ヤマハSR400といえば、バイクに乗る人なら「いつか乗ってみたい」と思う人も多いのではないでしょうか。1978年の誕生からほとんど変わらない姿で愛され続ける稀有なバイク、SR。ノスタルジックなスタイルとシングルエンジン、そしてキックスターターを持つこのバイクが、39年の歴史の中でどう「変わって」きたのか、SRの歩みと魅力をご紹介しましょう。
1978年にオフロードバイクをべースに造られた
発売から30年以上経った2017年現在でも、シンプルな外観と空冷単気筒が奏でるエンジンの鼓動感あふれる走りで乗る者を魅了し、見る者があこがれるバイク、それがヤマハSR400です。
そんなSRが誕生したのは1978年。
XT500という、1976年発売の4ストロークエンジンを搭載するオフロードバイクをベースにして造られました。
SRは開発当初から長く愛されるモデルを目指し、オーソドックスなスタイルを目標にしたといいます。
基本的にはXT500のものをそのまま使ったというシングルエンジンも、軽量化とコンパクトさにこだわって造られています。
また、SRの大きな特徴といえば、セルスターターを備えず、始動がキックスターターのみであること。
当時のセルモーターがあまりに大きくて重かったことが、キックスターターのみを備えることになった要因で、これが40年近く経った2017年でもSRの大きな個性となっています。
ノスタルジックなスタイルに単気筒エンジン、ゆっくり走っても似合う、そしてドレスアップを楽しめる、という理由から、幅広い年齢層から支持を集めているのです。
そんなSRは、発売当初の姿のまま、30年以上にわたって愛され続けているバイクなのです。
不変であり続けるということ
そのスタイル、単気筒エンジン、キックスターターと、変わらずに時を重ねてきたように見えるSRですが、もちろん騒音問題や排ガス規制など様々な理由により、1978年の発売当初から変更されたところもあります。
例えば足回り。
1979年に発売されたモデルでは、キャストホイール、そしてディスクブレーキが採用されました。
これはその後のモデルチェンジで再びスポークホイール、ドラムブレーキに戻ることになるのですが、2001年モデルではスポークホイールはそのままに、フロントにディスクブレーキが復活しています。
また、2003年モデルでは盗難防止用のイモビライザーを標準装備し、2010年モデルには、現在のバイクでは着いていることが当たり前となったフューエルインジェクション(FI)が装備されました。
少しずつ変わりながらも、ずっとSRであり続ける。
それが、SRのSRたるゆえんなのです。
FIの採用とキックスターターへのこだわり
30年以上の年月を重ねる中で少しずつ変化を遂げてきたSRですが、その中でも最も大きな変更は、FIと排気触媒の採用でした。
それまでキャブレターを採用していたSRですが、環境性能が求められる中、ついにFIの装着に踏み切ったのです。
FIを採用するためには様々なパーツを装着することが必要なのですが、SRはスリムなスタイルを持つため、開発陣は収める場所に大変苦労したそうです。
FI化により滑らかになりすぎたエンジンのフィーリングは、SRならではの「トコトコ感」を出すために造り込まれ、低回転域での鼓動感が実現されました。
このように多くの労力を費やし装着されたFIですが、SRの始動方式はこれまでと変わらずキックペダルのみとされました。
なぜなら、キックスターターのみのエンジン始動、これがSRの個性だからです。
そんなキックべダルによるエンジンの始動についてはFIでもキャブレター車両のSRと変わらないように試行錯誤され、キャブレターと同様の始動性が実現されました。
以前のSRはエンジン始動のためのいくつかの“コツ”がありましたが、FIを備えたSRはそれを必要とすることなく、スムーズなエンジン始動を可能にしたのです。
シンプル。それこそがSR最大の魅力なのかもしれません。
次のページでは、SR400の性能面を中心に、魅力を探していきます。