日本国内では2002年9月をもってSUVの販売からも撤退、以後はトラックやバスを除き、OEM供給を受ける商用車、あるいは商用車ベースの乗用車(コモワゴン)を細々と販売するのみとなったいすゞ自動車ですが、海外でのSUVやピックアップトラックの販売は続けられていました。そして、日本市場での販売を念頭に置きつつ叶わなかったSUV、アクシオムも海外のみで販売された1台です。
掲載日:2018/12/12
残念!ファンの希望も叶わなかった…いすゞの北米専売SUV、アクシオム
1993年、3代目ジェミニの生産・販売終了により日本市場における乗用車販売から撤退したいすゞ自動車ですが、ビッグホーンやミュー、ロデオなどSUVやピックアップトラックの販売はまだ続けていました。
むしろSUVに注力することで活路を見出すかのように東京モーターショーへのコンセプトカー出展も積極的に行い、1997年に初公開されたのがザッカーです。
ショートボディSUVのミューをベースに観音開き後席ドアを持つ変則5ドアSUVで、フロントマスクは既に後のアクシオムと似たような顔つきとなっています。
この時点では同年発売されたビークロスと同じような、尖ったデザインで遊び心ある少量生産のセミハンドメイドなパイクカー的SUVとして企画されていました。
しかし、コンパクトカーならともかくある程度高価、かつユーザーの限られた本格SUVでパイクカー路線を目指しても需要が無いのはビークロスの例を見ても明らかで、マニア向けからより普遍的な商品展開への転換を図ります。
そして1999年の東京モーターショーに出展されたZXSは、ロングボディの5ドアSUV化。
ヘビーデューティー向きのビッグホーンやウィザードに対して、都会的な雰囲気を感じるデザインのSUVとなりました。
また、パワートレインはビッグホーンそのもので、3.5リッターV6ガソリンエンジン6VE1に4ATを組み合わせた『TOD』(トルク・オン・デマンド)4WD車でしたが、デザイン上はクロスオーバーSUV的な性格の車だったと言えます。
いすゞファンやメディアから日本での市販化要望も多かったのですが、結局北米専用車『アクシオム』として2001年にデビューし、2002年に日本国内でのSUV販売撤退により、アクシオムが日本で正規販売されることはありませんでした。
北米で最後まで可能性を追求し続けた、いすゞ最後の純SUV
このアクシオムを最後に純SUVの独自開発を終了(以降のSUVはピックアップトラックがベース)。
さらに乗用車用ガソリンエンジンの独自開発も6VE1の直噴化(2003年)で最後となるなど、いすゞにとってはひとつの区切りとなった車でもあります。
とはいえ、最後まで可能性を追求する努力は怠らずにアクシオムでも数々のコンセプトカーを出展。
第1弾は2001年に北米のSEMAショーに出展されたアクシオムXSFでした。
これは内外装をカスタムしてサスペンションも固めた『ストリートスポーツ仕様アクシオム』と呼ぶべきモデルでしたが、さらに矢継ぎ早にアクシオムベースのコンセプトカーを出展します。
そしてデトロイトオートショー2002には前述のXSFを含めた3台のアクシオムベース コンセプトカーを出展。
アクシオムXSRはビークロスをベースとしたVX-O2(1999年)同様、2シーターオープンSUVでした。
さらにSUT(スポーツ ユーティリティ トラック)化したアクシオムXSTも出展。
短いながらも荷台を持つダブルキャブ ピックアップトラックがアクシオムXSTで、後席直後でスパンと切り落とされたキャビン形状から後席の居住性が心配ですが、それでも荷台が短すぎるのではと思わされます。
しかし荷台とキャビンは繋がっており、必要に応じて後席を倒せば長尺物をキャビンに押し込むことも可能、かつ後アオリを倒してガードを装着すれば、さらに荷台を拡張することもできるなど、なかなか考えた作りになっています。
これら3台のコンセプトカーはいずれも市販に至らなかった、あるいは市販以前にアクシオムが販売終了(2005年)してしまたことが惜しまれます。
結局アクシオムの改良は2003年夏(2004年モデル)で内外装の変更と、エンジンの直噴化にとどまりました。
主なスペックと中古車相場
いすゞ UPS26FW アクシオム XS 2004年式
全長×全幅×全高(mm):4,640×1,795×1,705
ホイールベース(mm):2,700
車両重量(kg):1,860
エンジン仕様・型式:6VE1 水冷V型6気筒DOHC24バルブ直噴
総排気量(cc):3,494
最高出力:43kw(250ps)/5,600rpm
最大トルク:108N・m(34.0kgm)/3,000rpm
トランスミッション:4AT
駆動方式:4WD
中古車相場:皆無
まとめ
アクシオムは今見てもなかなかにスタイリッシュなSUVでしたが、中身はビッグホーンなのでサイズの割に少々車重がかさむのがタマに傷です。
これはビークロスにも言えたことでしたが、仮にジェミニの独自生産を終了せず熟成させ、FF乗用車ベースのクロスオーバーSUVとして世に出ていれば、世界的なSUVブームに乗るのも不可能では無かったのでは、と思います。
現在数多くのクロスオーバーSUVが世界中でコンパクトカーから高級車まで人気になっているのを見ると、デザインや発想が先進的だったいすゞがその中に加わること無く、東南アジア製SUVやピックアップトラックメーカーに甘んじているのは、惜しいことです。
なお、並行輸入でアクシオムを購入、日本で走らせている例もありますが、オーディオスペースなどが日本のDINサイズと異なる点などは注意した方がいいでしょう。
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