今やほとんどの乗用車に搭載されている「カーナビ」。その歴史は1980年代頃に始まり、1990年代にGPS式が普及。2000年代にはリアルタイム地図更新が可能となりました。そして2010年代の今では、スマホのアプリとしても存在しています。今回はそんなカーナビの歴史を国内限定で振り返ります。
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世界初のカーナビはホンダが開発した
世界初のカーナビは、ホンダが1981年に開発した『ホンダ・エレクトロジャイロケーター』です。
これは、自動運転の実現を目指して開発されたもので、目的地までの道のりをディスプレイ上でガイドするものでした。
その仕組みは実に単純で、あらかじめ地図が印刷された透過シートをブラウン管の画面前に差し込み、筐体を操作して現在地を合わせ、場所の移動に合わせてフィルムを交換するもの。
目的地は専用のペンでシート上にマーキングし、ブラウン管から放たれる光によって現在地を把握。
フィルム上のマークと光の位置関係から距離を確認して、走れるようになっています。
しかし、当時は電子地図もGPSもない時代。
一体どうやって現在地を把握していたかというと、ホンダが開発したガスレートジャイロセンサーと走行距離センサーを使って、車の移動方向と距離を検出。
16ビットのマイコンで情報処理を行い、自車の位置データを算出していたのです。
しかし地図シートを交換する時は一旦停止しなければならなかったので、非常に煩わしく、あまり便利といえるものではありませんでした。
この時の経験を活かし、ホンダは光ディスクに地図データを記録する特許を取得。
その技術を、なんと無料で公開したのです。
これが、現在のカーナビへの発展に繋がっていきます。
1987年、電子地図のカーナビ登場
ホンダが取得した特許技術を無料で公開したことで、日本におけるカーナビはCD-ROMに地図データを記録し、これを画面上へ表示する方向へ発展しました。
そして1987年にはトヨタがモニター上に電子地図を表示し、ドライバーを誘導する『エレクトロマルチビジョン』をクラウンに搭載。
CD-ROMに地図データを記録することによって、表示可能エリアの制限はなくなりましたが、現在地の測位に地磁気センサーと車速パルスを用いていたので、送電線の下を通るたびに画面上の自車位置がずれていました。
その誤差は、時に20~30kmにまで及ぶことも。
そのため自車位置の測位精度の低さを解決することが、以降のカーナビ開発への課題となったのです。
1990年代、GPSの時代へ
そして1990年、マツダは三菱電機と共同でGPS式カーナビを開発。
同年発売のユーノス コスモへ搭に載しました。
GPSによって現在地を測定することで、これまでの精度の低さは一変し、現在地を設定せずとも利用可能となったため、以前よりも利便性が格段に向上。
カーナビにGPSを使用するきっかけとなったのは、南極での資源探査にこのシステムが使用されていたことにあります。
開発に協力していた三菱電機は、南極でGPSが一定の成果を挙げていたことを知り、これを採用。
当時、住宅の地図を電子化しようとしていたゼンリンと共同で電子地図データを作成して、ユーノス コスモのカーナビに導入したのです。
しかしこのカーナビは使用可能時間が1日数時間と限られており、さらにGPSの衛星数が少なかったことから、地図上に表示できるのは自車の位置だけ。
ルート案内や施設検索は不可能でした。
1990年代、カーナビに施設検索機能とガイド機能が備わる
そんな状況を打ち破ったのは、またもやホンダでした。
彼らはGPSカーナビに施設検索機能と地図のスクロール機能を有した、『ホンダ・ナビゲーションシステム』をレジェンドに搭載。
それを追うかのようにトヨタも1991年10月にナビゲーション機能のついた『GPSエレクトロマルチビジョン』をクラウンに搭載、続く1992年にはこれに音声ガイドを追加してセルシオに載せました。
この音声ガイド追加版は、主要交差点でその名前を読み上げ、地図上の表示を拡大する機能も備わっており、ドライバーの利便性向上に寄与しただけではなく、現在のカーナビの原型となりました。
そして1993年、クラリオンがGPSとジャイロセンサー、車速信号から現在位置を把握するハイブリッド測位を採用し、トンネル内やビル街でも自車位置が止まることのない『NAX-700』を発売。
これにより、現在の測位方式の基礎が確立したのです。
そして1998年にはホンダがナビゲーションシステムにインターネットを組み合わせた、『インターナビ VICS』サービスをアコードから開始。
同年パイオニアからDVD-ROMを採用したカーナビが発売されるなど、新たなカーナビが次々と誕生していきました。
2000年代、カーナビ飛躍の時代へ
20世紀の終わりとともに、GPSのSA信号が停止されました。
元々、GPSとはアメリカの軍事用衛星を使った測位システムであり、1990年代までは敵軍に利用されることを防ぐ目的で、民間GPSにわざと誤差データを加えるSA信号が発信されていたのです。
しかし2000年になって、アメリカ国防総省はこのSA信号を解除。
これによって民間GPSの精度は従来の100mから50mまで向上します。
そして、日本国内のカーナビもこれにより位置精度が上がり、今までにないタイプのカーナビが発売されたのです。
日産は2002年に移動体通信システム、テレマティックスを採用した『カーウィングス』を発売。
ドライバーの望む情報を筐体内のDVD-ROMから得るのではなく、双方向通信を使うことで情報提供者からデータを得られるようになりました。
そして翌年、ホンダもインターナビ機能から集めた交通情報を、VICS未提供道路にも送る『フローティングカー』システムを実用化。
2005年に電気通信事業社のKDDIが、携帯電話上で使用可能な『EZ助手席ナビ』サービスを始め、現在のスマホアプリ式カーナビの前身となります。
このように2000年代は90年代に確立したナビゲーションシステムをさらに発展させ、地図データを筐体内からではなく別のところから得られるように進化を遂げた時代となったのです。
2010年代、スマホの登場がカーナビを変えた
2010年代に入ってから、カーナビに大きな変化が訪れます。
スマートフォンが登場したことによって、Google、アップル、YahooなどのIT企業がカーナビ機能を有したアプリを開発。
スマホユーザーへ向けて、公開したのです。
これによってカーナビを買わなくともスマホで事足りるようになり、これに応じて各種メーカーもスマホアプリ対応のカーナビを開発するようになりました。
そして2012年にはトヨタがスマホアプリ対応の『スマホナビ対応ディスプレイ』を発売。
2014年と2016年にはパナソニックがGoogleとアップルのナビゲーションシステム、『CarPlay』と『Android Auto』に対応したカーナビを販売しています。
さらに2017年にもパイオニアがAndroid Auto・CarPlay対応ディスプレイが付いた、カーステレオを発売しており、2018年にはトヨタもスマートデバイスリンク対応のカーナビを載せた車を販売。
現在のカーナビはスマホアプリ対応のものが多く販売されており、非常に正確かつ多機能なものへと進化しています。
まとめ
今回はカーナビの歴史を見てきました。
たった30年ほどでここまでの進化を遂げているなんて、開発された当初は思いもよらなかったことでしょう。
スマホ専用アプリの存在で、最近は新たにカーナビを購入しなくてもよくなりましたが、山岳部やビル街ではそのアプリがまともに使えないこともあるので、カーナビ自体への需要は高いまま。
新車購入時も純正オプションとして選べるようになっています。
また昨今では、GPS衛星以外にも各国が航法衛星を打ち上げているので、以前よりも高精度な情報が受信できるようにもなりました。
この流れによりカーナビは、今後いったいどのように進化を遂げていくのでしょうか。
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