400ccレーサーレプリカの傑作として名高いホンダVFR400Rは、カムギアトレーンのV4エンジンを搭載するなど、TT-F3ワークスマシンRVF400とほぼ同様のスタイルで人気を博し、VFR400R歴代モデルのなかで最も多い販売台数を誇った1台です。そんなVFR400Rの3代目モデルであるNC30型に注目して、歴史や魅力をご紹介します。
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打倒2ストニーハン!4ストヨンヒャク最速を目指したレーサーレプリカホンダVFR400R(NC30)
ホンダVFR400R(NC30)は、1989年に発売された排気量399ccの4ストロークレーサーレプリカバイクです。
そんなVFR400Rの元となったのは1979年に発売されたVF400Fとされており、1986年には初代NC21型VFR400Rが発売。
1987年に2代目NC24型に発売し、1989年に今回ご紹介する3代目NC30型が発売されました。
そして1994年に後継モデルのRVF(NC35)が発売されるまでの約5年間生産され、VFR400Rの歴代モデル中で最も長く販売された大人気モデル。
その人気の要因は、当時全日本ロードレース選手権で行われていたTT-F3クラスにホンダワークスが送り込んだマシン『RVF400』をそのまま公道仕様にした、レーシーな設計とカッコよさにありました。
ちなみに、アマチュアレーサーや峠の走り屋からは、2ストローク250ccのレプリカバイクのほうが人気でしたが、打倒2ストニーハンに燃えるライダーからはVFR400Rが注目されたのです。
全日本TT-F3チャンピオンマシンRVF400をそのまま公道仕様に!
【1987年全日本TT-F3チャンピオン】田口選手!この時代のRVFは本当にカッコいいな~!(>_<)アッパーカウルの低さに萌えます! pic.twitter.com/lvWoqSFYpx
— バイクレースはドラマより面白い! ! (@osamufujita3) 2016年9月30日
VFR400Rは、ホンダワークスマシンRVF400を強く意識した設計になっています。
4ストローク400ccと2ストローク250ccのマシンで争われていたTT-F3クラスにおいて、ホンダはワークスマシンRVF400で参戦。
公道走行可能な250~400ccのバイクが出場するレースであるため、プライべーターが参加しやすく、エントリー台数もとても多いクラスでした。
そこに、ホンダはワークス『体制のチームHRC』からVFR400Rをベースに開発したRVF400を投入。
ヤマハもFZR400をベースにしたワークスマシンYZR400を投入し、多くの強豪チームや有力ライダーがひしめくTT-F3クラスでありながら、毎レース”RVF400対YZR400″の一騎打ち状態となっていました。
そしてRVF400投入初年度の1985年と翌1986年に、チームHRCの山本陽一氏がシリーズチャンピオンを獲得。
1987年は同じHRCの田口益充氏がシリーズチャンピオンを獲得し、3年連続で400ccマシン日本最速の座に立ちました。
ホンダはTT-F3クラスで大成功し、RVF400のベースマシンであったNC24型VFR400Rも2輪市場で注目される事になります。
そして、NC30型のVFR400RはワークスRVF400をそのまま公道仕様したことを思わせるスタイルへモデルチェンジされる事になったのです。
一方では、スーパーバイクレースのホモロゲーションモデル『VFR750R(RC30)』の400cc版といった声も聞かれ、いずれにせよレースファンの興味を一気に引き寄せました。
また、日本では二輪レースブーム真っ只中だったこともあり、NC30型は発売からすぐに販売台数を伸ばし、同クラスのヤマハFZR400R、スズキGSX-R400、カワサキZXR400に乗るライダーを脅かすバイク存在に。
4ストロークだけでなく2ストローク250ccバイクに乗るライダーからもVFR400Rの速さは驚異で、2ストと4ストの争いにはVFR400Rが4スト勢の筆頭に立ちバトルしているシーンが多く見られました。
中身のアップデートもすごかった
