様々な新車に試乗したり自動車の記事を書き続け、古今東西のクルマを知り尽くした自動車雑誌の編集長がマイカーを選ぶ決め手は、いったいどこなのでしょうか?また、数あるクルマの中からなぜ、この1台を選んだのか。そんな疑問を紐解く為の連載企画第2段!今回は創刊から40年近い歴史を誇る月刊誌『カー・マガジン』の長尾 循 編集長の愛車をご紹介します。

 

カー・マガジン編集長の長尾 循さんと愛車のケータハム・スーパーセブンGTスプリント / ©︎Motorz

 

長尾編集長の簡単な経歴

名前:長尾 循(ナガオ ジュン)

1962年東京生まれ、東京育ち。

某デザイン専門学校を卒業後、都内の極小デザイン事務所兼編集プロダクションに勤務。

1985年:企画室ネコ(ネコ・パブリッシングの前身)に入社。

『ザ・スクランブル・カー・マガジン』をメインに『レイルマガジン』、『モデル・カーズ』などのエディトリアルデザイナーとして活躍。

1998年:クルマ模型の専門誌『モデル・カーズ』の編集長を担当

2015年:『カー・マガジン』の編集長に就任し、現在に至る

「勉強はニガテだったけど、絵を描くのは好きだったんだよね〜。」と語るナガオさんは、現在でこそ『カー・マガジン』の編集長を務めていますが、もともとは誌面のデザインを担当されていました。

昔から模型とクルマが大好きだというナガオさんは、元々デザイナーとして携わっていたクルマ模型の専門誌『モデル・カーズ』で、ひょんなことから編集長に就任することになり、そこから転じて”リアル カーズ”な『カー・マガジン』の編集長に抜擢されたそうです。

 

長尾編集長の愛車遍歴

 

©︎Motorz

 

そんなナガオさんはこれまで、どんなクルマに乗ってきたのでしょうか?

・1981年式 ケータハム スーパーセブンGTスプリント(初のマイカーであり、現在の愛車)

・1981年式 ミニ1000 HL

・ローバー114 GSI

・フォード フォーカス ワゴン

・フォード フォーカス セダン

・ルノー ルーテシア(現在も所有)

初めて買ったクルマは1981年式のケータハム スーパーセブンGTスプリントで、24歳の頃に購入して以来、現在まで大切に乗られているのです!

また、子供が生まれてからもしばらく愛車はセブン1台で生活していたそうなのですが、とある事件(後述)をきっかけに2台目を購入する事に。

そんな、2台目に選んだ愛車がクラシックミニでした。

その後、ローバー114、フォード フォーカスワゴン/セダン、と乗り継ぎ、現在の移動用のクルマは、ルノー ルーテシアとのこと。

実は欧州フォード(というかフォーカス)好きなナガオさんは、フォードの日本復活を切に願っています(笑)。

 

ズバリ、愛車購入の決め手は?

 

©︎Motorz

 

そもそも、ナガオさんとセブンとの出会いは幼少期にありました。

よく『世界のスポーツカー』みたいな図鑑あるじゃないですか?

私はそんなに活発な子供ではなかったので、親から本を与えられて夢中になって読んでいたのですが、その図鑑の中にロータス セブンのシリーズ1が登場していたのがセブンと私の初めての出会いでした。

 

子供ながらに”変なクルマだな〜”という印象を抱いたことをよく覚えています。

 

ただ、その図鑑には誤植があって、セブンの隣にロータス エリートが載っていたのですが、エリートの写真に『セブン』、セブンの写真に『エリート』と書かれていたので、ずっとセブンのことを『エリート』だと思い込んでいたんですよね(笑)。

 

ハンドルはロータスとなっていますが、ナガオさんのセブンは”ケータハム”です。 / ©︎Motorz

 

幼少期のナガオ少年にとって憧れのクルマとなった”セブン”でしたが、その後、セブンが憧れから現実的になる出来事が起こります。

中学〜高校生くらいの頃から『カーグラフィック(CG)』誌を購読し始めたのですが、ちょうどその頃、紀和商会が精力的にケータハムの輸入を行なっており、CGでセブンのインプレ記事を読んだことで、海の向こうの手の届かないクルマから、自分の中で一気に現実的な、将来乗ってみたいクルマの候補になりました。

 

その後、就職して自動車雑誌のデザイナーとなるのですが、確かスクラン(カー・マガジンの前身となる雑誌)で取材させてもらった人だったのかな?

 

「知り合いにセブンを手放す人がいるんだけど……。」という話をスクランの編集者さんから聞いて、個人輸入で日本に入ってきたセブンを購入したんです。

 

最近、パナスポーツのホイールを新調。当時の定番だった『ADVAN HF Type D』も最近復刻されたので装着! / ©︎Motorz

 

素敵な巡り会わせで、ナガオさんの元にやってきたセブンですが、購入当初は「次の車検まで乗れればいいかな〜。」という軽い気持ちだったそうです。

私の両親は免許すら持っていなかったので、クルマには興味も無く、購入するときはむしろまわりの親戚なんかに猛反対されたんですよ。

 

「こんな屋根もないクルマで、暴走でもするんじゃないのか〜。」って(笑)。

 

自分としてもこんなに長い付き合いになるつもりはなくて・・・、ただ反対された分、長く乗りつづけてやろうという気持ちが芽生えたのかもしれません(笑)。

 

愛車との濃ゆ〜い思い出

 

ナガオさんのセブンは当初は赤色でした。現在の緑色になる前に一度、紺/アルミの地色の時代を経ています。 / photo by Jun NAGAO

 

