昨年11月、ドゥカティはパニガーレシリーズ最強モデル、『パニガーレV4R』を発表しました。WSBKのレギュレーションを満たすために排気量を1,000ccまで下げていながら、歴代ドゥカティマシンの中で最高値となる221馬力を発揮するモンスターマシン!MotoGPマシンでお馴染みとなったウイングも装着され、ドゥカティのMotoGPマシンから多くの技術がフィードバックされた、正真正銘のレーサーレプリカマシンです。

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ドゥカティ黄金時代の再来か!?2019年WSBKでドゥカティ・パニガーレV4Rが開幕6連勝達成

WSBK開幕戦オーストラリアの決勝レースを走る、アルバロ・バウティスタ選手 / © 2018 Ducati Motor Holding S.p.A

スーパーバイク世界選手権(WSBK)の2019年シーズンにおいて、再びドゥカティ黄金期が到来する事が予想されています。

今シーズンの開幕から2ラウンドを終え、それぞれの第1レース・第2レース・スーパーポールを含めた全6戦、すべてのレースがドゥカティ ワークスチームのアルバロ・バウティスタ選手が優勝という最高のスタートダッシュ!!

2011年のカルロス・チェカ選手以来のシリーズチャンピオン最有力候補となっています。

そんなドゥカティが、今シーズンのWSBKに送り込んだドゥカティ パニガーレV4Rは、EICMA2018開催直前に行われた、ドゥカティ ワールドプレミア2019(2018年11月4日)で世界初公開され、すでに海外ではデリバリーを開始済み。

これから日本にも導入される予定です。

昨年のシリーズランキングを2位で終えたドゥカティ ワークスチームが走らせていたのは、1200ccのL型2気筒エンジンを搭載したパニガーレRでしたが、今シーズンはV4エンジンの封印が解け、既にパニガーレV4Rの速さがサーキット上で披露され、世界最速のSSバイクになろうとしています。

しかし、WSBKのレギュレーション上、必ず公道走行可能な市販モデルでなれば出場できないため、パニガーレV4RはWSBKのタイトルを奪回するためだけに用意された、限りなくワークスレーサーマシンに近い市販車なのです。

 

MotoGPマシンとほぼ同等タイム

WSBKドゥカティワークスマシン パニガーレV4R / © 2018 Ducati Motor Holding S.p.A

フィリップアイランドで開催された2019年開幕戦、オーストラリアGPの結果を見ると、タイムはバウティスタ選手が1分29秒729をマークし予選3位を獲得。

このタイムを2018年MotoGP第17戦オーストラリアGPフィリップアイランドの予選タイムと比較すれば、ポールポジションのマルケス選手から約0.5秒落ちの予選5位に入るタイムとなります。

また、カワサキZX-10RRには劣っているものの、決勝レースのタイム差は第1レースで8秒、第2レースで10秒とブッチギリの速さを見せたパニガーレV4Rのポテンシャルは、相当なものです。

予選順位 2018MotoGP 2019WSBK
ライダー タイム ライダー タイム
1位 M.マルケス (ホンダ・RC213V) 1’29.199 J.レイ (カワサキ-ZX10RR) 1’29.413
2位 M.ビニャーレス (ヤマハ・YZR-M1) 1’29.509 L.ハスラム (カワサキ-ZX10RR) 1’29.624
3位 J.ザルコ (ヤマハ・YZR-M1) 1’29.705 A.バウテスタ (ドゥカティ・パニガーレV4R) 1’29.729
4位 A.イアンノーネ (スズキGSX-RR) 1’29.712 T.サイクス (BMW S1000RR) 1’29.822
5位 A.リンス(スズキGSX-RR) 1’30.026 A.ローズ (ヤマハ YZF-R1) 1’29.987

デスモセディチ・ストラダーレRエンジンは最大234馬力を発揮

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約1年前、ドゥカティはデスモセディチRR以来のV型4気筒エンジンを搭載した量産モデル、パニガーレV4をリリース。

最高出力は214hpという驚愕のスペックを達成しましたが、排気量が1,103ccのため、WSBKのレギュレーションに沿うものではなく、ホモロゲーションは今までの既存L型ツインを搭載したパニガーレRでした。

その後、去年の11月4日に行われた『ドゥカティワールドプレミア』で公開されたのが、今回紹介したパニガーレV4Rだったのです。

 


デスモセディチ・ストラダーレR / © 2017 DUCATI MOTOR HOLDING S.P.A.

