時は1990年代前半、排気量660cc化とともにボディサイズもやや拡大した旧規格軽自動車では、バブル景気やその名残もあり、それまでの実用性本位なものとは異なる高付加価値の高い軽自動車が作られ始めていました。その代表格が各社独自の趣向を凝らした軽オープンカーでしたが、中でも唯一の4シーターオープンクーペが、スバルブランド40周年記念特別仕様車スバル ヴィヴィオT-Top 、そしてその翌年に生まれたスーパーチャージャー版、GX-Tです。

 

出典:https://www.youtube.com/watch?v=_wEAjIlqawc

 

 

「660cc旧規格第1.5世代」のスバル ヴィヴィオ

 

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Subaru_Vivio

 

現在では独自生産から撤退してしまったスバルの軽自動車がまだ元気な頃、旧規格軽自動車660cc時代に対応した、レックス後継のブランニューモデルとして誕生したのがスバル ヴィヴィオでした。

プラットフォームを一新して衝突安全性やボディ剛性を向上、軽自動車としては豪勢な4輪ストラット式独立懸架やターボではなくスーパーチャージャーの採用、オートマ車へのCVT採用など、他メーカーの軽自動車とは一線を画した作りが売り。

特に低重心化によるキビキビとした走りは同時期の軽自動車の中で群を抜いており、WRC(世界ラリー選手権)など国際ラリーで活躍できた数少ない軽自動車でもあります。

また、現在の「軽クラシック路線」の先駆けとなったサンバー・ディアスクラシックに続く、ヴィヴィオ・ビストロを1995年に発売。

このヴィヴィオ・ビストロの大ヒットで各社同様のモデルを発売するなど、ヴィヴィオが流行の最先端という時代がありました。

他にも個性的な特別仕様車を発売しており、その中でももっとも特異なのがコンバーチブルのヴィヴィオ・T-Topと、そのスーパーチャージャー版GX-Tでした。

 

軽オープンスポーツ真っ盛りの時代、唯一の軽4シーターオープン

 

出典」https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Subaru_Vivio

 

ヴィヴィオのデビューした1992年、軽自動車メーカー各社は相次いで付加価値の高い軽オープンカーを続々と発売していました。

その流れには2つあり、1つはFR(フロントエンジン・後輪駆動)またはMR(リアミッドシップ・後輪駆動)の本格オープンスポーツ。

それがホンダ ビート、スズキ カプチーノ(以上、1991年登場)の2台で、ガルウイングドアのMRスポーツ、オートザム AZ-1(1992年登場) / 兄弟車のスズキ キャラ(1993年登場)の2台とともに、現在でも高い人気を誇っています。

もう1つがFF(フロントエンジン・前輪駆動)の軽乗用車をベースにオープンカー化したもので、こちらはスポーツ性というより「気軽にオープンエアを楽しむもの」でした。

こちらは普通乗用車ベースのオープンカー(サイノスコンバーチブルなど)が日本ではほとんど成功しなかったのと同様に、販売台数的にはそれ程でもありませんでしたが、カルト的に人気を誇っています。

それがダイハツ リーザスパイダー(1991年登場)と、今回紹介するヴィヴィオT-Top / GX-Tで、2シーターの前者と異なり、なんと4シーターオープンクーペという、おそらくは軽自動車史上空前絶後の特異なモデルでした。

 

独立トランクを持つ3BOXオープンカー

 

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Subaru_Vivio

 

この特異な軽オープンカーは、クローズド状態ではリアに独立トランクを持ち、リアウィンドウが急角度でトランク手前に落ちていく3BOXスタイルのノッチバッククーペでした。

Aピラーやフロントウィンドウ、それより前のフロント部分は通常のヴィヴィオとほぼ同様ですが、そこから後ろはドアも含め全てT-Top / GX-T専用。

まずルーフ(天井)は外してトランクに収納できる「タルガトップ」と呼ばれる方式でオープントップ化。

リアウィンドウも電動でボディ内部へ格納され、窓も開けばBピラーを残してそれなりに開放感のあるオープンカーとなります。

最大の特徴と言える後席は、ヘッドレストこそ無いものの2名乗車が可能となっており、子供なら問題無く、大人でも短距離なら2名が座れ、斜めに座って足元スペースを確保すれば、大人1名なら長距離移動も問題ありません。

 

4名乗車+タルガトップによる安心感

 

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Subaru_Vivio

 

同種の軽乗用車ベースオープン、リーザスパイダーが2シーター+幌によるソフトトップ車だったのに比べると、いざとなれば4名乗車が可能で、タルガトップ+ビニール窓では無いリアウィンドウを持つヴィヴィオT-Top / GX-Tは安心感に格段の違いがあります。

確かに脱着・開閉部がある以上は、ある程度の雨漏りなどは仕方ないかもしれません。

しかし、幌よりも耐候性が高く、セキュリティ面での安心感も一気に向上したのは事実です。

Bピラーが残るため完全なフルオープンにはなりませんが、その代わりに転倒時の乗員保護という面でも、高い安心感が確保されました。

「大人4名のフル乗車ではさすがに狭い」というのは欠点と言えば欠点ですが、そもそも趣味性の高い軽オープンで合法的に4名乗車ができるのは、それだけで強みです。

なお、T-TopとGX-Tの違いですが、T-Topはヴィヴィオの通常グレードがベースでエンジンもNA、ミッションも5MTとCVTで選べ、3,000台限定。

GX-TはMSC(メカニカルスーパーチャージャー)仕様と言われるフロントマスクで、エンジンもSOHCながらスーパージャーチャー仕様で64馬力とパワフル、ミッションはECVTのみで1,000台の限定生産でした。

 

スバル ヴィヴィオT-Top / GX-Tのスペックと中古車相場

 

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Subaru_Vivio

 

【スバル KY3 ヴィヴィオ T-Top 1993年式】

出典:http://viviowrc.tripod.com/id10.html

全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,380

ホイールベース(mm):2,310

車両重量(kg):730

エンジン仕様・型式:EN07E 水冷直列4気筒SOHC8バルブ

総排気量(cc):658cc

最高出力:52ps/7,200rpm

最大トルク:5.5kgm/5,600rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古車相場:25.8万~88万円

 

【スバル KY3 ヴィヴィオ GX-T 1994年式】

出典:https://www.youtube.com/watch?v=nDR7XcIMaeU

全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,380

ホイールベース(mm):2,310

車両重量(kg):780

エンジン仕様・型式:EN07Z 水冷直列4気筒SOHC8バルブ ICスーパーチャージャー

総排気量(cc):658cc

最高出力:64ps/6,400rpm

最大トルク:8.6kgm/4,400rpm

トランスミッション:CVT

駆動方式:FF

中古車相場:45万~59.8万円

 

まとめ

 

ヴィヴィオT-Top / GX-Tは、スバルが作った唯一の軽オープンカーでした。

当時のスバルはまだ日産と提携しており、その縁からか日産と関係の深い特装車メーカー、高田工業へ製造を委託できたのも、この特異な4シーターオープンを作れた理由かもしれません。

現存台数がどの程度かわかりませんが、まだ所有しているユーザーがいれば、単にスバルオリジナルの軽自動車というだけでなく、軽自動車唯一の4シーターオープンクーペという意味でも非常に貴重なので、大事に乗っていただきたいと思います。

 

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