「頑張っている若者をピックアップして、クルマ業界を盛り上げたい。」をモットーにしているMotoz編集部は、去る2018年6月3日、埼玉県本庄市にある『本庄サーキット』にて開催された2018年オートバックス全日本カート選手権に取材へ行って来ました。現場にはジュニアカテゴリーの小学生レーサーからカート乗り日本一を決める現役のプロドライバーまでが集結!我々としては初めてのレーシングカート取材だったのですが、そこにはカートならではの魅力や発見がありました。今回は、そんな現場で拾ったリアルなカートレースの世界をレポートします!レーシングカート、めちゃくちゃ面白いです!!
“ストップ&ゴー”ではない本庄サーキット
埼玉県本庄市にある本庄サーキットは、4輪・2輪問わず多くのスポーツ走行や走行会を開催しており、2005年のオープン以来首都圏からはもちろん、近県の群馬や長野からも多くのサーキットユーザーが集まる人気のコースとなっています。
筆者自身も本庄サーキットは4輪(スイフトスポーツ)での走行経験があり、ハードなブレーキングが必要とされるストップ&ゴーなレイアウトと最終コーナー手前のS字縁石の怖さを知る一人でもあります。
そんな本庄サーキットで全日本カート選手権が開催されるのは、実は2017年からで、今年でなんと2回目!
コースレイアウトは最終コーナーをショートカットする、4輪のドリフトレイアウトと共通となります。
4輪や2輪で本庄サーキットを走っている方には”ストップ&ゴー”の印象が強いコースだと思いますが、車体そのもののスケールが小さいカートでは”高速サーキット”に様変わりします。
コース幅が他のカートコースに比べて非常に広いのでラインの自由度が高く、さらにはストレートも長いためスリップストリームが効きやすいことが特徴で、コースの至る所でオーバーテイクが繰り広げられます。
2輪カテゴリーの様な空間
まず、会場に足を踏み入れると、目の前にはビビットなカラーリングで彩られたテントスペースやレーシングカートの数々が広がります。
そして、常にスタンドに置かれているマシンなど、狭い空間に多くのエントラントとマシンが密集する景色は、どちらかというと2輪カテゴリーに似ていると感じました。
走行前には暖機運転が空きスペースで行われ、2ストロークエンジンならではのガソリンとオイルが燃える匂いがより一層雰囲気を惹き立てます。
使用するマシンスケールがハコ車と違って小さく、スポンサーロゴなども全て圧縮されたように見えるなど、目に入ってくる情報量が多いことが、より2輪と似た雰囲気を感じさせるのかもしれません。
そんな中、いわゆる”チビッコ”達や若いドライバーがレーシングスーツを身にまとい堂々と歩く姿や、大人達が眉をひそめながらマシンのメンテナンスを行っています。
時にはピット作業でドライバーがタイヤ交換作業の補助を行ったりと、そこにはレーシングカートというカテゴリーならではの時間が流れていました。
小学生レーサーからGT500ドライバーまで
ジュニア選手権シリーズから始まるレーシングカートのカテゴリーは10歳から参戦可能で、全日本選手権やSLカートミーティングでは30代や40代のジェントルマンドライバーも参戦していたりと老若男女問わず幅広くエントリーされています。
その中でも2018年現在、国内トップカテゴリーとされているのはOK部門と呼ばれるクラスとなっており、こちらは国際カート委員会(CIK-FIA)のカテゴリーに沿った国際ルールで争われる選手権です。
“カートのF1″とも言われるこのクラスには日本一を目指す若手ドライバーが集まり、SUPER GTのGT500クラスで戦う日産の若きエース 佐々木大樹選手や、2017年のスーパーFJ日本一決定戦の勝者 名取鉄平選手など若手実力派ドライバーが揃い踏み。
また、部門は違えど、同じ空間で小学生ドライバーからGTドライバーまでの幅広いレベルの選手が顔を並べ、表彰台のてっぺんを争うのは全日本カート選手権ならではの光景です。
年端もいかぬ幼いレーサーたちが国内トップカテゴリーを戦う選手たちの”本気の”走りを、間近で見られる環境は日本国内を探してみても、きっとここにしかないでしょう。
見どころとなると人それぞれ楽しみ方があると思いますが、筆者の主観で感じた見どころとしては、”まるで格闘技を見ているような生々しさ”が挙げられます。
箱車のレースと違い、カートは2輪のようにコースサイドから人間の動作が把握しやすく、ステアリングを切ったり後方確認で後ろを向いたり、スタート不成立で手を挙げたり、空気抵抗を減らすために身を屈めたりとコースサイドでドライバーの動きがはっきりと確認できるのです。
