北横断自動車)を進み、豪雪地帯に認定されている新潟県新発田市へ到着するも、想像していたよりも道路に雪がありません。目的地の新発田城の駐車場には雪があるものの、道路に雪はなくほとんど乾いている状態です。

雪が多く残る会津若松市内から高速道路に乗り、完全ドライな新発田市の市街地を走って改めて気が付いたのが、ブロックの“つぶ感”。会津若松で感じたブロックが雪を掴む感覚が、乾いた路面を低速で走った際、極微細な振動として顔を出したというところでしょう。

目的地2か所目にして、道路に雪が無いという雪国の降雪に対する対応力に感心しつつ、その日は山形県の鶴岡市まで移動し、翌日に予定している月山越えへ備えます。

【DAY2:山形県~宮城県~岩手県~秋田県】ドライからスノーへ次々と変わる路面状況

そして、宿泊した山形県鶴岡市の朝は、目測で約10cmの積雪。ホテルの方にお聞きしたところ、この地域では一晩で数10cm以上積もることも珍しくなく、過去には一晩で50cm以上積もり、宿泊客が出発できないこともあったのだとか。首都圏では5cmの積雪で都市機能がマヒすることを考えると、やはり東北地方の雪は首都圏のものとはレベルが違います。

そんなフワフワな新雪が積もる鶴岡市内を抜け、ロングランテスト2日目はいよいよ月山越えにトライ!

6~7月までスキーができることで有名なスキー場のある月山は、日本海側地域でもっとも雪深いことで知られ、ウインガードアイス2にとっては少々厳しいシチュエーションかもしれません。

見渡す限りの銀世界!歩くのも困難な状況でも走れるのか!?

山形自動車道を湯殿山インターで降りると、辺りは完全な銀世界。アスファルトはほとんど見えず、これぞ雪道という光景が広がります。前日から降り続いた雪により、本線(国道112号線)からの脇道は、とても2WDのプリウスでは走れないほど新雪が積もっています。

そして、当初の目的地であった月山スキー場に向かいますが、除雪作業員の方から「行けないよ!」という助言(ジェスチャー)をいただき断念。まだウインガードアイス2に全幅の信頼を置いているわけではないため、上らずにホッとしたのは内緒です。

東北横断道 月山湖PA

それほどの大雪でありながら、ウインガードアイス2を履いたプリウスは月山超え達成!40~50km/h程度の一般道なら、十分なレベルなのかもしれません。

東北自動車道 長者原PA

月山から山形市に下りてくるころには、雪の量がどんどん減っていき、宮城県に入ると高速道路上の雪は皆無。流石にスタックするかもしれないという緊張感があった月山と比べ、嘘のような光景です。

雪深い月山から雪のほとんどない宮城県と、わずか数時間のうちに全く違う道路状況を経験。そんな刻々と路面状況が変化する状況でも、ウインガードアイス2の安心感は変わることがありません。

ガチガチの圧雪路では高いグリップ性能を確認

岩手県花巻城跡

さて、岩手県での目的地は花巻城跡。岩手県で5番目の花巻市は、大谷翔平選手の母校である花巻東高校があることでも有名で、スーパーや外食チェーン店が並ぶよくある市街地という印象です。

取材当日の道路状況は、完全に除雪された道と東北地方の市街地ありがちと思われる典型的な圧雪路が混在しています。

ここでは、ウインガードアイス2のさらなるグリップ性能に驚かされました。やや勾配のある坂道での発進(上り)や、停止(下り)でもしっかりと路面を掴む感覚があり、雪国の生活道路での使用にも十分対応できることが分かります。

地元民と同じペースで走れる安心感

そんな花巻市でウインガードアイス2の実力を再確認しつつ、次の目的地である秋田県横手市に向かいます。

東北道を南下し、北上ジャンクションから秋田自動車道へ入ると、さっきまでの雪のない状況が徐々に変化。和賀仙人トンネルを越えたころには吹雪はじめ、高速道路上にもしっかりと雪が乗っている状況に変化し始めます。
そして、ナビに従い黒沢インターで下りると、一般道はセンターラインが見えない完全な積雪状態。普段雪が降らない関東在住の筆者としては、またまた緊張する状況に追い込まれつつも、地元ナンバーの車と同じペースで難なく走ることができました。

横手市の深い雪から秋田市のアイスバーンも平気!

秋田県横手城

横手市街に到着すると、これまでの工程でもっとも雪深い状況に驚かされます。目的地に設定した横手城もかなりの雪が積もっており、正直仕事と割り切らなければ足を踏み入れたくないレベル。

「これ、さすがに登れないかもしれない」とスタッフに伝えたほど、雪の積もる上り坂。ところが、なんと2WDのプリウスで問題なく走ることができてしまいました。

優秀な電子制御はもちろんのこと、ここでもウインガードアイス2の実力を痛感。ここまでくれば、しっかり安心感をもっておすすめできる新たな選択肢であることに、疑う余地はありません。

特別豪雪地帯に指定される横手市での実力も感じつつ、ロングランテスト2日目は秋田市で宿泊。翌日の道路はバキバキの凍結路でしたが、こちらも問題なく走れたこともお伝えしておきます。

【DAY3:秋田県~青森県そして東京へ】欧州仕込みの安定性に脱帽

さて、いよいよロングランテスト最終日の3日目は、途中一般道を挟みながら青森県を目指し北上。外気温が1℃という路面温度もかなり低く、路面は分厚い圧雪路面でも、ウインガードアイス2を履いたプリウスはどんな道も快適です。

青森県観光物産館アスパム

当初最終目的地にしていた弘前城をぐるっと見学し、時間に余裕があったため、さらに北に行こうと急遽青森市にある「青森県観光物産館アスパム」に目的地を変更。途中筆者のミスで道を間違えるアクシデントがあり、積もった雪が溶け重くなった雪道を走ることもありましたが、特に難儀することなく走ることができます。

そして旅のフィナーレは、古川市場・青森魚菜センターの「のっけ丼」で新鮮な海鮮を堪能。そして一路東京へ。

主に高速道路の約700kmという距離でしたが、初日にも感じた直進安定性は健在で、あまり疲れを感じることがありません。

この高速道路性能も、ポルシェやフォルクスワーゲンをはじめ、世界の自動車メーカーに純正タイヤを納品しているネクセンタイヤの特徴。高速道路が楽ちんという感覚は、国産メーカーのスタッドレスタイヤではあまり感じられず、このしっかりとした安定感は、スタッドレスタイヤを選ぶ新たな指標の一つとして加えても良いかもしれません。

値段は格安でも国産メーカーを“食う”には十分な実力

今回のロングランテストでは、ドライ路面から雪解けのウエット路面、さらに圧雪路、新雪の積もった雪道と、冬季の東北道路でありがちと思われるさまざまな道路状況を体験することができました。

もちろん、国産メーカーのスタッドレスタイヤが優秀であることは間違いありません。しかし、今回の体当たりロングランテストで感じた実力はまさにダークホース!

価格がお買い得で、国産メーカーとそん色ない性能を持つネクセンタイヤのウインガードアイス2は、新たな選択肢として次の交換候補にしてみても良いのではないでしょうか。

 

ネクセンタイヤを詳しく見る