1998年10月以降の新規格軽乗用車といえば、わずかな例外を除けばベーシックモデルと趣味性の高いスポーツモデル、そして大多数を占めるハイトワゴン系ばかりというイメージですが、そのわずかな例外の1つがどの流行にも属さない2+2ハッチバッククーペのスバル R1でした。
スバル R1とは?
軽自動車は1998年10月に現在まで続く新規格に移行、各社ベーシックモデル(ミラ、アルト、ミニカなど)とともにハイトワゴン系(ワゴンRやムーヴ、トッポBJなど)を主力としましたが、スバルはやや独自路線を歩みます。
軽乗用車はヴィヴィオベースのセミハイトワゴンであるプレオ1本に絞った後、2003年12月に事実上の後継車、R2を発売。
非常に個性的なデザインをスペース効率よりも重視したR2は、当時の軽乗用車の流行に沿ったものではありませんでしたが、さらに約1年後の2004年12月、R2のショートボディ版といえるR1を発売し、世間を驚かせます。
それはR2とよく似たフロントマスクを持ちつつ、ホイールベースを短縮してテールゲートもやや寝かせ、そのコロンとしたスタイルは『てんとう虫』の愛称で親しまれたスバル360の再来とも思えるものでした。
そんなR1自体はジュネーブショーがワールドプレミアとはいえ、コンセプトカーとしては電気自動車版のR1eが東京モーターショー2003でデビューしていたため市販化は予想されていましたが、本当に発売されたとなるとやはり驚きでした。
新規格でもちょっと試された軽スペシャリティの1台
R1はスマート・フォーツー(初代)やスズキ ツインなど、ちょっと話題になった2シーターコミューターにミニマムスペースながら2人乗れる後席を設けた2+2シート車で、3ドアハッチバッククーペに分類されます。
ツインやミゼットIIなど規格内で許されたサイズを最大限使わない軽自動車は他にもありましたが、その中でも規格内いっぱいの定員4名を実現し、ちゃんと全て開閉するテールゲート(ツインはガラスハッチだった)を持つR1の実用性が高かったのは確かです。
少し残念だったポイントは、シティコミューターとしての性格にこだわったためか、発売当初はエンジンがNAのDOHCのみで、後に廉価版のNA SOHCやスポーティなDOHCスーパーチャージャーも追加されましたが、ミッションは最後までCVTのみでした。
「スーパーチャージャー+5MT仕様があれば買ったのに!」という声も少なくありませんでしたが、結果的にはダイハツ ソニカ(2006年)やスズキ セルボ(5代目・2006年)のように、スーパーチャージャー搭載型は軽GT的な性格になっています。
そんなR1は、パッケージング的にもデザイン的にも当時の流行からは大きく外れていましたが、『個性的な1台』としてカルト的な人気があったのは確かで、2005年にはグッドデザイン賞も受賞し、2010年春まで販売されていました。
究極のR1?プロドライブP2
MTの設定が無いCVT専用車ゆえ、モータースポーツではマイナーなレースやジムカーナなどで時々見かける程度のR1ですが、海外ではこれをベースにしたとてつもないモンスターマシンが作られています。
それが、WRCでスバル活躍の原動力ともなったイギリスのプロドライブが開発したP2で、インプレッサWRX用のEJ20ターボエンジンを搭載した4WDマシンです。
思い切りボディを拡大したその姿からはR1の面影は全く無く、プラットフォームを流用したのみで共通点は全くと言っていいほど無いため「R1ベース?」と首をかしげるほどでしたが、とにかくカッコイイマシンではありました。
そして軽量ハイパワーなため、ヘタな高級スーパーカーを上回るパフォーマンスを示したものの、結局市販されなかったのが残念な1台かもしれません。
主要スペックと中古車相場
スバル RJ1 R1 S 2005年式
全長×全幅×全高(mm):3,285×1,475×1,510
ホイールベース(mm):2,195
車両重量(kg):830
エンジン仕様・型式:EN07 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ICスーパーチャージャー
総排気量(cc):658
最高出力:64ps/6,000rpm
最大トルク:10.5kgm/3,200rpm
トランスミッション:CVT
駆動方式:FF
中古車相場:6.8万~148万円(各型含む)
まとめ
『同サイズのてんとう虫と向かい合った広告』など、特に横から見たデザインが秀逸であり、グレード展開次第ではヒット作になる要素もあったR1でしたが、スバル独自の軽自動車生産が2012年に終了するのを待たずして廃盤になりました。
MT車の設定が無いのは本当に惜しいところでしたが、その気になれば原型のR2からMTを転用する手もあり、サスペンションはスバルオリジナルの軽自動車らしく4輪ストラット独立懸架なので、ベース車として楽しむ余地はかなりあります。
もちろんCVTのままでも十分な動力性能と小型軽量コンパクトさを活かして快適な走りが楽しめるので、個性的なデザインと合わせて「ひと味違うコンパクト・ホットハッチに乗りたい!」というユーザーにとっては、魅力的な1台です。
なお、もしDOHCスーパーチャージャー仕様を買うならば、ハイオク仕様でトルクフルな、『S』グレードの初期型(2005年11月~2006年11月)をオススメします。
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