モータースポーツの春到来!全日本ジムカーナも2017シーズンは既に第2戦ですが、今年から規則変更でクラス区分が大きく変わります。それによる勢力図の大きな変化が注目されている今シーズン。今回はその新しいクラス区分と、代表的な参戦車両をご紹介したいと思います。
改造制限の厳しいPN車両
ジムカーナではこのPN車両のさらに下、安全装備を除けばほぼノーマルという「P車両」もありますが、それより規制は緩く車高調などはOK、ただし競技用タイヤ(いわゆる「Sタイヤ」)は禁止なのが、このPN車両です。
改造範囲が制限されているため競技車を仕立てる費用は安いものの、古い車両での参戦が許されません(2017年の規則では同一車両のFIA / JAF公認またはJAF登録年が2006年1月1日以降)。
そのため最新車両もいち早く登場するクラスとなっているのです。
NDロードスターの躍進目覚しいPN1クラス
排気量1,600cc以下で2WD(ただしFFまたはFR)のPN車両。
この規則自体が、PN車両が制定された当時デビューしたばかりのスズキZC31Sスイフトスポーツ(2代目)に配慮されたことでも知られるPNクラス。
そのためごく初期を除けばほとんどZC31Sおよび後継のZC32S(3代目)スイフトスポーツのワンメイククラスとなっており、そこに初期はホンダGE8(2代目)フィットRSやマツダDE(3代目)デミオ15C、最近ではホンダGK5(3代目)フィットRSが絡む程度となっていました。
しかしNDロードスターが登場したことで2016年から勢力図が変わり始め、2017年の開幕戦では22台中11台と半数がNDになっています。
残り11台のうち1台がフィットなので、スイフトスポーツは何と過半数割れ。
次期スイフトスポーツは1.4リッターターボと言われていますので、今後のPN1クラスはこのままNDロードスターが主力になっていきそうです。
FK2シビックRとアバルト124スパイダーが今後の主流を狙うPN2クラス
排気量1,600ccを超える2WD(ただしFFまたはFR)のPN車両。
かつてはホンダFD2シビックRとZ34フェアレディZがしのぎを削ったPN2クラスですが、今やZ34は激減し、FD2が大半を占めています。
注目なのは、まだ参戦が始まったばかりの310馬力のハイパワーターボ、ホンダFK2シビックRで、一時はニュルブルクリンクサーキット北コースでFF世界最速を誇った実力を、ジムカーナでも発揮できるかどうかという事。
そしてベテラン山野 哲也選手の駆るアバルト124スパイダーの実力は発揮されるのでしょうか?
「もう86 / BRZクラスとは言わせない!」NDロードスターRF増加中のPN3クラス
排気量1,600ccを超える2WD(ただしFFまたはFR)のPN車両のうち、FIA / JAF公認年またはJAF登録年が2012年1月1日以降のPN車両。
この「2012年」というのがトヨタ 86 / スバルBRZがJAF登録車両になった年で、実質的に86 / BRZクラスとなりました。
そのため本当にほとんど86 / BRZばかりの参戦となっていましたが、最近では2リッターNAエンジンを積むNDロードスターRFも何台か参戦が見られます。
2016年まで1.6リッターターボのプジョー208GTiを駆っていた天満 清選手までロードスターRFに乗り換えているので、これで優勝できる実力が証明されると勢力図がまたガラリと変わるかもしれません。
なお、PN1のロードスター、PN2のアバルト124スパイダーと合わせ、これでNDロードスター系は日本で販売されている全車がジムカーナにそろい踏みです。
今後VABに次第に置き換わるか?PN4クラス
PN1~3に該当しないPN車両。
つまり三菱 ランサーエボリューションXとスバルの新旧WRX(GVB / VAB)で戦われるクラスです。
これまでエボXが圧倒的多数参戦するクラスでしたが、生産終了とスバルがVABを継続していることで今後VABが増えるのかもしれません。
なお、ここまでのPNクラスで「あれ?MR(ミッドシップ後輪駆動)は?」と思った方もいるでしょうが、FFでもFRでも無いMR車、実はPN車両ですとPN4クラスにしか参戦不可となっているのです。
「昔のジムカーナ」の名残を残すSA車両
使えるタイヤのサイズに制限がある以外は、公道を走れる範囲でかなりの改造が許されていたA車両、その後継と言えるのがSA車両です。
2016年まではSA車両とPN車両の中間的な改造範囲の「N車両」がありましたが全日本選手権では廃止され、各選手はPN車両に乗り換えるかSA車両に編入するかを選択する事になりました。
なお、SA車両にはPN車両のような「FIA / JAF公認またはJAF登録」を得ている必要は無く、参戦可能車両の幅がかなり広いので、新旧さまざまな車が参戦しています。
