初代、2代目と代を重ねたアルトワークスは、3代目でついに傑作エンジン「K6A」を得て、旧規格軽自動車時代最後の、そして最強マシンとしての座を手に入れます。特にダートトライアルやラリーで活躍したDOHC4WDターボ版のHB21Sは、もはやライバル軽ホットハッチでは対抗できない、無敵とも言える領域へ到達したのでした。

掲載日:2019/01/23

スズキ HB21S アルトワークスR(後期・ダートトライアルSC車両)  / 出典:http://mos.dunlop.co.jp/archives/dirttrial/race-data/report_dirttrial_8_20081012.html

 

 

旧規格軽自動車の質感が向上、価値観の多様化が始まった時代

 

スズキ HB21S アルトワークスR(後期型)  / 出典:http://monster-sport.com/alto/episode3.html

 

660cc化された当初、一部モデルチェンジを行った車種を除けば、550cc時代末期に開発された車種の660ccエンジン換装+マイナーチェンジで乗り切った旧規格軽自動車ですが、次第に660cc時代に最初から対応したモデルが登場します。

660cc時代初期を第1世代とすれば、1.5世代とも言えるスバル ヴィヴィオとダイハツ オプティが1992年に新型車として登場、翌年には初の第2世代旧規格660cc軽自動車として三菱 ミニカがモデルチェンジしました。

そして販売台数上位を争う両雄、スズキ アルトとダイハツ ミラは1994年に揃ってモデルチェンジし、ここに軽自動車メーカー各社の軽乗用車は全て660cc第2世代軽自動車となりました。

アルトワークスもアルトと同時にモデルチェンジをしましたが、まだボディサイズが小さく軽い上に新型エンジンの搭載で戦闘力を増し、競技では長らく主力マシンの1台として活躍することになります。

ただし、性能とバランスで歴代モデルの頂点に立った3代目アルトワークスでしたが、軽自動車には新しい時代が到来していたのです。

それが新型トールワゴンのスズキ ワゴンRとその後登場したダイハツ ムーヴ、いずれも初代モデルでした。

軽自動車サイズで極限までスペース効率を追求したスタイルというコンセプトは、三菱 ミニカトッポが先行していましたが、フロントマスクがミニカそのものだったミニカトッポと異なり、ブランニューモデルのインパクトは強く、瞬く間に市場を席捲していきます。

こうしてトールワゴン、5ドアモデルが売れ筋となっていく軽自動車の中で、「3ドアのホットハッチ」も主役でいられた時代の最後のアルトワークスが3代目だったのです。

 

スタイルやメカニズムはキープコンセプト、目玉は新型の名機K6A!

 

スズキ HB21S アルトワークスR(前期型)  / 出典:http://monster-sport.com/alto/episode3.html

 

4代目アルトが先代に比べて、ややふくよかになりつつもキープコンセプトだったのと同様、これをベースに同時にモデルチェンジした3代目アルトワークスも丸目2灯ヘッドライトをトレードマークとしたデザインは不変です。

細かい点で見ればフロントグリル開口部が左半分のみだった先代に対し、横一面に大型化して冷却効率を向上、フォグランプもウィンカー一体式の角型2灯から、ウィンカー別体の丸目4灯に変更されているものの、基本的な配置(フロントバンパー左右)は変わっていません。

そして2トーンカラーが不変なこともあり、慣れない人が見れば遠目で2代目と3代目の識別は難しそうです。

ただし、競技ベースモデルのアルトワークスRだけは専用の大型インタークーラーおよび専用大型エアスクープが装備され、外観上も大きく差別化されています。

そして何より目玉となるのが550cc時代から排気量を拡大されて使われてきたF型3気筒エンジンF6Aに代わり、DOHCエンジン搭載のRS系 / ワークスRでは新型3気筒エンジンK6Aを採用。

F6Aよりビックボア・ショートストロークで軽快に吹け上がりつつ低速からもモリモリとトルクにあふれるK6Aは、ダイハツがミラ・アヴァンツァートR系 / X系で採用した高回転型4気筒エンジン、JB-JLとどちらが勝るかデビュー当時は話題になりました。

