『ホンダ CB400Four』通称「ヨンフォア」は、CB350Fourのあとを継ぐかたちで1974年にホンダから発売された、当時の同社最小4気筒エンジンを搭載したモーターサイクルです。今でも絶大な人気を誇る、ホンダが生み出した日本のモーターサイクル史に残る名機を、ここではオリジナル版である排気量408ccのモデルを中心にご紹介します。
ホンダ ドリームCB400four
399cc/408cc 1974~
最初は排気量が408ccだったがこれが出た頃に400cc以上が大型免許になるという改正があり、慌てて399ccに落としたという有名な逸話がある。当時は人気だったが400で直四はコストがかかるとして短命で終わる。今じゃ考えられない話だねhttps://t.co/ADfo4tuCnG pic.twitter.com/PDUR5SsJzQ— バイク紹介bot (@motercycle_RR) 2018年5月31日
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CB400Fourとは
ホンダの市販車の中で、最小排気量の4シリンダーモデルであったホンダCB350Fourは、CB750FourやCB550Fourに類似した重厚なデザインと4本出しマフラーを売りにしていましたが、大人しそうな外観とそれに見合った性能が災いして大きなヒットには繋がりませんでした。
そのため、1974年に後継として登場したホンダCB400Fourはガラリとスタイルを改め、コンチネンタルハンドル(コンチハン)や4-1式マフラー、バックステップなど、ヨーロッパのカフェレーサー風デザインを取り入れることで、それまで日本にはなかった画期的なデザインとして大きな拍手を持って受け入れられていくことになります。
これがどれほど画期的なデザインであったかと言うと、当時はコンチハンを付けているだけで警官に呼び止められ、悪くすると暴走族扱いされ反則切符を切られた時代。
スズキのGSX750Sカタナでも、クリップオンハンドルが発売当初には認可されなかったことはご存知のかたも多いでしょう。
そんな既成概念をぶち破ってくれたCB400Fourの、今でも続く人気はここに始まりました。
免許制度の変容とスケールダウン
発売当初は排気量408ccという今では不思議に思える排気量で発売されたCB400Fourですが、これは当時、社会問題にまでなっていた暴走族対策のために取り入れられたとも言われる免許区分・排気量区分が発売当初には存在していなかったためでした。
ところがその後、1975年には前述の運転免許制度改正により『中型二輪は400ccまで。401cc以上は大型二輪免許が必要』となり、それに合わせるように各社から中型免許保持者向けの400ccモデルが生まれていったのです。
この制度改正に対応するためにホンダは、CB400Fourの排気量を408ccから398ccへとショートストローク化することでスケールダウンしました。
この変更でストロークは50mmから48.8mmへ、最高出力は37ps/8,500rpmから36ps/8,500rpmへと変更になりました。
ちなみに、ちょっとしたトリビアですが、408ccと398ccの簡単な見分け方は、サイドカバーの色とタンデムステップです。
408㏄モデルはサイドカバーの色がタンクと同色で、398㏄では黒色。
408㏄モデルはタンデムステップがスイングアーム直付けで、398㏄はフレームステーにマウントとなっています。
CB400Fourの魅力
今や伝説的人気のCB400Fourですが、その魅力は一言で片付けることはできません。
簡単ですが、ここでその魅力の一端を覗いてみましょう。
CB350Four無き後のホンダ最小排気量マルチ
1980年代の一大バイクブームのころとは違い、CB400Fourの発売当時は国内4メーカーから250マルチシリンダーエンジンのモーターサイクルが発売されていた時代ではありませんでした。
制度改正により中型免許しか所持できないライダーにとって、CB750FourやZ750RS(いわゆる”ゼッツー”)のマルチシリンダーは憧れの的だったのです。
そのような時代背景の中、カフェスタイルと上位兄弟車たちに負けないマルチシリンダー・サウンドを身にまとって登場したCB400Fourは、絶対的な速さこそ2サイクルエンジンを搭載する軽量・ハイパワーなライバルたちに及ばなかったものの、中型免許で乗れるマルチシリンダーマシンとして多くのユーザーを魅。
そして以後、CB400Fourはその正式名称よりも『ヨンフォア』の愛称で呼ばれることになっていきます。
斬新なカフェスタイル
下記ライバルたちの画像と比べれば一目瞭然ですが、当時はスポーツモデルといえども基本はアップハンドルと比較的前寄りのステップが搭載されていました。
コンチハンとバックステップは雑誌の中に存在する高価なヨーロッパ車だけのもの。
そんな常識を覆したヨンフォアのスタイルが、ユーザーを魅了しないはずはありません。
