18年ぶりにWRC(世界ラリー選手権)に復帰を果たしたトヨタ。早くも優勝のチャンスが巡ってきた。2月9日から始まっている第2戦ラリー・スウェーデンのDay3を終えた時点でヤリ・マティ・ラトバラが総合トップに浮上しているのだ。あとは3ステージ計80kmを残すのみ、新体制2戦目で勝利を手にすることができるのか?最終日で彼らが抱えている最大の課題は?注目の見どころを解説していく。
ライバルと互角に渡り合える実力を見せた3日間
第2戦の舞台はスウェーデン。シーズン屈指のスノーセクションのステージが待ち構えていた。開幕戦モンテカルロで2位に入り、注目が集まっているトヨタのヤリスWRC。
シーズンオフはもちろん、今週末を迎えるまでにも走行テストを重ね、戦闘力を整えてきたのだが、その実力が早速現れることになった
スーパーSSで行われたSS1で、ラトバラがトップタイムを記録。わずか1.9kmと短いステージだったが、2位以下に0.6秒以上の差をつけ、復帰後では初となるステージウィナーを手にした。
Day2に入っても勢いは衰えず、SS2~3では順位を落としたものの、SS4で再びトップタイムを記録し総合トップ。そこからティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)とタイムの出し合いとなり、この日は総合2番手。
開幕戦で安定した強さをみせた王者セバスチャン・オジェ(M-SPORT)に対して30秒近い差をつけていたのだ。
Day3も確実かつ攻める走りを披露。SS13でトップタイムをマークし2番手を死守した。
すると、ここまで完璧なラリーをみせていたヌービルがSS15(スーパーSS)で左フロントタイヤをコース脇の壁にヒットさせてしまい、ステアリング系統が損傷。そのままデイ・リタイアとなり、優勝争いからの脱落が決定してしまった。
これによりラトバラがトップに浮上。ヌービルが圧倒的有利と思われていただけに、大きなチャンスが巡ってきたことになる。
モンテカルロでは確実に走ることに徹し、ペース的にもM-SPORT(フォード)、ヒュンダイ勢から遅れを取っているように見えたが、今週末は3つのステージでトップタイムを記録。総合トップに立ってもおかしくないパフォーマンスをみせている。
攻めるか?守るか?トヨタに求められる最終日の作戦とは
今季初優勝に期待がかかっているのだが、決して楽観視できる状態ではないのだ。
改めてDay3を終えた段階での順位は以下のとおり。
1位ヤリ・マティ・ラトバラ(トヨタ)
2位オット・タナク(M-SPORT) +3.8秒
3位セバスチャン・オジェ(M-SPORT)+16.6秒
Day2までは遅れをとっていたM-SPORT勢がDay3で勢いを取り戻し始めたのだ。特にタナクが抜群の速さをみせており、SS8(Day2最終)から4連続でステージトップ。同じようにオジェステージ2番手に食い込む速さをみせ、数秒ずつラトバラを追い詰めている。
一方のラトバラはDay3の流れは決して良いとは言えない状況。タイヤの磨耗にも苦しめられ、午前中(SS9~11)ではスペアタイヤを2本積んで走行。ライバルは1本のみしか積んでいなかったため、そこでタイムを稼ぐことができなかった。
特にSS14ではタナクよりも6秒遅いタイムとなり、1日前には20秒以上あった差が4秒を切る結果となった。
このまま行けばタナクが逆転する可能性は高い。それを防ぐには、ペースアップを仕掛け、3.8秒のリードを守らなければならない。
ただ、ワンミスが命取りとなるWRCで、無理にペースを上げるとクラッシュやコースオフ、スタックしてしまうリスクが増えてしまう。
今回は特に上位陣のタイム差が接近しているため、何かあれば優勝どころか表彰台圏内から脱落してしまう可能性もあるのだ。
しかし、今週末は、ミスなく確実に走ってきたことで、最終的にこのポジションにきたことも事実。
彼らはこれからシリーズチャンピオンを本格的に狙っていくためには、まだまだ実戦データが必要だということも十分承知している。
先日、都内で行われたプレスカンファレンスで豊田章男社長は「13戦目が一番強いクルマになっていることを期待している」とコメント。モンテカルロの時も一喜一憂するスタッフに対し一貫して「完走」というメッセージを送り続けていた。
現在の順位を考えると、このまま彼らのペースを維持しノーミスで走りきれば、タナクには逆転されても、表彰台圏内は確実だろう。
そして彼らが今求めている実戦データも得られ、今後のマシン熟成にも役立てられる。
目の前にある大きなチャンスにこだわり攻めていくのか、先々を見据えて自分たちのラリーに徹するか、トヨタにとっては正念場の1日となりそうだ。
まとめ
注目の最終日「Day4」は日本時間の15時55分からスタート。21時ごろには優勝者が決定することになる。
もしトヨタが勝てば、日本車がWRCで優勝を飾るのは2005年のペター・ソルベルグ(スバル)以来12年ぶりの快挙となる。その栄冠を今日手にできるか?大一番がいよいよ始まる。
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