クルマのカスタムをするうえで、車高のローダウンはカッコよく見せる一つの方法です。しかし、最低地上高は保安基準を満たさなければ、車検を通すことができません。ローダウンをする場合、最低地上高はどこまで下げていいのでしょうか。測定の仕方なども含めて、ご紹介しましょう。
最低地上高は9センチ!どこを測る?
車検を通すための車高は『9cm』と決められていることは、ほとんどの方が知っていると思います。
この基準は、国土交通省が発行する『道路運送車両の保安基準』の〈第二節〉第85条二ロ(1)に『自動車の地上高(全面)は、9cm以上であること。』と記載されているのです。
測定条件も定められており、
(1)測定する自動車は、空車状態とする。
(2)測定する自動車のタイヤ空気圧は、規定された値とする。
(3)車高調整装置が装着されている自動車にあっては、標準(中立)の位置とする。ただし、車高を任意の位置に保持することができる車高調整装置にあっては、車高が最低となる位置と車高が最高となる位置の中間の位置とする。
(4)測定する自動車を舗装された平面に置き、地上高を巻き尺等を用いて測定する。
(5)測定値は、1cm未満は切り捨てcm単位とする。
ん? この真ん中のプレートが90㎜だから最低地上高100㎜位か⁉ うー車高下げたい下げたい‼ まだ8㎜は落とせるはず! pic.twitter.com/G50b3VM8dx
— まっきー (@camera_macky) 2019年5月2日
さて、問題となるのはどこからどこまでの高さを測るかですが、それは地上からクルマの下回りで一番低いところまでの距離となります。
しかし、可動する部位は対象外となるので、具体的にはロアアーム、リアアクスル、スイングアーム、コントロールアームなどのアーム類やラテラルロッドやトーコントロールロッドが対象外。
計測する場合は、クルマの構造上マフラー、オイルパン、サスペンションメンバーといったところが測定するうえで一番低いところになります。
それでも、カスタム内容や車種によっては一番低いところが異なるため、実際に測定する場合は車体の一番低い部分を探しながら、最低地上高を測ります。
エアサス装着の場合は最高値と最低値の中間値
車高を調整できる『エアサス』などの車高調整式サスペンションが装着されている場合は、測定基準の(3)が適応されます。
そのため、車高を一番高くした状態で最低地上高を測るのではなく、車高の最高値と最低値の中間を測定するのです。
なぜ最低地上高9センチ以上なのか?
最低地上高は9センチ以上とされていますが、これは以下の数式で求めることができます。
『道路運送車両の保安基準』〈第二節〉第85条 二 ロ(2)(3)より、
(1)軸距間に位置する自動車の地上高は、次式により得られた値以上であること。
H=Wb・1/2・sin2° 20′ + 4
(3)前輪より自動車の前方又は後輪より自動車の後方に位置する自動車の地上高は、次式により得られた値以上であること。
H=Ob・sin6° 20′ + 2
【H=自動車の地上高(cm)、Wb:軸距(cm)、Ob=前軸から自動車の前方の地上高を測定しようとする位置と前軸の中心線との距離(cm)、sin2° 20’=0.04、sin6° 20’=0.11】
この計算によると、オーバーハングとホイールベース、最低地上高の関係は以下のようになります。
オーバーハング(cm) | 軸距間(cm) | 最低地上高(cm) |
---|---|---|
1~72 | 101~299 | 9 |
73~81 | 300~349 | 10 |
82~90 | 350~399 | 11 |
91~99 | 400~449 | 12 |
100~109 | 450~499 | 13 |
110~119 | 500~549 | 14 |
これらに定められた値は重要保安部品の安全確保の為で、道路の凹凸や踏切を越える場合など、重要保安部品を傷つけたり破損させないように安全を確保するための最低値とされています。
そのため、ホイールベースの長いクルマは、傾斜から平面への角度を乗り越える際に下回りが地面と干渉しやすいので、ホイールベースが長くなるにつれ、車高を高く設定。
たとえば、トヨタ86の場合は、ホイールベースが257.0センチのため、
257.0×0.02+4=9.14
と理論上9.14センチ以上でなければなりませんが、トヨタ86はノーマルで最低地上高13センチなので、ノーマルから4センチまではローダウンしてもOKです。
しかし、アルファードはホイールベースが300センチ。
ノーマル状態での最低地上高が16.5センチであり、最低地上高は10センチまでとされているため、ローダウンはノーマルから6.5センチまで。
メーカーは安全確保のために、最低地上高を最低値よりも余裕をもたせ、ホイールベースが長くなるにつれ最低地上高を高く設定しています。
エアロパーツ装着なら5センチでもOK!
車体の下回り全面が9センチ以上でなければならないのかというと、実はそんなことはありません。
前後バンパーやサイドスカートなどのエアロパーツ、アンダーカバーは5センチ以上であれば車検を通すのには問題ありません。
ただし、これには条件があり、樹脂製であることは必須なのですが、バンパーにフォグランプやウインカーなど灯火類が組み込まれていると、5センチ以上というのは対象外になります。
まとめ
今回、紹介した内容を簡単にまとめると、
・最低地上高は下回りで一番低いところから9センチ
・ホイールベースにより、最低地上高は異なる
・エアロパーツなどは5センチ以上までOK
となります。
車検に通すときだけ車高を合法値にすれば良いと考えがちですが、違反改造の検問に合ったり、パトロールしている警察車両に見つかれば、違反切符を切られることも!
車高のローダウンは、カスタムをするうえでは外せない改造内容ではありますが、極端なシャコタンは安全上の問題も増えるので、できる限り最低地上高を守って、カスタムを楽しむ事をおすすめします。
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