集え1990年代テンロクスポーツファン!SA1クラス
SA1クラスは、排気量1,600cc以下で前輪駆動のSA車両が該当するクラスです。
2016年までは「1,600cc以下で2輪駆動」でしたが、SA2クラスの項で説明する事情により規則がちょっと変わっているものの、参戦してくる車は同じです。
昔懐かしい顔ぶれが並んでおり、ホンダEK9シビックRに同EF8 CR-Xとは、2002年以前の旧A2クラスとほとんど変わりません。
かつてはSA1クラスにマツダ RX-8もいたのですが(NAの13Bロータリーなので出場できる)、今やすっかりホンダのテンロク(1600ccエンジン)だらけとなっています。
会場によっては三菱 CJ4A ミラージュRSが出てくることもあるかもしれません。
いずれにせよ1990年代テンロクスポーツに勝るハイパワーNAや、ダイハツ ブーンX4や日産 マーチRのような941cc未満の快速FFターボ車が今後市販されるとも考えにくいため、今後もこのクラスの車両は規則が変わらない限り不変でしょう。
「DC2さえあれば何もいらない」SA2クラス
排気量1,600ccを超える前輪駆動のSA車両。
このクラスはホンダDC2インテグラのほぼワンメイクになっていますが、他のクラスと若干事情が違うのは、ほとんどが2016年までN1クラスに参戦していた車両&ドライバーということです。
クラス再編を機に「1,600ccを超える2輪駆動」だった旧SA2クラスを前輪駆動と後輪駆動に分けた結果、「N車両のDC2」と「SA車両のDC2」が走るクラスになっています。
今はまだN車両のままですが、SA車両にバージョンアップすることで順位を上げてくるドライバーもいるかもしれません。
高級車やロータリーターボが飛ぶように走るSA3クラス
後輪駆動のSA車両で、2016年までの旧N2クラス(後輪駆動のN車両)と旧SA2クラスの後輪駆動車によるクラスです。
参戦車両はホンダNA1 / NA2 NSX、マツダ FD3S RX-7、ロータス エキシージSがメインで、トヨタ SW20 MR2もまだ出てきます。
メイン3車種ではどれが一番多い…とはちょっと言えないほどバラけていますが、そこにベテラン久保 真吾選手、2016年のNSXから乗り換えたエキシージの型式が「不明(1117)」と書いてあります。
どうやら3.5リッターV6のトヨタ2GR-FEにスーパーチャージャーを組み、350馬力を発揮するエキシージS V6を投入したようです。
馬力・トルクともにおそらくクラス随一かと思いますが、今後が楽しみですね。
改造範囲の広い4WDターボこそキングオブジムカーナ!SA4クラス
4WDのSA車両で、数年前から旧N3(4WDのN車両)、旧SA3(4WDのSA車両)ともにかなり参加車両減少が懸念されていました。
今回のクラス統合で参加台数が増えるかと思いきや、厳しい状況が続いているようです。
参戦車両のメインは三菱のエボXで、以下エボIXとGDBもいます。
見た目と中身は大違い!なSC車両
フォーミュラカーも参戦可能だった「D車両」が全日本選手権で廃止されて以降、唯一のナンバー無し車両で参戦可能なのがSC車両。
もっとも改造範囲が広くエンジンの換装も同一メーカーのFIA / JAF公認車両またはJAF登録車両であればOK(ただし最低重量の規則があるため、軽い車体にハイパワーエンジンは意味が無いことも)。
走りたい気持ちはクラスレス!SCクラス
1クラスのみなので、全てのSC車両が参戦可能。
参戦車両は非常に多彩で、比較的新しいのはスバルGJ3インプレッサG4の2台で、一番古いのは「箱D選手権」でお馴染み山梨 俊二選手のトヨタAE86レビン。
町田 和雄選手が長年ひたすら乗り続けるホンダ GA2シティやEG6シビックもこのクラスではまだ健在で、ほかにはEF8 CR-X、EK9シビックR、エボIX、GH3インプレッサ、変わったところでは三菱Z27AGコルトRもいます。
ただ、このクラスは改造範囲がかなり自由なので、中身は別物という車が多いことに注意です。
まとめ
本当は他に「EVまたはハイブリッドカー」のAEクラスもあるのですが、どうも参加者がいないようで2016年は一度もクラス成立していません。
逆に盛り上がっているのは新しい車両が多いPN1~4クラスで、NDロードスター系は特に各クラスで新しい台風の目になりそうですね。
ジムカーナでは「このクラスでは明らかにあの車が一番速い!」とわかった瞬間、全ての選手が一斉に乗り換えてワンメイク化していく傾向があります。
PN1クラスでは既にその傾向が出ていますし、PN2、PN3クラスも今後の注目はアバルト124スパイダーやロードスターRFがどの程度の成績を残せるか、それが見どころですね。
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