勝てばガッツポーズし、負ければその悔しさからステアリングを叩いたり、その程度はフォーミュラカーレースでもドライバーの動作はコースサイドから見ることができますが、やはりマシンに対して人間の占める割合が大きいので、”マシン vs マシン” というよりは “人 vs 人” のバトルという感覚なのです。
またカートと言えば、上の写真のような接近したバトルが見どころですが、実は”接近したバトルを安全にさせているパーツ”があることを今回の取材で知ることができました。
それは、レーシングカート特有のパーツで『フロントフェアリング』と呼ばれるものです。
各レースの終了後に必ず重量計測(最低重量確認)を行うと同時に、最高峰のOK部門とFS125では『フロントフェアリング検査』が行われます。
フロントフェアリングとは言い換えるとフロントカウル(フロントバンパー)に当たるパーツで、それを繋いでいる黒い樹脂パーツの緩衝装置に衝撃が加わると変形したり、押されるとシャシー側にスライドする構造になっていて、この黒い樹脂パーツがレース終了後の検査で変形していると判断された場合、レース結果に10秒加算という重いペナルティが課せられる事に。
つまり、ブレーキングなどで前走のマシンを後ろからプッシュしたりすると、当然この緩衝装置が変形し、レース後に「このドライバーは前走のマシンにぶつかった。」と判断されるわけです。
また、フェアリングの取り付け自体も、ドライバーやメカニックが車検員監視下の元「レース前に正しい位置に取り付けをする。」という規定があり、不正や言い訳のしようが無いので、フェアリングが変形している、位置が変わっているということは紛れもなく『ぶつかった証拠』となります。
そんな絶対にぶつけてはいけない環境下で、まさしく”拳一個分”ほどの車間距離を維持してレースが繰り広げられ、時には最高時速130km/hを超える速度で若い10代のレーサー達が我先に、としのぎを削りあっています。
自分よりもひと回りもふた周りも若い子供たちが真剣に切磋琢磨しあうその姿は、思わず息を呑んでしまうほどでした。
ここから勝ち抜いた一握りのレーシングドライバー達がSUPER GTのGT500クラスやSUPER FORMULAを走るドライバーへと巣立っていきます。
彼らはこういったレーシングカートの経験があるからこそ、白熱したレースを魅せることができるのだと痛感しました。
そして何よりも驚いたのがレーシングカートの速度域です。
最終コーナーをショートカットしたレイアウトの本庄サーキットとはいえ、36秒前半のラップタイムを刻み続ける速さは、4輪で同サーキットの走行経験がある筆者にとって驚異の数字でした。
(ちなみに4輪のコースレコードは BCNR33型スカイラインGT-Rが叩き出した 39秒570 です。)
まとめ
面白い、面白くないで言えば「超面白い!」と感じた全日本カート選手権。
今回の取材を通じて、より一層現役のレーシングドライバーの実力の片鱗を垣間見るとともに、その地位に登り詰める為の努力を肌で感じることができました。
4輪コースとしては”低速域のミニサーキット”ですが、カートコースとしては”高速サーキット”となる本庄サーキットならではのバトルが随所で繰り広げられ、手に汗握るシーンが多々あり、僅差で勝敗が決するなど最後まで気が抜けない展開がどの部門でも繰り広げられていました。
6月17日には静岡県のオートパラダイス御殿場で全日本FS-125を筆頭とした西地域、7月1日には千葉県の茂原ツインサーキット東コースで全日本OK部門を筆頭とした東地域と、都心から観戦に行きやすいコースで全日本選手権が開催されます。
是非一度足を運んでいただき、この臨場感と迫力を体感してみて下さいね!
2018年シーズン残りの日程
6/17 オートパラダイス御殿場(静岡県):全日本FS-125/地方/ジュニア 西地域第3戦
7/1 茂原ツインサーキット東コース(千葉県):全日本OK第5戦・第6戦/全日本FS-125/地方/ジュニア 東地域第3戦
7/15 フェスティカサーキット瑞浪(岐阜県):全日本FS-125/地方/ジュニア 西地域第4戦
8/5 カートソレイユ最上川(山形県):全日本FS-125/地方/ジュニア 東地域第4戦
8/26 神戸スポーツサーキット(兵庫県):全日本FS-125/地方/ジュニア 西地域第5戦
9/9 スポーツランドSUGO西コース(宮城県):全日本OK第7戦・第8戦/全日本FS-125/地方/ジュニア 東地域第5戦
11/18 鈴鹿サーキット国際南コース(三重県):全日本OK第9戦・第10戦/全日本FS-125/ジュニア 東西統一戦
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