21世紀の今においても美しいと感じさせる端正でオートバイらしいデザインは、現在販売されているヨーロピアンタイプのモーターサイクルのデザイン的基礎とも言うべきもので、その影響の大きさは計り知れないものがあります。
・国産車のデザインとしてヨーロピアンスタイルを確立させたこと。
・中型免許という日本独自の制度の中で400ccマルチシリンダーエンジンが搭載されたこと。
これらを考えると、1979年に発売されるや一大人気となったカワサキZ400FXも、そこから新たに始まる各社の400ccマルチシリンダーモデルの歴史も、すべてヨンフォアから始まったと言っても過言ではないでしょう。
日本のモーターサイクルデザインは、”ヨンフォア前”と”ヨンフォア後”で大きく変わっていきました。
ヨシムラ集合管のブレークと相乗効果
また、ヨンフォア人気を決定づけたものの一つに、ヨシムラが発売した集合管(通称:ショート管)を忘れることはできません。
すでにCB750FourやZ2用に発売されていたヨシムラの集合管は、それまでのマルチシリンダーエンジンとは全く違うレーシーな音色を奏で、しかも「付けるだけで速くなる。」と言われた、いわば魔法のアイテムでもありました。
『ヨンフォア+ヨシムラ』というスタイルは今でこそカスタマイズの定番と言われて久しいですが、当時は時代の最先端をいくチューニングスタイルでもあったわけです。
ノーマルの集合管は超静か
そのサウンドでユーザーを魅了し、ヨンフォアカスタムの定番ともなったヨシムラの集合管ですが、では、ノーマルのマフラーはどうだったのでしょう。
これはその頃に筆者が実際に耳にした話ですが、当時のトラックドライバーにはこんな事を言う人もいました。
「ホンダの新しいバイク、ヨンフォアっての? あれは怖いよ。全然音がしなくて、気がつくとすぐ横にいるんだもん。」
今ほどモーターサイクルの音量規制が厳しくなかった時代、トラックドライバーはその音で近づくモーターサイクルを感じたそうですが、ヨンフォアは当時としては飛び抜けて排気音が小さかったために全く気がつかない場合が多々あったそうです。
乗用車にエアコンがまだ多くは普及していなかった時代なので、窓全開のトラックやダンプカーの運転席は騒音のルツボ。
静かすぎるヨンフォアの音は、彼らの耳には届かなかったようでした。
当時のライバル
ヨンフォアが販売されていた時期のライバルたちも知っておきましょう。
各メーカーそれぞれに個性的なマシンがありました。
それぞれに筆者が昔乗った時の印象を元に寸評を入れておきます。
RD350:攻守にバランスの取れた2st.優等生
GT380:3発だけど4本出し 信頼のエンジン
350SS:刹那的速さこそがすべてに優先
まだホンダ以外のメーカーは2サイクルがメインで、のちにアメリカで環境問題が大きく取り上げられる(マスキー法の施行)まで、ライバルたちは2サイクルエンジンを熟成させていくことに力を入れていました。
CB400Four スペック
CB400Four(408cc) | |
全長×全幅×全高(mm) | 2,050×705×1,040 |
軸間距離(mm) | 1,355 |
乾燥重量(kg) | 185 |
車両重量(Kg) | 202(概算値) |
エンジン種類 | 空冷4サイクル並列4気筒2バルブ |
ボア×ストローク(mm) | 51.0×50.0 (408cc) |
圧縮比 | 9.4:1 |
燃料供給装置 | キャブレター |
最高出力(ps/rpm) | 37/8,500 |
最大トルク(kgm/rpm) | 3.2/7,500 |
トランスミッション | 常時噛合式6段リターン |
始動方式 | セルフスターター・キック併用 |
駆動方式 | チェーンドライブ |
燃料タンク容量(L) | 14 |
ブレーキ形式 Fr. | 油圧式シングルディスクブレーキ |
ブレーキ形式 Rr. | 機械式リーディングトレーリング |
タイヤサイズ Fr. | 3.00S18-4PR W/T |
タイヤサイズ Rr. | 3.50S18-4PR W/T |
発売当時価格(万円) | 32.7 |
CB400Fourの中古車相場
当時でも比較的割高な印象があったヨンフォアの中古車ですが、この金額には目が眩みます。
それでも、これを手に入れることができた幸運なオーナーが末永く可愛がってくださるなら、これほど嬉しいことはありません。
¥958,000~¥2,980,000~ask |
– goo調べ 2018年5月現在 – |
まとめ
いかがでしたか。
駆け足でCB400Four=ヨンフォアをご紹介してきましたが、歴史に名を残すこのモーターサイクルは今あるスポーツバイクにとっての、メーカーの枠を超えた”ご先祖様”とも言える存在。
今や希少モデルとなっているヨンフォアですが、あなたが、もしもどこかでCB400Four=ヨンフォアを見かけたときに、この記事を思い出していただけたなら幸いです。
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