『クルマ』という乗り物は、日常生活の中ではただの移動手段のひとつに過ぎないかもしれません。それが、休日になればドライブという名のもとで、目的地へ向けて心ときめく乗り物に生まれ変わるから不思議です。今回は、京都府京丹波町にある木造校舎内で営業する『Pandozo Cafe(パンドーゾカフェ)』にドライブの途中で立ち寄って、懐かしい『あの頃』へタイムスリップ気分を味わってきました。

丘の上にたたずむ『旧質美小学校』内にあるパンドーゾカフェ。Photo by TEIJI KURIHARA

木造校舎内のイタリアンカフェ

小学校の校門を抜けた瞬間に誰もが『あの頃』へタイムスリップした気分になる。 Photo by TEIJI KURIHARA

今回紹介する『Pandozo Cafe』(以下:パンドーゾカフェ)は、平成23年3月に閉校となった京丹波町立旧質美小学校のレトロな木造校舎を再利用した教室で営業する、イタリアン・カフェレストランです。

生徒数の減少により閉校となった学校を、地域の交流施設などとして再利用する試みが、全国各地で行なわれていますが、パンドーゾカフェがテナントをかまえる旧質美小学校も、そんなリノベーション施設のひとつです。

丘の上に建つ小学校の、登り坂となっている校門を通り抜けて運動場にクルマを停めると、目に入ってくるのは『鉄棒』や『朝礼台』。

趣のある『下駄箱』から、木造校舎の雰囲気が残されたまま長い廊下を抜ける頃には、どこか懐かしい雰囲気に、気持ちが徐々に落ち着いてくるから不思議です。

長い廊下の突き当たりにあるパンドーゾカフェがある教室手前には『図工室』のプレートが残る。 Photo by TEIJI KURIHARA

下駄箱でスリッパに履き替えた東側にある校舎から、渡り廊下を通り抜けた先の『西側校舎』のほぼ突き当たりに、パンドーゾカフェが入っている教室はありました。

小学生にもどった様な気持ちになり、入り口となる木造の扉を開けて懐かしい空間へと踏み込めば、目の前にはあの頃の『給食の時間』が広がっています。

そんな私達大人にとっては非日常となってしまった空間で、オーナーの細見 健さん(以下:オーナー)に、お店の生い立ちやこだわりのメニューなど、パンドーゾカフェにまつわる興味深いお話を伺ってきました。

パン屋さんからイタリアンカフェへ

非日常的な空間を楽しみながら『給食イタリアン』を頂くことができる。 Photo by TEIJI KURIHARA

数年前、会社を退職後し、パン職人の経験がある奥様と一緒に、現在とは違う場所(南丹市園部)でパン屋さんを経営していたというオーナー。

当時、店舗販売で1日10個しか売れなかったこだわりのパンが、道の駅に出品してみると10倍以上売れたという『驚きの経験』がもととなり、『もっと人が集まる別の場所』での営業を模索し始めたのだといいます。

そんなある日、旧質美小学校内にある有名な絵本屋さん(えほんちゃん)にサンドウィッチを納品していたことが縁で、現在の木造校舎内にあるテナント(教室)を知ったのだそうです。

その後、テナントが入る予定の教室に土間があったことから、厨房へのリノベーションが可能だということを知り、パン屋と同じ生地を使った『ピザ』なら調理できるのでは?という気持ちなどからイタリアンカフェへの発想が、徐々に生まれていったのだといいます。

懐かしの黒ファイルの表紙には『献立表』の文字が・・・  Photo by TEIJI KURIHARA

そんな『縁やきっかけ』から、2014年4月に現在の場所で釜焼きピッツアや生パスタのカフェをオープンしたというオーナーは、話をしてみれば実はクルマ好きという一面を持ち合わせていました。

そこで、インタビュー中に偶然伺った、オーナーの『ドライブと食』にまつわるエピソードを、ここでひとつ紹介させて戴きます。

クルマ好きが興じて、一時期『ポルシェ』を所有してオーナーズクラブの理事を務めていたというオーナー。

当時の理事の仕事は、もっぱら定例ドライブの『目的地選び』で、周辺の観光スポット探しはもちろん、一番苦労したのはレストランやカフェの下見だったと、当時を振り返ります。

『余裕のある駐車スペース』、『料理のクオリティ』から『待ち時間の過ごし方』はもちろん「ああっ、こんなお店楽しいよね」という意外なところにある意外なお店が美味しかったりすると合格点をつけ、後日、メンバーで訪れて楽しんでいたそうです。

そんな、オーナーズクラブ時代の経験が、現在は逆の立場となったオーナー自身の『パンドーゾカフェ』に対するおもてなしのポイントになっているのかもしれません。

木造校舎の雰囲気を壊さない、木製のモダンな机や椅子をセレクトした空間演出や、ピザの生地やトッピングなど、常にブラッシュアップして食材を変えているという話から、『パンドーゾカフェ』に対するオーナーの気持ちが伝わってきます。