NC24からNC30へフルモデルチェンジした際、共通部品を見つけるのが難しいといわれたほど、NC30は完全オリジナル設計になっていました。
また、エンジンのクランク角をそれまでの270°から360°にしたことで『ビッグバンエンジン』と呼ばれた燃焼システムを導入。
エンジンヘッド周りはアジャスト式ロッカーアームからダイレクトロッカーアームに変更され、量産車で初めて直径8mmの小径スパークプラグが搭載されています。
そしてもちろんカムの駆動はカムギアトレーンで賄われ、14,000回転からのレッドゾーンまではストレスなく一気に回る高性能。
高回転仕様となったエンジンを十分冷却するために、空力特性も踏まえたうえで上下2層配置のラジエーターを搭載されました。
駆動系はバックトルクリミッター機構内蔵のクラッチが搭載され、トランスミッションはクロスレシオ化されたことで常に高回転キープでの走行も可能に。
NC24から導入された片側スイングアーム『Pro-Arm』はセンターナット止めに変更され、見た目のカッコよさと軽量化や運動性能向上にも役立っていました。
さすが、バブル時期に作られたバイクだけあって、かなりのコストをかけた作りになっていましたが、なによりもワークスマシンとかなり近い外観や中身の設計、ホンダ独自のV4エンジンということで、他の2輪メーカーの400ccレプリカバイクと比較すれば異彩を放つ存在だったのです。
スペック
1989年モデル ホンダVFR400R | ||
---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 1,985×705×1,075 | |
軸距(mm) | 1,345 | |
シート高(mm) | 755 | |
乾燥重量(kg) | 164 | |
乗車定員(名) | 2 | |
エンジン種類 | 水冷V型4気筒DOHC16バルブ | |
排気量(cc) | 399 | |
ボア×ストローク(mm) | 55.0×42.0 | |
圧縮比 | 11.3:1 | |
最高出力(kW[hp]/rpm) | 43.3[59]/12,500 | |
最大トルク(N・m[kgf-m]/rpm) | 39.2[4.0]/10,000 | |
トランスミッション | 常時噛合式6段リターン | |
タンク容量(L) | 15 | |
タイヤ | 前 | 120/60R17 55H |
後 | 150/60R18 67H | |
ブレーキ形式 | 前 | 4ポットキャリパー油圧式ダブルディスク(フローティング) |
後 | 2ポットキャリパー油圧式ディスク | |
サスペンション方式 | 前 | テレスコピック |
後 | スイング・アーム(プロアーム) | |
燃費(km/L) | 37.0(60km/h定地走行テスト値) | |
価格 | 749,000円 |
ホンダVFR400Rの中古車価格相場は
VFR400Rってバイク真面目にバイトして免許取って買おうかなって思ってる、中古50万ちょいだし… pic.twitter.com/N0LHRFdfCX
— ぴくしー (@PixyJZA80) 2018年4月12日
VFR400Rの中古車価格は22~64万円。
すでに30年近く前のバイクであるため、個体数はかなり少なくなり、ネットで検索してもおそらく20~30台程度しかヒットしません。
サーキット走行や峠の走り屋から人気の高いモデルであるため、車両の程度が良くない物も多々。
キズが少なかったりノーマルに近いものは30~40万円、走行距離が2万キロ以下であれば50万円ぐらいの価格設定で、400ccレーサーレプリカバイクの中では比較的相場価格が高額なモデルです。
まとめ
1980年代終盤あたりに、ホンダV4を最も気軽に味わえたのがVFR400Rでした。
他メーカーの400ccや2ストローク250ccに負けないポテンシャルを発揮し、ホンダワークス譲りのスタイリングは、純粋に「かっこいい。」と感じることができます。
また、エンジンを始動すればV4独特のエンジンサウンドに酔いしれてしまうのも魅力の一つ。
歴代400ccバイクの中でVFR400Rは、間違いなく名車に入る一台です。
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