台湾のバイクメーカー、キムコが新型モデル『スーパーNEX』を発表しました。注目すべきは100%電気で走る電動バイクと6速マニュアルトランスミッションの組み合わせ。ガソリンエンジン搭載モデルと同等の操る楽しさを追求した、電動バイクの新時代を切り開く1台です。

 

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エネジカル・エゴに新たな刺客!ハイパフォーマンス電動SSバイク キムコ・スーパーNEX発表

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近年、バイクレースにおいてマン島TTで電動バイクでタイムを競い合う『TT Zeroクラス』がスタートしたり、MotoGPと『MotoE』が併催となるなど、電動バイク競技の黎明期を迎えました。

そしてこれまでも電動スクーターはいくつか販売されてきましたが、さらに電動SS(スーパースポーツ)バイクのエネルジカ モーター カンパニー製『エネルジカ・エゴ』が発売されるなど、EVバイクの最高速や航続距離は通常のガソリンバイクに匹敵するレベルにまで進化しています。

さらに台湾のスクーターメーカー・キムコ(KYMCO)からも、電動SSバイク『スーパーNEX』が発表され、電動バイク市場に新たなニューウェーブがやってきました。

 

キムコ・スーパーNEXとは

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キムコは2018年11月10日(木)に開催されたEICMA2018(ミラノショー)でコンセプトモデル『スーパーNEX』を世界初公開。

これは、全く事前情報が公開されず、キムコがシークレットで進めてきたサプライズ発表で、会場ではキムコのアレン・コウ会長自らスーパーNEXを熱く紹介し、キムコの本気がまじまじと伝わってくるプレゼンテーションを披露しました。

 

キムコ会長が直々にプレゼン!電動バイクを楽しむ提案とは

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アレン・コウ会長はプレゼンテーションの中で、電気バイクの時代へ突入することで、マニュアルミッションが消え、スポーツバイクとして走りを楽しむ要素が失われることを危惧しました。

そして、世のライダーがスーパースポーツに求めるのは以下5つの要素であるとし、それを実現する電動バイクを提案します。

・ギアシフトはバイクを操るうえでの真髄である。
・ライダーの意のままに加速できること。
・限界を模索する中で興奮を感じられること。
・音はマシンの声である。
・優れた乗り物はライダーのあらゆるシーンを盛り上げる。

引用:https://www.kymco.com/news/kymco-introduces-at-eicma-2018-supernex-electric-supersport-motorcycle

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通常、電動モーターは低中回転域で高いトルクを発する特性を持っているので、シングルギアタイプのEVスポーツが大半なのですが、モーターが全回転域で常にフラットなパワーを出してくれるわけではありません。

しかも、大半のSSバイクに搭載されるガソリンエンジンは高回転域でピークパワーに達する一方、モーターは回転数の中域でピークパワーを迎え、その後パワーが低下していく特性を持っています。

そのためシフト操作なしで高回転域で最高速に達することができても、パワー不足であればライダーが操る楽しさに欠けてしまうのです。

そこで、キムコは高速ライディングでもモーターの最適なパワーバンドを保てるように、スーパーNEXに6速トランスミッションを搭載。

とはいえキムコとしてはバイクのポテンシャルを引き上げるというより、ライダーが乗っていて楽しいと感じられるための6速ミッションという意味合いが強いようです。

シフト操作はバイクを操る快感を得るために重要な行為であるとキムコは考えており、スーパーNEXにはMotoGPや最近のSSバイクに搭載されているシームレストランスミッションを採用したのです。

そのため、クラッチレバーを握らなくてもシフトアップ/ダウンが行え、強力な回生ブレーキがかからないように、スリッパークラッチまで搭載されました。

 

他のスーパースポーツバイクや電動バイクと比較

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スーパーNEXの最高速は250km/hにも達し、しかもゼロスタートから250km/hまでの到達時間は10.9秒。

到達速度ごとにみても、0-100km/hで2.9秒、0-200km/hで7.5秒と凄まじい加速性能を誇ります。

ちなみに、最も近いライバルとされるエネルジカ・エゴが0-60マイル(約96.5km/h)で約3秒といわれており、それを凌ぐ勢いです。

これは、カワサキ H2が0-100km/h加速で3.0秒を記録するので、H2と同じ動力性能とも言え、SSバイクとしては申し分ない加速性能と最高速を実現させたキムコの技術力に驚かされました。

エネルジカ・エゴとスーパーNEXがサーキットでガチンコ勝負をしたら、いったいどちらが速いのでしょうか?

 

キムコが提唱する官能的なモーター音とは

アレン・コウ会長が言及したように、バイクのエンジン音はその魅力を図る一つの指標です。

しかし、モーターになればガソリンと空気の混合気が爆発する音やマフラーから出される排気音は皆無。

聞こえるのはエンジンより圧倒的に静かなモーター音だけです。

ライダーにとっての一つの魅力が減ることで、電動バイクに惹かれなくなるライダーもいるかもしれません。

しかし、スーパーテックではモーターの音を官能的なものにするために、マルチ周波数音響ジェネレーターが装備されているのです。

回転数が上がるにつれて『キューーン』とモーター独特のサウンドが巻き起こり、ライダーがバイクを操る意欲を喚起させてくれるカンフル剤になってくれます。

まだバイクでは、聞きなれない音かもしれませんが、これもこれで電動バイクの魅力の一つではないでしょうか。

 

まとめ

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スーパーNEXはコンセプトモデルなので、公開されている内容は限りなく少なく、航続距離や実際に市販するのかさえも明確ではありません。

ただ、今回の発表が世界の二輪市場で非常に注目され、コンセプトモデルでありながら高い完成度だったことから、市販化を有力視しても良いでしょう。

さらにキムコは電動バイクのための充電インフラ整備を進め、Ionex(アイオネックス)と呼ばれるバッテリー充電ステーションの設置を進めています。

これは街中のバッテリースタンドで充電済みのバッテリーと使用済みのバッテリーを差し替える事ができ、充電の手間を無くすものです。

また、もちろんバッテリーは家庭でも充電も可能となっています。

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差し替える着脱式バッテリーは、バイクに搭載されている『コアバッテリー』を常にフル充電の状態に保つような設計がなされています。

そしてキムコは既に、Ionexに対応したEVスクーター『New Many 110』と『Nice 100 EV』を発表。

スーパーNEXが市販化すれば、Ionex用の着脱式バッテリーに適応させることも考えられ、キムコは独自路線で電動バイクのシェアを広げていこうと戦略を立てていることは明確です。

一方、日本メーカーはどうでしょう。

これだけ海外メーカーが電動バイクを次々と発表しているのにも関わらず、日本メーカーはまだ様子見状態。

これでは、多くの日本メーカーが電気自動車同様に海外メーカーより電動バイク開発で遅れをとる恐れがあります。

そう考えるとスーパーNEXをはじめとする電動バイク/スクーターを展開していくキムコが、日本メーカーのシェアをじりじりと奪っていくのは時間の問題かもしれません。

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