なお、3代目アルトワークスには「スズキスポーツリミテッド」というスズキスポーツデカールがあしらわれた特別仕様車がありましたが、その名とは裏腹に中身はSOHCのF6Aターボを搭載したワークスie/sであり、特にスポーツ仕様ではないので注意が必要です。

 

ダートラにラリーにと活躍、宿敵ダイハツに大きな壁として立ちふさがる

 

スズキ HB21S アルトワークスR(前期型) /  出典:http://monster-sport.com/alto/episode3.html

 

3代目アルトワークスのモータースポーツ活動と言えば、1996年まで開催数を減らしながらも初代以来続いていたワンメイクレース「アルトワークスカップ」がまず第一。

しかし、メインとなったのは全日本ダートトライアル選手権A1クラスと全日本ラリー4輪駆動部門Aクラス。

かつてはこれらのカテゴリーでライバルの後塵を拝したこともあったものの、軽量ボディにパワフルなK6Aエンジンを組み込んだ3代目アルトワークスRはまさに無敵状態。

有力なライバルとされたダイハツ ミラX4を両カテゴリーで全く寄せ付けない速さを見せて、「アルトワークス黄金時代」を作り上げます。

そして1998年にダイハツが、なりふり構わず713ccターボのコンパクトカー、ストーリアX4を投入して以降も、スズキスポーツによるワークス体制が取られている間は、カタログスペック120馬力のモンスターマシンを相手に一歩も引かない活躍を見せました。

ストーリアX4は確かにスペック上はアルトワークスRを上回っていたものの、超高回転型エンジンでピーキーなため扱いが難しく、ミッションなど機械的信頼性もあって、総合的な戦力ではアルトワークスRに分があったと言えます。

とはいえ1998年にアルトワークスも新規格の4代目以降、大きく重くなってダートトライアルでは使われず、ラリーでもスズキスポーツ撤退(JWRCに専念)により、次第にダイハツの独壇場となっていきました。

しかし、その後も3代目アルトワークスRを好むプライベーターは数多く、2007年には全日本ダートトライアル第1戦でプライベーター・故 小川 静夫 選手(2014年3月逝去)のアルトワークスRがなんとブーンX4やストーリアX4を打ち破り優勝!

3代目アルトワークスRは、ナンバー付き車両のクラスでは全日本選手権最後の勝利を手にしています。

 

スズキ 3代目アルトワークス 代表的なスペックと中古車相場

 

スズキ HB21S アルトワークスR(後期型)  / 出典:http://monster-sport.com/alto/episode3.html

 

スズキ HB21S アルトワークス RS / Z 1997年式

全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,385

ホイールベース(mm):2,335

車両重量(kg):710

エンジン仕様・型式:水冷直列3気筒DOHC12バルブ ICターボ

総排気量(cc):658cc

最高出力:64ps/6,500rpm

最大トルク:10.5kgm/3,500rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:4WD

中古車相場:1万~99.8万円(各型含む)

 

まとめ

 

3代目にして名機K6Aエンジンを得たことで、ついに完熟の域に達したと言える3代目アルトワークス。

4代目が排気量アップを伴わない大型化による魅力ダウンと、トールワゴン全盛期の到来による人気低迷で短命に終わったこともあり、その後も長らく「アルトワークスの代名詞」として、さらにモータースポーツでも「最強の軽ホットハッチ」として君臨しました。

4代目やその後を継いだkeiワークス、アルトラパンSSが今ひとつ3代目アルトワークスほどのインパクトを残せない中、原点回帰で軽量化した5代目アルトワークスは、3代目ほどの活躍を残せるでしょうか。

ヘタなコンパクトホットハッチやスポーツカーすらステージによってはぶっちぎる事ができた3代目アルトワークスは、その実績から未だに「軽自動車史上最強のホットハッチ」と言えるのです。

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