セブンのようなクルマに乗る人は、ドライビングスキルがあって、立派なガレージを持っていて、自分でメンテナンスも出来るような人をイメージすると思います。

しかし自分はそんな人間ではなかったと、ナガオさんは自身を振り返ります。

このクルマを所有してかれこれ30年以上経ちますが、お恥ずかしながら実はその間に2回事故を起こしていて、直しては壊してを繰り返し、今に至ります(笑)。

 

若い頃はせっかくスポーツカーに乗っているのだからと、サーキットで走行会に行ったりと頑張っていたのですが、頑張ってみて気付いたんです。

 

”自分にはドライビングセンスが無い”って(笑)。

 

なので、無理するのはやめました。

 

そうそう、当時は屋根付きのガレージもなかったので、家の近所のジャリ駐を借りて停めていました。

 

もちろん乗らない時はカバーを掛けてはいたのですが、梅雨時は2~3週間放っておくとステアリングにカビが生えちゃうんですよね(笑)。

 

photo by Jun NAGAO

 

大抵のクルマ好きは結婚したり、子供が出来たりと家庭のカタチが変わるとお気に入りの愛車から降りたり、乗り換えたりせざるを得ない状況となりますが、ナガオさんは違いました。

ウチは妻も自動車免許を持っていないので、どこか移動するにも常に私の助手席に乗るしかなかったんですよ。

 

だから妻としては別にクルマなんて無くても構わないし、あくまでも私が好きで乗っているだけ、という感覚でした。

 

子供が生まれても私たち夫婦の間でその感覚は崩れず、しばらくは助手席の妻の膝の上に子供を乗せて移動してたんですよ。

 

本当、今考えるとありえないんですけど(笑)。

 

でも、子供がまだ1歳にも行かないくらいの時に1度、夜中に高熱を出したことがあって、毛布でぐるぐる巻きにしていつものように病院へ向かったのですが、そしたら看護師さんにものすごい剣幕で怒られまして・・・。

 

そこで初めて「あぁ、屋根があって4人乗れるクルマを買わなきゃな。」と思ったんです(笑)。

 

それで初めて増車をする事になり、1000ccのミニを手に入れました。

 

カー・マガジンってどんな本ですか?

 

©︎Motorz

 

毎月26日に発売されている『カー・マガジン』は1979年に『ザ・スクランブル・カー ・マガジン』のタイトルでスタートし、2019年には40周年を迎える超老舗自動車専門雑誌です。

1960~1970年代のヒストリックカーと古今東西のスポーツカーを中心とした誌面構成となっており、”趣味車”を愛するエンスージャストのカーライフを応援する雑誌として、様々なテーマの記事・企画を掲載しています。

「カーマガの編集長と言うとクルマに博識で、立派な人間だと思われがちですが、私は長らく模型の編集長だったので・・・。」と自身では謙遜するものの、その正体は立派なクルマ趣味人。

同じクルマを30年以上も乗り続け、2度大破しても、そのクルマを修理して蘇らせる人間は世の中にそう多くはいないはずです。

毎年、春秋に大磯ロングビーチの駐車場で開催されている『カー・マガジン・ウィークエンド・ミーティング』では貴重なヒストリックカーが多数集まる他、そんなヒストリックカーやメーカーの最新モデルに同乗出来るイベントも開催されているので、ヒストリックカー好きの方は、是非チェックしてみてくださいね!

 

まとめ

 

とにかくセブンが大好きなナガオさん。お手製の『I LOVE 7』ステッカーがクールです。 / ©︎Motorz

 

最後にナガオさんに、なぜ「最初の車検まで乗れればいいや〜」と思っていたセブンに30年以上も乗り続けられているのか聞いてみました。

う〜ん、私はお恥ずかしながら超アナログ人間なんですよ。

 

ホント、つい半年前くらいにスマートフォンに買い換えたくらいのアナログ人間ですから・・・(笑)。

 

だから、便利で新しくて快適で・・・みたいな売り文句にあまり魅力を感じないんですよね。

 

そういうものって1度買って慣れてしまうと、それが無いと満足出来ないじゃないですか。

 

私はセブンの超プリミティブなところが好きなんです。

 

現代の道路事情でこんなクルマに乗っていると、危なくて仕方がないなって思うシーンは多々あります。

 

ただ、クルマも道具ですし、運転の仕方を間違えたら凶器になってしまうのは今も昔も変わりません。

 

最近の子供がナイフで鉛筆を削れないのは道具の使い方を知らないからなんです。

 

我々の世代は鉛筆を削るのにナイフを使っていましたが、今の若い子が包丁を使えないかと言えば違いますよね。

 

やっぱり道具って長く使っていると愛着も湧くし、自分に馴染んでくるというか、カスタムとかしなくても自分好みに仕上がってくると思っていて。

 

今はもう、このセブンは自分の相棒ですし、この先もずっと暮らしていけたら幸せですよね。

実は筆者も1991年式のクラシックミニに乗っている身分(私自身は1993年式)。

そのため、ヒストリックカーの大先輩としてのナガオさんの話には、大変感銘を受けました。

温故知新という言葉があるように、先人の知恵を借りることで新たな道が切り開けることは人生においてたくさんあると思います。

そして、自分自身もナガオさんと同じく古いクルマに乗っているのは、旧式な設計のクルマを触れることで先人の想いを感じ、そこから多くのことを学んだり考えたりしながら、この先の人生も共に生きていきたいと思っているからなのだと、私はこの取材を通して感じたのでした。

 

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