島の道路をまるまる閉鎖して、アクセル全開で争われる2輪のモータースポーツ「マン島TTレース」。公道を使用しているにも関わらず、近年は300km/hオーバーでエスケープゾーンほぼ無しのコースを駆け抜けます。今回は、世界中のバイクメーカーが集まって争うこのレースに挑戦していた国産の名車たちを4台ご紹介します。

©鈴鹿サーキット

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時代は1950年代後半から60年代前半。世界に戦いを挑んだ国産マシンたちです。

マン島TTレースとは

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/

センターラインがあるような、普通の道路で争われます(出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/)

1907年に、イギリスのマン島で始まったモータースポーツ「マン島TTレース」。

マン島の公道を閉鎖し、エスケープゾーン無しの道路を全開で駆け抜けるこのレースは、世界最大のロードレースイベントとして、世界中のライダーやチームが挑戦しています。

瞬間最高速で言えば、300km/hを超えるほど。

超高速で視野がどんどん迫ってくるなか、荒れた路面とブラインドコーナーを本気で攻めれたライダーだけが、勝利を手にすることができます。

走行風景は公式動画から確認できます。一見の価値アリです。

 

 

マン島TTの歴史

©鈴鹿サーキット

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元々は自動車のみのレースで、1904年にゴードン・ベネット・カップというレースの出場者を決めるトライアルレースとして、スタートしています。

この頃は、島全体ではなく、マン島の高地のみを使用していました。

そして1907年、第1回競技がスタート。この頃は市販車(保安基準を満たす必要あり)で、1周およそ15マイルのコースを10周で争われています。

その後、幾度かコース・レギュレーションを変更しながら開催されていましたが、一時は戦争により開催を中断するなど、悲しい歴史も併せて持ち合わせているマン島TT。

1949年からは世界ロードレース選手権(WGP)のイギリスラウンドとしてシリーズに組み込まれ、世界最大のロードレースイベントという地位を確固たるものにしていきます。

しかし、世界各国に近代的なサーキットが登場し始めると、公道を使用していることによる舗装の荒れや観客動員の都合などから、チーム・ライダーともに敬遠されるようになり、1976年にWGPから外れることに。

ですが、それでも世界最大のロードレースという認識は変わることなく、マン島TTへ挑戦するライダー・チームは世界中から毎年参戦。

近年も多くのライダーが、このレースに参戦し、新たな伝説を作り続けています。

ちなみに、日本人として最初に参戦したのは、1930年の多田健造選手。

御年42歳で、350ccのバイクであるヴェロセットKTTを駆って参戦しています。

 

そして、今回紹介するのは1950年後半、マン島TTレースに、世界に挑戦した国産の名車たちです。

 

1959 ホンダRC160

©鈴鹿サーキット

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ホンダ初のDOHC4気筒エンジンを搭載したマシンであるRC160.

ホンダがマン島TTレースへの参戦を決定し、250ccクラス参戦用マシンとして1959年に製作したマシンです。

それまで、ホンダのレーサーには2気筒エンジンしかなかったため、初の試みとなったこの4気筒マシンは、2気筒分のカムシャフトやクランクシャフトを、エンジンセンター付近で結合するという驚きのギミックが組み込まれています。

ちなみに、この車両自体は諸般の事情により、マン島TTには参戦していません。

しかし、国内の第3回全日本オートバイ耐久レース(浅間火山レース)の250ccクラスに5台が参戦し、1位から5位までを独占するという見事な結果を残し、マン島挑戦への大きな自信を得ることに繋がっています。

 

ホンダ・RC160 スペック

エンジン種類:空冷4サイクル4気筒DOHC4バルブ べベルギヤ駆動
排気量:249.37cc
最高出力:35馬力以上/14,000rpm
最高速:220km/h以上
重量:124kg
変速機:常時噛合式5段

 

1959 ホンダRC142

©鈴鹿サーキット

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1959年、ホンダがマン島TTレースに初出場を果たした際の車両がこのRC142。

エンジンは空冷4ストロークDOHC2気筒125cc。

高出力を望むことが難しいこの排気量のクラスでも、DOHCヘッドと4バルブの採用で18馬力と言う驚異的なパワーを生み出しています。

※同時期の125cc市販バイクは、高性能でも15馬力程度でした。

なお、レースでは谷口尚巳選手が6位入賞。しかし、優勝したMVアグスタからは6分43秒と大幅に遅れる結果に。

初参戦を終え、世界のマシンとの差を知ったホンダは、マン島制覇のために開発を継続。

その結果が実り、2年後の1961年にRC143で125ccクラスを、RC162で250ccクラスを制覇することになります。

 

