大排気量車を豪快に操るのも魅力的ですが、小排気量ロードスポーツには違った面白さがあります。絶対的な速さこそありませんが、少し足りないパワーを使い切り、シャープな操縦性を味わった時、あなたは『モーターサイクルはバランスの乗り物』だということを再発見するでしょう。125cc A/T免許取得の簡易化など原付二種(原二)を取り巻く環境が変化しつつある今だからこそ、『山椒は小粒でもぴりりと辛い』マニュアルミッションで操る小さなスポーツバイクたちを紹介していきます。今回ご紹介するのは、ヤマハから発売されていたRD125。

出典:http://www.motorcyclespecs.co.za/model/yamaha/yamaha_rd125%2075.htm
RD125とは

出典:http://www.motorcyclespecs.co.za/model/yamaha/yamaha_rd125%2075.htm
ヤマハRD125は1974年に国内販売が開始されたライトウェイトロードスポーツで、今では目にすることもなくなった2サイクル・空冷パラレルツイン(並列2気筒)エンジンを搭載した、ヤマハらしい端正で美しいデザインのモーターサイクルです。
国内125ccクラス初採用のフロントディスクブレーキや、吸気側にリードバルブを採用した7ポートトルクインダクションシステムにより全域でパワーアップが図られた新設計エンジンを搭載した新世代のヤマハモーターサイクルであり、同じ年に発売された50・90とともに先発の250・350と合わせ『RDシリーズ』が完成します。
RD125の魅力

出典:https://yamaha-rd125.blogspot.com/2015/11/yamaha-rd125-specifications-maintenance.html
RD125の魅力の一つとして、まずそのデザインが挙げられるでしょう。
小さく愛らしいながらも、大きなモーターサイクルに劣らないダイナミックさを感じさせるデザインは、RDシリーズに限らずヤマハが他メーカーに比べてデザインをとても重視している姿勢の現れであり、無機質になりがちなモーターサイクルという機械に優雅とも言えるデザインを施すことでユーザーの心を掴む事に成功。
またRD125のデザインはトライアンフなどに代表される旧英国車的とも言え、NSUやZundappといった古いドイツ車を彷彿させる、まさにモーターサイクルらしいデザイン。
これにはヤマハがピアノという楽器製造をおこなってきた企業であるということと共に、ヤマハ初の市販車であるYA-1(通称:赤トンボ)のデザインから同社と深く関わるGKデザインの影響を色濃く感じさせます。(現在はグループ企業であるGKダイナミックス社が担当)
各年代のモデル

出典:https://classic-motorbikes.net/yamaha-rd125b-road-test/

出店:https://classic-motorbikes.net/yamaha-rd125b-road-test/
上の二枚の画像は、国内販売以前に海外で発売されていたドラムブレーキ仕様(1973年頃?)と思われます。
西洋的な庭が写り込んだ背景と相まって、気品さえ感じさせるデザインではないでしょうか。

出典:http://www.motorcyclespecs.co.za/model/yamaha/yamaha_rd125%2077.htm
こちらは1976年以降に発売されたマイナーチェンジ後モデル。
当時流行の兆しを見せていたカフェレーサー風のデザインは、それまでのものから一転してライダーを『ヤル気』にさせる挑発的なものになりました。
そしてフレームやエンジンにも改良が施され、シリンダーヘッドフィンの拡大と増加による熱対策や低中速トルクの改善など、信頼性と扱い易さを求めてその範囲は多岐にわたっています。
ここまではデザインに注目してご紹介しましたが、RD125の魅力はそれだけではありません。
動画の中のRD125が見せる、美しいデザインとは裏腹に狂気に満ちたサウンドを奏でながらの弾けっぷりは、ヤマハ2ストパラレルツインの末弟の名に恥じないパフォーマンス。
エキゾーストノートと空冷フィンの共鳴音は、目をつぶって音だけ聞くととても小さな市販車とは思えない大迫力です。
市販レーサーTA125との関係

