現在新車で購入できるバイクのほとんどは、インジェクションを採用しています。ひと昔前まではキャブレターが主流だったのに対し、今となって完全にインジェクションへ移行されました。いったいなぜなのでしょうか。

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大半のモデルはインジェクション!キャブ車はなぜ全滅寸前までなったのか?

ケーヒン製電子制御スロットルボディ / ©Keihin Corporation

バイクメーカーのカタログをいろいろと見ていると、キャブレターを搭載したバイクはほとんど見当たりません。

一部、競技車両や欧州メーカーのモトクロス・エンデューロモデルの、2ストロークエンジン搭載モデルには、キャブレターを搭載しているものの、公道走行可能な2スト車は、ほぼ全滅です。

新車で購入可能なキャブ車は絶滅寸前となっており、あえてキャブ車にこだわるなら、中古車を探した方が建設的という状況。

なぜ、キャブレターからインジェクションへ一気に移行されたのか、気になって調べてみると、排ガス規制や燃費向上など、キャブレターの欠点をほぼ網羅する技術がインジェクションに備わっていました。

キャブレターとは

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キャブレターは、内燃機関のなかに燃料と空気を送り込む燃料供給装置のことで、キャブレターが搭載されているバイクやクルマは『キャブ車』と呼ばれています。

シリンダー内へ燃料を入れる際に、ガソリンが液体のままでは燃えにくいため、燃料を霧状に散布して一緒に空気を送り込ませるなど、空気とガソリンを混合気にすることで燃焼させやすくなるのです。

インジェクションとは

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%83%E6%96%99%E5%99%B4%E5%B0%84%E8%A3%85%E7%BD%AE

インジェクションはキャブレターと違い、『インジェクター』と呼ばれる部品を利用した燃料噴射装置で、フューエル・インジェクションの略記で『FI』と呼ばれることもあります。

エンジンの排気量や性能に応じて最適な燃料の容量をコンピューターが判断してインジェクターへ電気信号を送り、その量が噴射されます。

従来のインジェクターはインテークマニホールド内の吸気ポート付近で燃料を噴射させていましたが、最近のクルマではダイレクトに燃料がシリンダー内に送り込まれるように、インジェクターをシリンダーへ直接取り付ける『直噴エンジン』が普及しています。

インジェクションがキャブレターに勝るところは

キャブレターの構造は複雑でありながら、コンピューターを使わない機械的な部品のため、調整は自ら行うか整備士の方に依頼しなければなりません。

工具さえあれば自ら調整可能で、キャブレター内のメインジェット/パイロットジェット/ニードルジェットなどの部品を交換したり、アイドリング時の回転数を調整するアイドルストップスクリューや混合気の空気の量を調整するパイロットエアースクリューで、キャブは調整されます。

よりパワーを得たいのであれば、カスタム用の社外キャブレターを装着して馬力を上げたり、アクセルを開けたときのレスポンスを良くすることも可能。

しかし、雨天や梅雨時期など湿度が高い場合や、空気が薄い標高の高い場所に行くとキャブレターのセッティングが合わず、本来の性能が発揮できなくなってしまうことも。

一方で、インジェクションはコンピューターによる制御であるため、気温、気圧、湿度の値が大幅に変わったとしてもコンピューターが判断し、最適量の燃料を噴射可能なシステムとなっています。

そのため、どこでもエンジンがかかりやすく、常に最適なセッティングで走行できるというメリットがあります。

また、ガソリンをキャブレターよりも細かい粒子状にして噴射して、強制的にシリンダーへ送り込ませるため、効率よく混合気を爆発させることができるので、燃費性能はキャブレターよりハイスペックです。

更に、排ガス中の酸素の濃度を測るO2センサーが排ガス内の酸素濃度を測り、噴射量に対し酸素が多いか少ないかを判断して、センサーから発せられた電気信号によってインジェクターの燃料噴射量が調整されます。

よって、有毒な排気ガスを極力少なくできるため、インジェクションは年々厳しくなる排ガス規制をクリアするために有利なのです。

2スト車にもインジェクションの時代

STUDIO KTM 300 EXC TPI / ©KTM

その昔、2ストエンジンには、必ずと言っていいほどキャブレターが採用されていました。

なぜなら、2ストは混合気を作るためにエンジンオイルとガソリンを混ぜる必要があったため、インジェクション化は難しく、実現できたとしても大幅にパーツ数が増えるため、コストが高くなることや車両重量増になることで、2ストはインジェクション化されないまま、排ガス規制対策で衰退していきました。

しかし、2018年にKTMが送り出したエンデューロモデルKTM250EXC・TPIおよび300EXC・TPIは、2ストオフロードモデルで世界初のインジェクション化に成功。

分離給油システムを採用し、さまざまなセンサーによりガソリンとエンジンオイルの混合比を80~100:1の間で変動させて最適化してくれます。

そのため、アクセルオフ時でも燃料を自動カットしてくれるので、最大40%もの燃費向上を実現。

2スト車の人気が高いエンデューロ競技において、競技車両という名目ではありますが、インジェクション化することで、2ストの弱点を克服したのです。

まとめ

バイク ツーリング

出典:写真AC

インジェクションの欠点として、コストが高いことや、精密機械のため、故障した際にはインジェクターごと交換しなければならない点が挙げられます。

しかし、今では高性能で故障も少なく、さらに価格も安いインジェクターが登場したため、キャブレターと比較しても、ほぼデメリットが存在しない状況です。

また、バイクはクルマよりもインジェクション化が大幅に遅れており、インジェクション化が進んだのは1990年代終盤あたりからだったため、まだまだ中古市場を占める多くの個体はキャブ車ばかり。

性能面ではインジェクションを選びたくなりますが、年式が古い安めの中古車を購入するのであればキャブ車にたどり着くため、ライダーならばキャブレターでもインジェクションでも、ある程度知識はもっておいたほうが良いでしょう。

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