コンパクトカーと言えばダイハツ。「小さなクルマ」を作ることに関しては間違いなく世界でもトップクラスの技術を持つ自動車メーカーです。そんなダイハツが、遡ること約60年前の1960年代後半に、レーシングカーを作っていたことは知っていますか?その名はダイハツP5。名前のPはプロトタイプを表し、レース参戦のためだけに作られた試作車、つまり量産を視野に入れていないピュアなレーシングマシンです。
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60年代。加熱する日本の自動車レースシーンにおけるダイハツ
1960年代、日本の四輪レースシーンは非常に盛り上がっていました。
当時はサーキットの建設が盛んに行われた年でもあり、1962年にホンダが三重県に鈴鹿サーキットを設立したことを皮切りに、翌年には日本グランプリがスタートします。
続いて1965年には富士スピードウェイが設立され、これらの本格サーキットを舞台にトヨタや日産等のワークスチームが、各社の技術力を競い合っていたのです。
そんな中’63年に開催された第1回 日本グランプリ、’64年開催の第2回のどちらへも参戦を見送ったダイハツは、レース後発組でしたが、その後ダイハツ初の乗用車 コンパーノ・ベルリーナ800を引っさげて、レースへの参戦をスタートさせます。
乗用車から純レーシングカーへ。P5開発の系譜
実はP5のルーツはコンパーノにあたり、P1,P2,P3と徐々に発展改良させていくことで最終的なレーシングプロト、P4へと至ります。
まず初めに作られたのが、P1でした。
ノーマルのコンパーノではパワー不足だった為、フロントノーズを丸く尖らせて、ルーフ後端に整流板を加えることで空力の向上を図ったモデルです。
当時、日本のレースシーンでは空気抵抗を抑えるボディという概念があまりなく、メーカー系ワークスの中では先進的な取り組みだったと言われています。
次いで、1965年にP2が完成。
コンパーノ・ベルリーナのラダーフレームシャシー上にファストバック風の流麗なボディを被せたモデルです。
そして翌年の1966年、日本グランプリにP3がデビューします。
上掲画像の2台のP3は、ダックテールを備えたどこかユーモラスなシルエットと、イエローのボディカラーが鳥をイメージさせたのか、「ピーちゃん」の愛称で親しまれました。
しかし、可愛らしい外見とは裏腹に中身はかなりの本格派。
1.2リッターのDOHC4気筒は110馬力を発生し、当時としては高度にチューニングされた部類のエンジンでした。
このP3で、ダイハツは快進撃を続けます。
日本グランプリでクラス優勝を果たすと、同年7月の富士ツーリストトロフィーでも優勝。
’67年7月の鈴鹿12時間耐久においても、クラス優勝を果たすのです。
いざレーシングプロトへ。骨格からの開発がリスタート
勢いに乗ったダイハツは、いよいよ本格的なレーシングマシン、P5の開発に乗り出します。
純レース仕様車として更なる性能アップを図るために、技術陣にとっての次なる課題はミドシップ化でした。
その為、それまでのコンパーノのラダーフレームを離れて、新たに鋼菅スペースフレームを採用。
そこにFRP製のボディが架装されます。
さらにチューンアップして130馬力となったP3の改良型エンジンをミッドシップに搭載する事に成功しますが、’67年の日本グランプリで予選落ち。
P5のデビューは華々しいものではありませんでした。
数々のチューニングで飛躍的に性能アップ。無敵を誇ったP5Xへと進化
翌年’67年の東京モーターショーで、改良型P5Xがお披露目されます。
外観上の変更点はヘッドライトが2灯から4灯になったくらいですが、中身は別物と言っていいほどに様々な改良が施されていました。
鋼菅スペースフレームは、より細いパイプを細かく継ぎ合わせることで軽量化と剛性アップを実現。
トレッドは前後ともに70mm拡大され、直進安定性の向上に貢献しています。
エンジンは排気量が1.3リッターまで拡大され、出力を140馬力までアップ。
質実剛健なチューニングが功を奏し、その後の様々なレースにおいて活躍しました。
デビュー戦となった’68年の日本グランプリにおいてクラス優勝を果たしたあと、同年6月には全日本鈴鹿自動車、9月には鈴鹿1000km、10月にはNETスピードカップ富士と富士12時間耐久、等々、数えればきりがない程の輝かしい戦績を記録していきます。
このように、’60年代後半の小排気量カテゴリーで、実質無敵を誇っていたのがダイハツP5なのです。
まとめ
今でこそ本格的なレース活動を行っていないダイハツですが、’60年代には連戦連勝を誇る素晴らしいマシンを作っていました。
程なくしてダイハツのレーシングチームはトヨタに合流する形となりますが、P5を作った技術者たちの志は、現在のトヨタのル・マンでの活躍へとしっかりと受け継がれています。
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