トヨタの活躍で注目が集まっている2017年の世界ラリー選手権(WRC)。その第3戦メキシコラウンドが3月9日から12日にかけ行われましたが、TOYOTA GAZOO Racingはトップから4分30秒以上遅れた6・7位に終わってしまいました。前回スウェーデンでの快進撃から一転し、大苦戦。いったい彼らに何が起こったのでしょうか?詳しく振り返っていきたいと思います。

©︎TOYOTA

 

開幕2戦とは大きく違うコンディションが原因

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開幕戦のモンテカルロではヤリ=マティ・ラトバラが2位に入り、続く第2戦スウェーデンでもラトバラが積極的に攻めていく走りをみせ優勝。この時点でのランキングはトップ!第3戦以降も活躍が期待されました。

しかし今回の舞台となったメキシコは、これまでの2戦とは異なり気温30度前後に達する真夏のようなコンディション。さらに海抜1800〜2737mと標高の高い場所での戦いとなります。

これが、トヨタ勢を苦しめる要因になったのです。

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メキシコシティで行われた市街地ステージのSS1では、天候も味方につけユホ・ハンニネンがトップに浮上します。しかし、2日目に入るとラトバラと共に一気にペースダウン。特に走行距離が30kmを超えるロングステージではトップから1分以上も引き離されてしまったのです。

2台のトヨタ・ヤリスWRCを苦しめていたのはエンジンのオーバーヒート(異常な温度上昇)でした。

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長時間の全開走行を続けると、エンジンに致命的なトラブルを抱えてしまう可能性があった為、2人のドライバーは止むを得ず、リエゾン(ステージ間の移動)で使用する「ロードセクション・モード」という、通常よりもパワーを絞ったモードに切り替えて、ゴールを目指しました。

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2日目を終えたラトバラは…

デイ2は、タフな1日になるだろうとあらかじめ覚悟していましたが、こんなにタフになるとは!というのが正直な感想です。

走行距離が長いエル・ショコラテ(SS4)では、どうしてもエンジンの温度が上昇しやすいのですが、今日も走行中に温度が上がってしまったため、ロードセクション・モードに切り替えて温度が下がるのを待ち、その後ステージ・モードに戻すという操作を繰り返しました。

また、他の距離が短いSSでも多少温度が上がる傾向が見られました。このようにいくつか問題は起こりましたが、大切なのは1日を走りきりサービスパークに戻ってきたということです。明日が、今日よりも良い1日となることを期待しています。
(TOYOTA GAZOO Racingプレスリリースより)

結局、2日目を終えてハンニネンは1分27秒遅れの4番手、ラトバラは2分30秒遅れの8番手となってしまいました。

 

ラリー前から苦戦は予想されていた?

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3日目以降も、同じトラブルで苦戦を強いられていたトヨタ勢。実は、今回の苦戦はチームの中では事前に予想されていたことで、この結果も覚悟の上だったようでした。

チーム代表のトミ・マキネン氏はレース前に、このように語っていました。

我々がこれまでに実施してきたテストは大部分がグラベルのコースだったので、メキシコに向けてはそれなりに自信を持っています。

しかし、ひとつだけ読めないのは、高い気温と高い標高の組み合わせがどのように影響するかということです。

昨年、我々はスペインのグラベルコースで気温が40度に達するような状況でテストを行ないました。

また、エンジニアは高地でのエンジンマッピングについて開発作業を続けてきました。しかし、実際にこのふたつの要素が一緒になった時にどうなるのかは、分かりません。

前戦ラリー・スウェーデンでは優勝という、信じられないような結果を得ることができましたが、地に足を着け、より一層成長できるよう本戦もハードに仕事をしたいと思います。現在、WRCは全マニュファクチャラーの力が拮抗しており、最速タイムを競い合っています。これは、このスポーツにとって素晴らしい事だと思います。
(TOYOTA GAZOO Racingプレスリリースより)

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万全の体制を組んみ、1年をかけてマシンを開発してきたとは言っても、ライバルと比べて圧倒的に劣っているのが「実戦での経験」でした。

その経験の差が今回は顕著に出てしまう結果となったのです。

予想通り、苦しいラリーとなってしまったトヨタ勢。それでも、このまま終わる彼らではありませんでした。後半戦で、1秒でも取り戻すべくメキシコでの戦いを開始します。