© Yamaha Motor Co., Ltd.
ヤマハの2サイクルスポーツモデルは伝統的に市販レーサーと背中合わせの関係にあり、当然RD125も例に漏れず多くの部品を共用する市販レーサー・TA125との兄弟関係というバックグラウンドを持ちます。
正確を期して書くなら、市販車AX125をベースに開発されたTA125と、そこからのフィードバックによって生まれたRD125ということ。
戦後の荒廃から立ち直りモーターサイクル製造に活路を見出した国内メーカーは、浅間火山レースに代表される国内レースはもとより、WGPやマン島TTレースなどにも積極的に参加して、その技術と信頼性を勝ち取っていくことになるのですが、ヤマハも会社創立と同時に参戦した1955年7月の第3回富士登山レースを皮切りにYA-1による浅間火山レース、ワークスマシンによるWGP・マン島TTレースへの参加で快挙を挙げていきます。
ホンダは「サーキットは実験場だ。」と公言し素晴らしい実績を残すメーカーですが、ヤマハもまたレースとは切っても切れない縁のあるサーキット育ちのメーカーであり、RD125もまた紛れもなくレースと表裏一体の関係なのです。
上記のようなTA125の走行シーンをご覧いただくとわかるように、当時は音量規制が緩かったので、レーサーたちはサイレンサー無しで走行する事も多々ありました。
モーターサイクルに興味のない人が耳にすれば顔をしかめるような音ですが、4サイクルの重厚な音とは違う小排気量2サイクルの甲高いエキゾーストノートは、2サイクル好きには堪らない魅力です。
RD125のスペック
機種名 | RD125(1974~) | RD125(1976~) |
型式 | 404・485 | 1H7 |
全長×全幅×全高(mm) | 1,935×840×1,060 | 1,940×840×1,050 |
軸間距離(mm) | 1,240 | 1,240 |
乾燥重量(kg) | 106Kg | 110Kg |
装備重量(Kg) | — | — |
エンジン種類 | 空冷2サイクル 並列2気筒 ピストンリードバルブ |
空冷2サイクル 並列2気筒 ピストンリードバルブ |
総排気量 | 124 | 124 |
ボア×ストローク(mm) | 43.0×43.0 | 43.0×43.0 |
圧縮比 | 6.8:1 | 6.8:1 |
燃料供給装置 | キャブレター | キャブレター |
最高出力(ps/rpm) | 16ps/9,500rpm | 16ps/8,500rpm |
最大トルク(kgm/rpm) | 1.3kgm/8,500rpm | 1.3kgm/8,000rpm |
トランスミッション | 常時噛合式5段リターン | 常時噛合式5段リターン |
始動方式 | キックスターター | キックスターター |
駆動方式 | チェーン | チェーン |
燃料タンク容量(L) | 11. | 11.5L |
ブレーキ形式 Fr. | 油圧式ディスクブレーキ | 油圧式ディスクブレーキ |
ブレーキ形式 Rr. | 機械式リーディングトレーリング | 機械式リーディングトレーリング |
タイヤサイズ Fr. | 2.75-18 W/T | 2.75-18 W/T |
タイヤサイズ Rr. | 3.00-18 W/T | 3.00-18 W/T |
発売当時価格(円) | 155,000~185,000 | 196,000~198,000 |
まとめ
大型モーターサイクルを薪割りの鉈(なた)に例えるなら、RDを含めた125ccスポーツバイクはまるで鋭利なカミソリのような鋭さを持った存在であり、ビギナー・ベテラン問わずモーターサイクルライディングの良き先生となってくれるカテゴリーです。
ヨーロッパではそれなりの市場規模を持ちポピュラーな存在である125ccクラスですが、残念なことに日本国内では『自動車免許のオマケの原付免許に毛が生えた』程度の認識しかないのが現実。
ご多聞に漏れずRD125も決して大ヒットモデルというわけではありませんが、その血筋と実際の走りは大きなモーターサイクルに劣るどころか、小排気量ゆえの独自の世界を作り出しています。
RD125の存在を知ったあなたが小排気量に興味を持つと共に、面白さに目覚めてくれることを願ってやみません。
あなたがもしもどこかでRD125を見かけた時、この記事を思い出していただけたなら幸いです。
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