レトロスポーツバイクとして、高い評価を得ているGBシリーズ。GB250クラブマンを筆頭にGB400TT/400TTMkⅡ、GB500TTも既に完成しつくされたカフェレーサースタイルのバイクです。外観のカッコよさだけでなく、運動性能はヤマハSR400を凌ぐほど。ビッグシングルスポーツバイクとしての高い戦闘力を持ち、生産終了が惜しまれるほど人気の高い名車です。

 

出典:http://moto.zombdrive.com/honda/honda-gb500-clubman/

 

レプリカブーム時代に逆行したモデルだったホンダ・GB400TT/GB500TT

 

ホンダ・GB500TT / © Honda Motor Co., Ltd.

 

1980年代のレーサーレプリカブーム全盛期は、パワーを1馬力でも上げれば売り上げに直結する時代でした。

しかし、このようなコストのかかるバイクばかりをメーカーとして製造するわけにはいかず、さまざまなジャンルのバイクでヒットモデルへの試行錯誤が続けられており、多くの珍車や迷車も生み出されていました。

例えばビッグスクーターブームが来る約10年前から、ホンダ フュージョンが販売されていましたが、発売当初はマイナー車扱い。

ヤマハ SR400のようなレトロスタイルモデルも、一部のライダーから支持されるのみで、今ほどメジャー車ではありませんでした。

そんな時代にホンダも新ジャンルを確立させるために、レトロスタイルのシングルスポーツGB250クラブマンを発売。

追従させるようにGB400TT・GB500TTを登場させました。

ちなみに、現在見られるバイクの形や作り方は、この時代に生み出されたバイクが基礎となっており、GB400/500もその中の一台といえるモデルです。

当時はマイナー車のまま生産終了となってしまいましたが、今となっては不思議な程の完成度の高さを誇ります。

 

ホンダ・GB400TT/500TTとは

 

ホンダ・GB400TT / © Honda Motor Co., Ltd.

 

ホンダ GB400TTとGB500TTは1985年6月19日に発売され、同年8月20日にはGB400TTをベースにロケットカウル型ハーフカウルとシングルシートを装着したGB400TT・MkⅡも登場しました。

TTとはツーリストトロフィーの略記で、本来モデルの呼び方は『ジービー400ツーリストトロフィー』と呼びます。

『TT』はマン島TTレースから引用され、ホンダからは『1960年代に英国で活躍したロードレース仕様(単気筒エンジン搭載)のスタイル』であると公表されています。

ちなみにマン島TTレースといえば、ホンダは1961年に初優勝を果たしています。

この時出場したマシン250ccクラスのRC162と、125ccクラスの2RC143でした。

250ccクラスのRC162は並列4気筒エンジンを搭載し、125ccクラスの2RC143は並列2気筒だったため、GBのような単気筒ではありません。

つまりGB400TT/500TTがモチーフとした”英国のロードレース仕様”というのは”ホンダがマン島TTへ持ち込んだマシン”の事ではなく、『ノートン マンクス』や『ベロセット  スラクストン ベノム』といった当時の英国車のことだったのです。

 

カフェレーサーが認知されない時代にメーカー製作した英国風ロードレーサー

 

エースカフェ / Photo by itsbruce

 

カフェレーサーは、1950年代後半に若者たちが改造したバイクで24時間営業のカフェに集まって、夜な夜なスピードを競い合ったことが起源とされています。

当時、マン島TTをはじめとするロードレースマシンを真似て、セパレートハンドル、細長くガソリン容量の多いビッグタンク、シングルシートを装着したバイクに、若者たちはゴーグル付きジェッドヘルメットに革ジャン、革パンできめてロンドンの北西にあったエースカフェへ集結。

のちに『ロッカーズ』または『ton-up boys』、『leather boys』といわれ、彼らが乗るバイクをカフェレーサーと呼ぶようになりました。

しかし、GB400/500のスタイルは純粋なカフェレーサースタイルですが、1980年代の日本市場ではカフェレーサーという言葉は知られておらず、ほとんどの消費者が英国風のロードレーサーを意識はしていませんでした。

そのためホンダはGB400/500を登場させた時、カタログにはモーターサイクルを知りつくしたグルメたちの要求に応えるモデルとしており、ビッグシングルエンジン独特のエンジン特性や乗り味を押し出して、大々的に英国ロードレーサーというのは強調していません。

