世界的にも伝統があるポルシェ・カレラのワンメイクレース。その日本版がPCCJ(ポルシェ・カレラ・カップ・ジャパン)です。将来を夢見る若者から、ベテランまで様々なドライバーが争っています。参戦費用も高額ですが、それゆえマシンも高性能。ここで活躍した数多くのドライバーがスーパーGT参戦のチャンスをつかんだり、ポルシェワークスドライバーにステップアップしている「登竜門」のようなカテゴリーでもあります。今年も若手ドライバーが将来を賭けて戦いを繰り広げているPCCJについてご紹介します。

Photo by Shunsuke Kawai

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PCCJ(ポルシェ・カレラ・カップ・ジャパン)とは?

pccj

出典:http://www.porsche.co.jp/

世界最高峰のワンメイクレースとして開催されるポルシェ・カレラ・カップ。

また世界で9つのシリーズが設けられヨーロッパだけでなくオーストラリアや、国を跨いだアジアシリーズもあります。

こちらは中国、シンガポールなどではF1のサポートレースとしても開催されています。

日本では2001年から始まり今年で16年目。今季は全10戦で争われ、将来を目指す若手からベテランまで幅広い年齢層のドライバーが参戦。

車種は統一されていますがドライバーのレベルに応じてクラス分けがなされ、『オーバーオール』と初心者向けの『ジェントルマンクラス』の2種類に分類されています。

また、スカラシップとしてドライバー育成プログラムも組み込まれているほか、好成績を収めたドライバーにはWEC(世界耐久選手権)にも参戦する、ポルシェのワークスドライバーのオーディションの参加資格が与えられることもあるのです!

 

参戦費用も莫大、その分マシンは高性能

出典: http://www.porsche.co.jp/

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使用される車種は「カレラ911 GT3 cup」。世界最速と称されるその性能について触れてみましょう。

エンジンを見てみると3.8リッター水平対向6気筒エンジンを搭載し出力は460馬力にも上ります。

富士スピードウェイのラップタイムではフォーミュラであるFIA-F4を上回る速さを誇り、メインストレートでは時速270kmを記録。

これはスーパーGTのGT300クラスと大差ない速度です。

しかし車両価格は2200万円、参戦費用を合わせると3000〜5000万円は必要とも言われており、他のワンメイクレースのなかでも群を抜いて高額です(その他のワンメイクレースのお金の話はこちらをご覧ください。)

お金も技術的にもドライバーにとって過酷なレースではありますが、それがこのシリーズから多くのドライバーが羽ばたいた大きな理由といえるでしょう。

 

好成績を残せばスーパーGTや世界への道が開けるチャンスも

©MOBILITYLAND

2012年のF1日本GP前座レースで勝利した平川亮(中央)©MOBILITYLAND

以前からPCCJでチャンピオンを獲得した選手が、スーパーGTといった国内最高峰のレースへ進出していく姿も見られます。

 

近年ではスカラシップに選ばれたドライバーが王者に輝いており、2012年に平川亮がPCCJ王者を獲得すると翌年からスーパーフォーミュラへ参戦。

今年はスーパーGTに加えヨーロピアン・ルマン・シリーズにも参戦し、活躍の場を世界に広げています。

また2013年から2連覇を達成した小河諒と2015年王者の元嶋佑弥もともにスカラシップを受けタイトルを獲得。今季はスーパー耐久を中心に活躍。

ドライバー目線で見ればスカラシップに選ばれたら、すぐに王座を獲得しステップアップを目指すのがセオリー。

PCCJは参戦費用が高いこともあり、必死に将来を目指す若いドライバーのお尻に火が付くのも納得です。

その分、ワークスへのオーディション資格が得られる可能性もあるので、アピールができれば自ずと次の道が開けるカテゴリーでもあるのです。

 

将来を夢見てポルシェを走らせる若者たち

Photo by Shunsuke Kawai

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若いドライバーは自分の夢に向けてスポンサーなどの協力を得てPCCJで戦っており、先日行われた第8戦富士では2人の若手ドライバーが優勝争いを繰り広げました。

それまで今季7戦5勝と圧倒的な強さを見せる近藤翼(27歳)。今季のスカラシップに選ばれPCCJに参戦する三笠雄一(23歳)。

予選では0.001秒差という大接戦を演じた両者は、決勝レースでもデッドヒートを繰り広げました。

ポールポジションを奪った近藤は好スタートを決め首位を維持。

2番手の三笠はやや出遅れますが、何とか後続を振り切ると、首位奪還に向けて猛追。とてもワンメイクレースに見えないほど後続を引き離しはじめます。

キャリアをかけて戦う意気込みはラップタイムにも表れ、このレースで1分44秒台を記録したのはこの2人だけでした。

必死の追い上げも届かず三笠は2位、近藤が2.5秒差を守り切り今季6勝目。彼らもやがて世界や国内最高峰のレース羽ばたいていくかもしれませんね。

今からその走りに注目し、羽ばたいていく瞬間を目にするのも一つのPCCJの楽しみ方ではないでしょうか。

 

まとめ

Photo by Tomohiro Yoshita

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世界最高峰ワンメイクレース、PCCJをご紹介しました。

お金に余裕のある大人から、夢を追いかける若者まで参戦するPCCJは異種混合戦という言い方もできるでしょう。

もしかするとレースの本来の面影を残している数少ないシリーズといえるかもしれませんね。

今季は残り2戦、ともに鈴鹿サーキットが舞台となり、最終戦はF1日本GPのサポートレースとして開催されます。

もし目にする機会があれば、若きドライバーの戦いに注目してみてはいかがでしょうか。