リノベーション教室で食べるイタリアン

当時のままの黒板には、メニューがチョークで描かれている。      Photo by TEIJI KURIHARA

パンドーゾカフェでは、丹波の天然水や自然に恵まれている地元で採れる野菜やキノコなど、良質な地元食材が目立ちます。

イタリア産のモッツァレラチーズを仕入れてピッツアメニューに使ってみたり、オーナーの食材に対するこだわりを垣間見ることができるオリジナルメニューを紹介します。

パンドーゾカフェ・オリジナルメニュー

マルゲリータ エクストラ

マルゲリータ エクストラ       Photo by TEIJI KURIHARA

ナポリピッツアの定番メニューでトマトソースの赤、モッツァレラチーズ(イタリア産)の白、バジルの緑で見た目もイタリアンに仕上がっています。

クリマメフォルマッジ

クリマメフォルマッジ                 Photo by TEIJI KURIHARA

濃厚なゴルゴンゾーラチーズの上に、地元京丹波産の丹波栗と黒豆(丹波黒)をトッピングしたオリジナル・ピッツア。

出来たてをいただくのも美味しいのですが、冷めると甘さが落ち着いて味わい深くなるのでテイクアウトにもお薦めの一品です。

富士山の溶岩石で造られているというパンドーゾカフェの本格的なピッツア窯             Photo by TEIJI KURIHARA

パンドーゾカフェのオリジナルピッツアは、溶岩石製のピッツア窯によって400℃以上の高温で、一気に焼き上げられます。

生地は元パン職人であるオーナーの奥様が毎日の天候に合わせて調整し、その後、低温で熟成させたものが使われています。

キノコの山

キノコの山             Photo by TEIJI KURIHARA

地元京丹波産の『大黒本しめじ』や、イタリアの松茸と言われている『ポルチーニ茸』など、4種類のキノコをふんだんに使用した、キノコ好きにはたまらない人気のパスタです。

その他、ソフトドリンクやデザート類など、サイドメニューも充実していて、懐かしい雰囲気の中、ゆったりとした時間を過ごすことが出来ました。

窯焼きピッツア&生パスタ Pandozo Cafe(パンドーゾカフェ)

〒622-0332 京都府京丹波町質美上野43 旧質美小学校内  TEL 0771-87-9015

営業時間 ランチ11:00~17:00(16:30 ラストオーダー) ディナー:予約制

定休日 :月曜日、水曜日

*詳しくは、ホームページをご確認ください。

ホームページ:http://www.pandozo.com/#menu

新しい時代のおもてなし

店舗入り口部分にはアルコール消毒液とマスクをするウリボウが・・・        Photo by TEIJI KURIHARA

2020年、日本を含め世界は、COVID-19への対応という、ある意味『新しい時代』に突入してしまいました。

そんな中、パンドーゾカフェでは、おもてなしの気持ちで積極的な対応をすでに行なっています。

店舗入り口にアルコール消毒液を設置したり、テーブル席の間隔を開けてソーシャルディスタンスを保つことはもちろん、天井部分には最新型の『高機能換気システム』を新たに導入。

『高機能換気システム』は窓を開けること無く新鮮な外気をフィルターを通して取り入れ、1時間に数回、自動的に室内に循環した空気を排出してくれる構造となっていて、これからの時代に合わせた安心のシステムです。

パンドーゾカフェの入る教室の中庭部分。『テラス席』と突き当たりにはミニドッグランスペースも誕生する。 Photo by TEIJI KURIHARA

さらに、2020年の8月には、店舗のある校舎の中庭部分に新たに『テラス席』を2つ増設することが決まっています。

もちろん、COVID-19対策という一面もありますが、「犬と一緒に食事を楽しみたい」という愛犬家や、「ブーツを脱ぐのが大変!」というツーリングライダー達の声に応えるかたちから誕生する、いわばおもてなしの『テラス席』なのだそうです。

尚、入店時に待ち時間が生じる場合は、受付で連絡先を記入すれば直接呼び出しをしてくれるそうで、絵本屋さん(えほんちゃん)やその他のテナントが入る教室で、時間がくるまでゆっくりと過ごすことも可能です。

まとめ

木造校舎内は、懐かしい雰囲気の中で自分を見つめ直すことが出来る。                  Photo by TEIJI KURIHARA

ソーシャルディスタンスの時代を迎え、『クルマ』という移動手段が、再び見直され始めてきています。

一方、少子化問題から小中学校の統合も増え続け、廃校となった校舎をリノベーションして、地域の魅力的な交流施設として再スタートさせた成功例が全国的にも報道されています。

そんな今だからこそ、懐かしい雰囲気の場所へとドライブに出かけ、自分を見つめ直しながらタイムスリップした気分を味わうのも良いのではないでしょうか?

リノベーションされた木造校舎で、少年時代に戻った気持ちになって「非日常的な空間を皆さんに楽しんでもらいたい。」

そんなおもてなしの気持ちを語るオーナーの夢は、いつの日か旧質美小学校全体が京丹波町を代表する様な観光スポットへと成長してくれることだと、最後に語ってくれました。

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