エンジンはMotoGPマシンをルーツとした『デスモセディチ ストラダーレR』を採用。

MotoGPマシンと同じボア径でストロークを短縮させ、チタン製コンロッドはV4/Sに比較して100g、鍛造クランクシャフトは1100gの軽量化。

WSBKのレギュレーションを満たすために、排気量をパニガーレV4/Sから998ccまでスケールダウンしていますが、レブリミッターが1万6,500rpm(6速走行時)で作動する超高回転型のエンジンは、15,250rpmで221馬力を発揮します。

さらに、オプションで設定されているアクラポビッチ製レーシングエキゾーストを装着すれば、234馬力を発揮。

1,000ccスーパースポーツクラスでは、最もパワフルです。

それはカワサキ H2Rは除いたとしても、過給器を搭載しするカワサキ H2で231馬力(ラムエア加圧時で242馬力)であるため、それを上回っていることには驚かされます。

さらに、コンパクトなアルミ製のフロントフレームに変更され、フロントフォークを装着するステム付近には、切削加工によって大きな開口部が設けられています。

これにより、V4/Sよりも剛性が落とされているのではないかと思われますが、ドゥカティが設定した剛性目標と軽量化を実現した上で、エンジンパワーとうまくバランスが取られています。

 


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外装は、V4/Sに比べてスクリーンの角度を立ててノーズやフロントカウルの幅を広げ、フロントカウル側面に大きな開口部を設けてラジエーターやオイルクーラーの冷却力アップが図られました。

さらに、MotoGPマシンでお馴染みとなったウイングをV4Rにも採用。

カーボン製ウイングは、270km/hで最大30kgのダウンフォースを生み出します。

さらに、MotoGPマシン譲りのパワフルなマシンの挙動を抑えるための電子制御にも、抜かりはありません。

全部で9つの制御が介入し、ピットレーンの規定速度をホールドするためのピットリミッターも設定。

ハンドル右側にある『PIT』ボタンを押せば、速度制限に対応します。

電子制御システム一覧
ボッシュ製ABSコーナリングEVO

トラクションコントロールEVO(DTC EVO)、

スライドコントロール(DSC)

ウイリーコントロールEVO(DWC EVO)

パワーローチン(DPL)

クイックシフト・アップ/ダウン(DQS EVO)

エンジンブレーキ・コントロールEVO(EBC EVO)

ピットリミッター

ラップタイムEVO

スペック

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ドゥカティ・パニガーレV4R
全長×全幅×全高(mm) 未公開
ホイールベース(mm) 1,471
シート高(mm) 830
乾燥重量(kg) 172
タンク容量(ℓ) 16
エンジン種類 水冷4ストロークV型4気筒デスモドロミック4バルブ
総排気量(cc) 998
ボア×ストローク(mm) 81.0×48.4
圧縮比 14.0:1
最高出力(kW[hp]/rpm) 162[221]/15,250
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) 112[11.4]/11,500
トランスミッション 6速
タイヤ 120/70ZR17
200/60ZR17

まとめ

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パニガーレV4RはMotoGPマシンに近似し、172kgの車体に221馬力を発揮。

普通に公道を走れますが、パワーウェイトは驚異の0.77kg/hpを実現しているので、アクセルをむやみに開けることは絶対にできません。

サーキットユーザーであれば話は違いますが、週末のワイディングや高速道路メインのツーリングであれば、パニガーレV4や国産スーパースポーツバイクのほうが圧倒的に乗りやすいでしょう。

それでも「欲しい!」という欲望に駆られる魔性のモデル。

パニガーレV4Rは、2019年6月に発売予定で、価格は455万円。

以前に発売されたドゥカティ デスモセディチRR(866万2500円)やホンダRC213V-S(2190万円)に比べれば、案外お買得かもしれません。

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