とはいえ海外メーカーではイタリアのモトグッチが『850 Le Mans』、米国のハーレーダビッドソンが1978年に『XLCR1000 Cafe Racer』を発売し、すでにカフェレーサーバイクに注目が集まっていました。

そこでホンダ開発陣も、いずれはカフェレーサーブームが到来すると考えていましたが、GB400を登場させたときは4気筒全盛期で、大型二輪免許を取得していても500cc単気筒というのパッケージに魅力を感じる方は少数だったのです。

 

パワフルな単気筒エンジンにライダーをやる気にさせるセッティング


GB400/500はカフェレーサーを忠実に再現したスタイルと、シングルスポーツバイクとしての運動性能の高さを生かした車体設計となっています。

燃焼室形状(半球型)を4バルブで可変したRFVCエンジンは、GB500で40馬力を発揮。

GB400で34馬力を発揮するなど、ロングストロークの単気筒エンジンでありながらタコメーターがレッドゾーンまで一気に達し、トップエンドのパワーは当時のヤマハSR400を凌ぐほど。

オイル循環をドライサンプ化し、最低地上高を稼いだことでコーナー時に深いバンク角でハングオンでき、セパレートハンドルのタイトなポジションはライダーをやる気にさせるセッティングでした。

 

カスタムビルダーを熱くさせるベース車両

 

出典:https://thebikeshed.cc/

 

GB250も含め、GBシリーズはカスタムベースとして高い人気のあるバイクです。

特にGB500TTは海外のカスタムビルダーから熱く支持されており、さまざまなカスタムスタイルが公開されています。

絶版モデルのためカスタムパーツの数は少数ですが、海外ではいまだに新車が販売されており、ワンオフパーツを多数装着したカスタム車両は珍しくありません。

さらに、GB400/500のエンジンを市販レーサーのホンダ RS250に搭載してレースに出場するライダーも存在し、カスタムベースとしても高いポテンシャルを持っています。

 

ホンダ・GB400TT/400MkⅡ/500TTのスペック

 

左上:GB500TT、右上:GB400TT、左下:GB400TT MkⅡ / © Honda Motor Co., Ltd.

 

GB500TT GB400TT GB400MkⅡ
型式 PC16 NC20 NC20
全長×全幅×全高(mm) 2,100×690×1,060 2,100×690×1,215 2,100×690×1,400
軸間距離(mm) 1,405 1,400 1,400
シート高(mm) 775 780 780
乾燥重量(kg) 167 168 171
エンジン型式 PC16E NC20E NC20E
エンジン種類 空冷4ストローク単気筒OHC4バルブ 空冷4ストローク単気筒OHC4バルブ 空冷4ストローク単気筒OHC4バルブ
排気量(cc) 498 399 399
圧縮比 8.9 9.2 9.2
ボア×ストローク(mm) 92.0×75.0 84.0×72.0 84.0×72.0
最高出力(kW[P.S]/rpm) 29.4[40]/7,000 25.0[34]/7,500 25.0[34]/7,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm) 41.1[4.2]/5,500 33.3[3.4]/6,000 33.3[3.4]/6,000
ミッション 5速 5速 5速
タイヤサイズ 90×90-18 51S 90×90-18 51S 90×90-18 51S
110×90-18 61S 110×90-18 61S 110×90-18 61S
発売当時価格(円) 469,000 439,000 469,000

 

まとめ

 

出典:http://moto.zombdrive.com/honda/honda-gb500-clubman/

 

GBシリーズは、開発当初”CB”のモデル名を使用する予定だったのですが、時代に逆行したようなスタイルから最終的にCBの名を冠することは撤回され、英国車のイメージからグレートブリテンの頭文字、GBと命名されました。

現行車ではさまざまなカフェレーサーモデルが新車で販売されているにも関わらず、30年以上前に登場したGB400/500の販売期間はわずか3年。

現在では一部から「もし、今新車で販売されたら絶対売れる!」と言われるほど高く評価されているのですが、不遇にも時代を先取りしすぎたせいか、マイナー車の道をたどることに。

もし可能であれば、GB400/500が今、再び再販される事を願います。

 

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