大排気量車を豪快に操るのも魅力的ですが、小排気量ロードスポーツには違った面白さがあります。絶対的な速さこそありませんが、少し足りないパワーを使い切りシャープな操縦性を味わった時、あなたはモーターサイクルはバランスの乗り物だということを再発見するでしょう。【シリーズ”原二”】では、125cc A/T免許取得の簡易化など原付二種(原二)を取り巻く環境が変化しつつある今だからこそ、『山椒は小粒でもぴりりと辛い』マニュアルミッションで操る小さなスポーツバイクたちを紹介していきます。第二回目の今回ご紹介するのは、ホンダから発売され高回転型エンジンの魅力を私達に教えてくれたCB125Tです。
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CB125Tとは
CB125Tはホンダの中でもかなり長い歴史を持つモデルで、遡れば小排気量スポーツモデルとして有名なCB92を通り過ぎ、1958年発売のC90(スーパーカブとは別物です)という、125ccクラスでは世界初の量産となる空冷4ストロークOHC並列2気筒エンジンを搭載したモデルに行き着きます。
現在でこそCB125Tは、原付二種免許の教習車であったりセカンドカー代わりのシティコミューター的位置づけとなっていますが、ホンダからCB750Fourが発売されるまでは、国内では250ccでさえ『結構大きなモーターサイクル』という認識があり、筆者の父親たち世代の感覚では125ccクラスも今のようなマイナーなクラスではなく、現代で言うところの250~400クラスと同じように認識されていたようです。
そのような時代背景の中で生まれ育ったCB125Tはホンダがかなり力を入れて開発したモデルであり、また、ホンダの熱い血を受け継ぐ紛れもなきスポーツモデルなのです。
CB125Tの魅力
空冷4ストロークの並列2気筒エンジンと聞いて、みなさんはどんな性格をイメージしますか?
おそらく多くの人がカワサキW1やW800といった重厚でツアラー的な、ゆったりとしたイメージを抱くのではないでしょうか。
ところがCB125Tは真逆な性格で、1980年代に登場した4気筒250ccモデルが20,000rpmを達成するまでは、筆者が記憶する限り国産で最も高回転型エンジンを搭載した、いかにもホンダらしいモデルです。
また非常にタフなエンジンでもあり、タコメーターの目盛りの上限である13,000rpmを振り切り、推定14,000rpm付近まで達しても平然と回り続けるというもので、現代の目から見れば過剰とも思える品質を持ち合わせていました。
そしてマニュアルの5速ミッションを駆使し9,000rpm以上をキープして走る時のCB125Tは、大型モーターサイクルに劣らないどころか、一味違うスポーツライディングの世界を味あわせてくれます。
さらに、比較的購入しやすい価格帯で発売されていたこともあり、今ほどカスタムパーツが簡単に手に入らない当時でもアマチュアの手作り感満載のカスタムされた車両を多く見かけました。
上の画像のような本格的なものは別格としても、造り手も気楽に手を出せる125ccクラスは良きホビー教材でもあり、CB125Tもその一端を担ってきたのです。
ただ、筆者はプロリンクのリアサスになってからのモデルには乗ったことがないのですが、二本サスのモデル(1984年頃のもの)はエンジンに比べて足回りが少し弱い印象で、いい気になってスピードを上げすぎてヒヤリとした記憶があり、俗にいう『足がエンジンに負けている』印象を持ったのも事実。
下は短い動画ですが、CB125Tのエンジンの回りっぷりを御覧ください。
各年代のモデル
ここでは歴代モデルの中から主だったものをご紹介します。
あらためて並べてみると、CB125Tがいかに長い歴史を持つバイクだったかわかるのではないでしょうか。
CB125ベンリイ(1967)
CB125ベンリイ(1967) まだ『T』が付く前のモデルです。
最大出力:15ps/10,500rpm
最大トルク:1.0kg-m/9,000rpm
乾燥重量;133Kg
CB125(1970)
CB125(1970) ドラムブレーキが小型化され、セルモーターは取り外されました。
最大出力:15ps/10,500rpm
最大トルク:1.0kg-m/9,000rpm
乾燥重量:133Kg
CB125(1972)
CB125(1972) エンジン、フレームともに新設計で、セルモーターが復活。
同時期のCB250/350エクスポートと重なるイメージの1台。
最大出力:15ps/10,500rpm
最大トルク1.0kg-m/9,000rpm
乾燥重量:133Kg
CB125(1974)
CB125(1974) マイナーチェンジ Fr.機械式ディスクブレーキ化。
最大出力:15ps/10,500rpm
最大トルク:1.0kg-m/9,000rpm
乾燥重量:133Kg
CB125T(1980)
CB125T(1980) プレスアルミスポークによるコムスターホイルを採用。
Fr.ブレーキはまだ機械式で、歴代最も軽量で最も過激なエンジンを積んでいた頃のモデル。
最大出力:16ps/11,500rpm
最大トルク:1.0kg-m/10,500rpm
乾燥重量:114Kg