ホンダ・RC142 スペック

エンジン種類:空冷4サイクル2気筒DOHC4バルブ
排気量:124.6cc
最高出力:18馬力以上/13,000rpm
最高速:180km/h以上
重量:87kg
変速機:常時噛合式6段

 

1963 ホンダRC164

©鈴鹿サーキット

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1963年にホンダ製作したワークスマシンであるRC164。

ここまで紹介してきたマシンと比べると、タンクが細く長く、ライダーは車両のかなり後方に乗ることになります。

このスタイリングによってライダーが伏せた際の空力性能が向上。あわせてカウルのスクリーンも縦に大きく伸びています。

マン島TTでは、ジム・レッドマンが駆り、250ccクラスで優勝。

また、この年のWGP(ロードレース世界選手権)には、前年オープンした鈴鹿サーキットが日本GPとして初めてシリーズに組み込まれ、15万人余りの観客が詰めかけるなか、見事優勝。

鈴鹿で行われた初の世界戦で、ホンダのマシンが勝利したということ。そしてドライバー・メーカーともシリーズを制することに貢献した、メモリアルな1台です。

 

ホンダ・RC164 スペック

エンジン種類:空冷4サイクル4気筒DOHC4バルブ べベルギヤ駆動
排気量:249.3cc
最高出力:46馬力以上/14,000rpm
最高速:220km/h以上
重量:130kg
変速機:常時噛合式6段

 

1965 ヤマハRD56

©鈴鹿サーキット

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今回紹介する中で唯一ヤマハのマシンである、RD56。

1962年の第1回全日本ロードレースでデビューしたこのマシンは、徐々に仕様変更をしながら、翌63年には海外レースへ参戦を開始。

2010年代の今でもあまり見ない7段変速まで搭載し、1964年、1965年にはWGPでメーカー・ライダーの両タイトルを獲得。

ライダーはフィル・リード。4ストロークエンジンが全盛であったこの時代に、2ストロークエンジンの強さを見せつけた、ヤマハ2輪の歴史の中でも重要な一台です。

なお、マン島TTでは、1963年に伊東史郎が駆り、2位表彰台を獲得。この年のマン島制覇マシンが、前述のホンダRC164となります。

 

ヤマハ・RD56 スペック

エンジン種類:空冷2ストローク2気筒
排気量:249cc
最高出力:50馬力以上/11,000rpm
最高速:220km/h以上
重量:115kg
変速機:常時噛合式7段

 

マン島TTはモータースポーツの未来にもチャレンジしている

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/

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マン島TTレースについて、知っておきたいことをひとつ。

世界一危険なレースという側面を持つレースでありながらも、2009年からは環境に配慮したゼロエミッションカテゴリが試験的にスタート。

レギュレーションは「CO2の排出量がゼロであること」。

これによって電動バイクがメインとなり、2輪業界関係者のみならず、学生や、IT企業の関係者などがオリジナルのマシンを製作して参戦するなど、参加型かつ環境配慮型のレースとしての側面も持つことに。

翌年「TT Zero」クラスが正式に設立され、100年以上の歴史を持つレースながら、モータースポーツの新しい世界を切り開こうとしているレースでもあるのです。

無限・神電伍/2015年仕様(出典:http://www.mugen-power.com/)

無限・神電伍/2015年仕様(出典:http://www.mugen-power.com/)

日本からも、2012年に無限が開発した「神電」というマシンが参戦中。

2014年からは2台体制で参戦を開始し、1位、2位を獲得。翌年も同じくワンツーフィニッシュを決め、見事2連覇を達成しています。

 

まとめ

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/

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マン島TTレース参戦マシン紹介、いかがだったでしょうか?

今からおよそ50年前に世界で活躍した国産のレーシングマシン。

現代の車両から見比べると非力に映るかもしれませんが、実物のサウンドと、その佇まいから見えるオーラは今のマシンとは比べられない何かが見えるかもしれません。

是非イベントなどで実物を見て、その空気感を感じ取ってもらえたらと思います!

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