2016年もGT500に負けず劣らずの大バトルが繰り広げられたGT300。新型FIA-GT3マシンが続々登場し、若手ドライバーが台頭。GT300クラスならではの巧みな戦略と、今年も見どころが多いシーズンだった。今回も全8戦の中から特に印象に残った名勝負、名シーンを振り返って行きたいと思う。
新FIA-GT3が揃って登場、開幕戦はAMG GTが制する
昨今はFIA-GT3車両の活躍が目覚ましいGT300クラス。昨年から今年にかけて各メーカーが続々と新型マシンを発表したことに伴い、主力チームもマシンをスイッチ。
メルセデスAMG GT3、BMW M6GT3 フェラーリ488GT3、アウディR8LMS、ポルシェ911GT3、ランボルギーニ・ウラカンGT3がヨーロッパから持ち込まれた。さらに国内のJAF-GT勢もaprが新型プリウスをベースにしたマシンを開発。7車種が新しく登場するという“変化のシーズン”が始まった。
そんな中で迎えた開幕戦岡山。予選ではVivaC 86 MCが獲得。決勝も序盤からリードしていくが、終始安定感をみせたメルセデスAMG GT3勢が襲いかかっていく。
中盤にLEON CVSTOS AMG-GTがトップに躍り出ると、その直後にはグッドスマイル初音ミクAMGも2番手に浮上。後半は彼らの独壇場となり、メルセデス勢がワンツー・フィニッシュ。黒澤治樹/蒲生尚弥組のLEON AMGがチーム初優勝を勝ち取った。
3番手にはStudie BMW M6が続き、終わってみればトップ5は新型GT3マシンが独占。そのポテンシャルの高さを見せつけ、今シーズンも彼らがチャンピオン争いの主役になるのだろうと誰もが確信していた。
GTアカデミー出身のヤン・マーデンボローが底力を発揮
第2戦の富士GT500km。ここで主役となったのは、今年から同カテゴリーに参戦しているヤン・マーデンボローだった。
彼は日産GTアカデミー出身のドライバー。プレイステーションのゲーム「グランツーリスモ」で好成績を収め、レーシングドライバーへの道を切り開いた。前年までは主にブランパン耐久シリーズなどに参戦していたが、今年は活動の拠点を日本に移しGT300と全日本F3選手権に参戦。そのうち、GTでは早速若き才能を発揮した。
予選5番手からスタートしたB-MAX NDDP GT-Rは、マーデンボローは第1・3スティントを担当。一番のライバルとなったARTA BMW M6は燃費面に課題がありピットストップで長い給油時間を強いられてしまう。その間にトップを奪い、終盤まで安定してトップを死守。彼にとって参戦2戦目で早くもトップチェッカー。パートナーの星野一樹とともに喜びを分かち合った。
このあとは、不運もあって上位進出が果たせなかったが、ここ一番でみせる速さはピカイチ。早くも来シーズンはGT500へステップアップするのではないかと言われている。
後述でも紹介するが、今年はGT300でも若手ドライバーが活躍し、世代交代の波が確実に起き始めたシーズンだった。
シーズン序盤は新型マシンを中心としたFIA-GT3勢が先行。しかし、「打倒ワークス」「打倒GT3」を掲げるJAF-GT、マザーシャシー勢も後半戦で巻き返しを見せる!