CB125T(1984)
CB125T(1984)。
教習所の片隅にひっそりと置かれたのを観たことがある人もいるのではないでしょうか。
ここに至ってようやくFr.ブレーキは油圧化され、ブーメランコムスターホイールを採用。
エンジンの改良により、馬力・トルクの増強と発生回転の低回転化が実現し扱いやすくなる。
最大出力:16ps/10,500rpm
最大トルク:1.2kg-m/9,000rpm
乾燥重量:125Kg
この後、アルミホイールの採用や乗り易さ追求のためキャブレター形式の変更による出力低下などを経て、最終型の2003年型をもって生産終了となりました。
ホンダ125cc2気筒の系譜
ここで簡単に、ホンダの125cc 2気筒エンジンの系譜を辿っておきましょう。
1959年にマン島TTレースに初出場したDOHC 2バルブエンジン搭載のワークスマシンRC141(上の画像はRC142 DOHC 4バルブ)から始まる挑戦は、1961年の優勝によって本田宗一郎氏の『マン島TTでの勝利』という悲願を達成します。
ホンダ125cc 2気筒スポーツエンジンの歴史はここから始まったと言っても過言ではありません。
このチャレンジスピリッツを色濃く受け継いだモデルとして、1959年に発売されたのが下の画像のCB92(正式名:ホンダベンリイCB92スーパースポーツ)であり、初めて『CB』の名を冠した市販スポーツモデルとして第2回全日本モーターサイクル・クラブマンレース(浅間高原)で活躍しました。
この後、エンジン・フレームを含めた大きなモデルチェンジを繰り返し、最終型であるJD06型のCB125Tへと繋がります。
そしてそれぞれのモデルは、エンジンなどは外見こそ似ていても中身が全く違うものもあり、たとえばサイドカムチェーンvs.センターカムチェーンや180度クランクvs.360度クランクなどの存在は、充填効率と燃焼効率の向上によってトルクの増強と低回転化を実現したなど、その特性や乗り味に変化をもたらしました。
また、下のスペック表から分かるように旧モデルより1,500rpm低い回転で0.2Kg-mの向上を実現たものもありますが、数値上では小さなものでも実際は大変なことで、馬力は高回転化すればある程度は従いてきますが、トルクを向上させるには重箱の隅を突っつくような地道な開発が必要なのです。
しかし、それほど販売数を見込めないマイナーなクラスのエンジンにも手を抜かず開発を緩めない姿勢からは、ホンダがこのエンジンに寄せる熱い想いを垣間見る事ができる気がします。
下の動画は、CB125Tでのサーキット走行をおさめたものです。
ホンダ小排気量ツインの咆哮をお楽しみください。
CB125Tのスペック
機種名 | CB125T(1978) | CB125T(1984) |
全長×全幅×全高(mm) | 1,980×760×1,045 | 2,060×730×1,070 |
軸間距離(mm) | 1,275 | 1,350 |
乾燥重量(kg) | 114 | 125 |
装備重量(Kg) | 126 | 137 |
エンジン種類 | 空冷4サイクルOHC並列2気筒2バルブ | 空冷4サイクルOHC並列2気筒2バルブ |
総排気量(cc) | 124 | 124 |
ボア×ストローク(mm) | 44.0×41.0 | 44.0×41.0 |
圧縮比 | 9.4:1 | 9.4:1 |
燃料供給装置 | キャブレター | キャブレター |
最高出力(ps/rpm) | 16/11,500 | 16/10,500 |
最大トルク(kg-m/rpm) | 1.0/10,500 | 1.2/9,000 |
トランスミッション | 常時噛合式5段リターン | 常時噛合式5段リターン |
始動方式 | キックスターター | セルフスターター |
駆動方式 | チェーン | チェーン |
燃料タンク容量(L) | 11.5 | 14 |
ブレーキ形式 Fr. | 機械式ディスクブレーキ | 油圧式ディスクブレーキ |
ブレーキ形式 Rr. | 機械式リーディングトレーリング | 機械式リーディングトレーリング |
タイヤサイズ Fr. | 3.00-18-4PR T/L | 3.00-18-4PR T/L |
タイヤサイズ Rr. | 3.25-18-4PR T/L | 3.25-18-4PR T/L |
発売当時価格(円) | — | 279,000 |
CB125Tの中古車相場
1976~1990あたりまでのモデルが面白いと思います。
¥60,000~¥348,000 |
– goo調べ2018年6月現在- – |
まとめ
ホンダと言うと『ナナハン』や『ヨンフォア』といったイメージが先行しますが、実は筆者は小排気量こそがホンダの真骨頂だと思っています。
それは、持てる技術を惜しみなく投入し『高回転化』というホンダが得意とする分野を突き詰めたエッセンスが、小さな市販車にも反映されていると感じるからです。
そんな、ホンダの熱い血を受け継いできたCB125Tは残念なことに現在新車では手に入りませんが、間違いなくホンダの『血』を感じさせてくれるモデルでした。
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