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史上最多の全21戦で争われる2016年のF1世界選手権。7月10日に決勝が行われたイギリスGPで早くもシリーズの半分にあたる10戦を終了した。シーズン序盤はニコ・ロズベルグ(メルセデス)が開幕4連勝を飾り、僚友ルイス・ハミルトンに対し43ポイントリード。今年はロズベルグの年かと思われたが、5月に入ってから現王者も反撃を開始。ついに今回のレースで両者の差は1ポイントとなった。今回はハミルトン有利の流れに変わっていた中盤戦と、11レース残っている今季後半戦の展望についてご紹介する。

明暗分かれた2016シーズン序盤4戦

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2016年のF1はニコ・ロズベルグの勝利からスタート。

すでに昨年終盤から勝利を重ねており、今年こそ初のワールドチャンピオンを勝ち取るべく、最大のライバルであるチームメイトを先行するレースをみせていく。

一方、ハミルトンは開幕2戦連続でポールポジションを獲得するも不運なトラブルが連発。第3戦中国、第4戦ロシアではパワーユニットのトラブルで予選を満足にアタックできず後方グリッドに沈んでしまう。

これが、決勝にも響き満足にポイントを稼ぐことができなかった。逆にロズベルグは一番意識しなければいけないライバルがいないため、あっという間に独走。

その結果、開幕4連勝という快進撃につながった。

全てのきっかけはスペインGPの同士討ち

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5月に入りF1は各チームの拠点があるヨーロッパを転戦する「ヨーロッパラウンド」に突入。明らかにロズベルグ有利なムードが漂っている中、中盤戦の流れを変える出来事が発生した。

土曜の公式予選、久しぶりノートラブルで乗り切ったハミルトンがポールポジションを獲得。強敵ロズベルグに0.280秒差をつける見事なアタックだった。

今思えば、これが全ての始まりだったのかもしれない。

ここまでは敵なしで独走という流れが強かったロズベルグだが、久しぶりのガチンコ勝負で惜敗。これが彼に見えないプレッシャーを与えたようだ。

スタートでは好ダッシュを決めて1コーナーをトップで通過するも、3コーナーで彼を気にしすぎた余り強引なブロックをしてしまう。

これにハミルトンもアクセルを緩めず応戦した結果、2台が接触。まさかの同士討ちで2人とも今季初のリタイアを喫した。

審議の結果、レースアクシデントという扱いになったが、ロズベルグがハミルトンをかなり意識して余裕がなくなっていたように筆者は感じた。

そして、ここから不思議なくらいにロズベルグがポイントを取りこぼしていくようになる。

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続く第6戦モナコGPでは、天候変化の中でうまく戦略を対応できず7位。第7戦カナダGPでも1コーナーで再びハミルトンを意識すぎてコースオフ。

これで上位から脱落すると、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)をなかなか攻略できず最終ラップにはスピンを喫してしまい5位。第9戦オーストリアGPではトップ快走中も背後から追い抜きを試みたハミルトンを強引にブロックし接触・フロントウイングを破損し4位となってしまった。

なお、いずれのレースもハミルトンが勝利し、当初43ポイントあった貯金がみるみるうちになくなっていった。

ついに43ポイント差が“1ポイント差”に

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そして、第10戦イギリスGP。

ハミルトンは、予選Q3で一時タイム抹消という不運に見舞われながらもライバルを圧倒しポールポジションを獲得。

ウエットからドライに変わる難しいレースとなったが、後続を寄せ付けない力強い走りを見せた。

これに対し、ロズベルグはフェルスタッペンと終始バトルをすることに。38周目に2位を奪還するが、チェッカーまで目前というところでギアボックストラブルが発生。

チームと対策のやり取りを行うが、これが無線交信で禁止されている「ドライビング方法を伝える」行為に該当してしまい、10秒加算ペナルティ。本来は2位でチェッカーを受けたが、正式結果は3位となった。

これで、今季5勝目を挙げたハミルトンがトータル167ポイント。当初は“大差”と言われていた43ポイント差を実質5レースで帳消しにした。

流れを取り戻したハミルトン、後半戦唯一の不安材料は…

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気になるのは、残り11レースのチャンピオン争い。この流れでいけば間違いなくハミルトンが逆転しポイントランキングをリードしていくことになるだろう。

しかし後半戦を戦う上で大きな不安材料がある。

それが「パワーユニット」だ。

実は序盤戦の度重なるパワーユニットトラブルで、ターボチャージャーやエネルギー回生システム(MGU-H)など、一部のコンポーネントが年間使用上限数の5基に達している。

もし新品のものを使用するとグリッド降格ペナルティを受けることになってしまうのだ。

もちろん、既に使用したものを使い回すことも可能だが、まだ11レースも残っていることを考えると、それでしのぎ切るのは難しい。

また、ここまでの傾向を考えると最大のライバルがグリッド後方に沈めば、ほとんどの確率でロズベルグがそのレースを制している。

つまり、直接対決という状況になれば、ハミルトンにアドバンテージがあるのは間違いないが、グリッド降格等により、その状況が作れなかった時はロズベルグに流れが傾いていってしまう可能性も十分にある。

また、ガチンコ勝負では弱さをみせてしまっているロズベルグが、その辺を克服してハミルトンが来てもしっかり立ち向かえるようになれば、再び流れは彼に向くことにもなるだろう。

残り11レース。一瞬たりとも目が離せない頂上決戦が繰り広げられそうだ。

まとめ

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かつて、アイルトン・セナvsアラン・プロスト、ミハエル・シューマッハvsミカ・ハッキネン、セバスチャン・ベッテルvsフェルナンド・アロンソなど、チャンピオンをかけた数々の名勝負が繰り広げられてきたF1。ここ数年はハミルトンvsロズベルグの構図だが、今年は例年になく目が離せないライバル対決になっていきそうだ。