初代スズキ ワゴンRの大ヒット後、自動車メーカー各社は天井が高いトールワゴンタイプの軽自動車やコンパクトカーを競って発売しましたが、ホンダでも軽乗用車の2代目ライフに続きデビューしたのがキャパでした。デザイン、性能ともに『ロゴをベースに作ったライフ』といった雰囲気で派手さはありませんでしたが、現在のフリードへ続く流れを作っています。
ロゴをベースに開発したコンパクトトールワゴン『キャパ』
ホンダは1990年代半ばに初代オデッセイ(1994年)をヒットさせたのを機にミニバンやSUVなどRV(レクリエーショナル ビークル)路線へ大きく転換。
スポーツイメージの強いホンダの参入は、RV市場から歓迎され「RVで儲けてF1をやっている」とまで言われた程でした。
そして、ヒット作が相次いだホンダのRVシリーズは『クリエイティブ ムーバー』と呼ばれましたが、次の一手として『Happy Together!』をテーマに21世紀への新しいモビリティを提案する『J・ムーバー(ジョイント&ジョイフル・ムーバー)』を誕生させます。
それが1997年の東京モーターショーに展示された4台のコンセプトカーで、いずれもコンパクトベーシックカーのロゴ(1996年)をベースにし、4台中3台がほぼそのまま市販化。
うち天井の高いトールワゴンタイプ『J-MW』の市販型が、1998年4月に発売された『キャパ』でした。
流行に乗りつつ、実用性の高さをアピールした堅実な作り
キャパはGA4(FF)/GA6(4WD・1999年9月追加)という型式からわかるとおり、GA1/2型シティ、GA3/GA5型ロゴの延長線上にあるコンパクトカーで、ロゴの天井を高くして軽トールワゴンの2代目ライフ(1997年)風のボディを与えたトールワゴンです。
当時は初代スズキ ワゴンR(1993年)の大ヒットを背景に自動車メーカー各社が軽自動車やコンパクトカーで競うようにトールワゴンを発売していた頃で、ホンダもその流行に乗った形でした。
それは2018年12月現在のコンパクト トールワゴンが後席両側スライドドアを持つか、あるいは3列シートコンパクトミニバンへ発展しているのとは異なり、当時は後席も通常のヒンジドアを持つ、単に背が高くてヘッドスペースの広い車という時代です。
もちろんキャパもターボエンジンや純正カスタム仕様などの派手さは皆無で、エンジンは1.5リッターSOHC1種類のみをマルチマチックと呼ばれたCVTか、廉価版4速ATと組み合わせている程度の違いしかありません。
グレード構成もラグジュアリー仕様の『L』、快適装備充実版の『G』(後に『ツイッテル』)、廉価版の『B』とシンプルでした。
しかし当時まだコンパクトカーには少なかった後席前後スライド機構や、『MM思想』(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)の延長線上にある、エンジンなどメカ部分の張り出しを少なくしてキャビンを広く快適性を高めたデュアルデッキ・パッケージを採用。
派手さは全くない代わりに実用性が高く出しゃばらないデザインの、堅実なトールワゴンとして親しまれ、2002年まで販売されました。
主なスペックと中古車相場
ホンダ GA4 キャパ ツイッテル 2002年式
全長×全幅×全高(mm):3,790×1,640×1,650
ホイールベース(mm):2,360
車両重量(kg):1,110
エンジン仕様・型式:D15B 水冷直列4気筒SOHC16バルブ
総排気量(cc):1,493
最高出力:72kw(98ps)/6,300rpm
最大トルク:133N・m(13.6kgm)/3,500rpm
トランスミッション:4AT/CVT
駆動方式:FF
中古車相場:5万~13万円
まとめ
キャパも含まれたJムーバーの市販モデル(キャパ以外にHR-Vと初代インサイト)はいずれも販売面では少々苦戦しましたが、ベースとなったロゴがあまりに簡潔すぎた車だったため、仕方の無いところです。
コンセプト自体は活かされ、後にフィットという優れたベース車を得てからは、Jムーバーの延長線上にあるモデルがヒット作となっており、キャパもモビリオを経て現在のフリードへと発展。
2/3列シートコンパクトミニバンのヒット作へとつながりました。
そして、キャパ自体はヒット作ではありませんでしたが、新しい価値観が生まれようとする時代の習作として歴史にその名を留めています。
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