道なき道を走破するSUV。その中でもトヨタが誇る「ランドクルーザー」は、世界の名だたる悪路で高い評価を得る、まさに不朽の名作といえます。そして、今回ご紹介するこのランドクルーザー!見た目に若干の違和感があると思いますが、中身は想像以上にモンスターマシンとなっています。何をかくそうこのクルマ、「時速370km/h」で駆け抜けるその名も「ランド・スピード・クルーザー」なのです。
掲載日:2018/12/06
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目指すは世界記録!ランド・スピード・クルーザー現る
この「ランド・スピード・クルーザー」が初めて姿を現したのは、2016年の「SEMAショー」でした。
米国最大のカスタムカーイベントとして知られているこのショーには、トヨタも毎年数多くのデモカーを出展しています。
米国トヨタの「Motor Sports Technical Center」が制作したこのマシンは、ロールゲージが張り巡らされた室内、落とされた車高など、見るからにスパルタンな雰囲気を纏っているのです。
エクステリアは空気抵抗になるサイドミラーを排し、フロント&リアには控えめなスポイラーを装着。
外観からは分かりませんが、アンダーパネルはフラットなカバーで覆われている様です。
とはいえ全体的に控えめで派手さはなく、ほとんど200系ランクルそのまま、といった佇まい。
一見そこまで凄いクルマには見えないのですが、実は「SUV最高速度記録」にチャレンジする為、米国トヨタのワークス・チューンで作り上げられた本気のドラッグレーサーなのです。
最大出力2000ps!驚異のV8パワーユニットを搭載
2016年時点でのSUV車による世界記録は、ブラバス メルセデスGLK V12が記録した322.3km/hという記録となっていました。
しかし、ランクルの2.7トンもの重量をそのスピード以上に加速させるには、並のスーパーカー程度のパワーでは足りません。
そこで市販車に搭載されている5.7L V型8気筒 「3UR-FE型」エンジンに、バレーボールほどもサイズがあるという巨大なギャレット製ターボチャージャーを2基搭載。
専用クランクシャフトなどの本格的メカチューンと合わせ、出力はなんと2000ps(!)という耳を疑うレベルに到達しているのです。
加えて駆動系はFR化されており、”3000psにも耐える”という屈強なドラッグレース専用3速トランスミッションが組み合わせられています。
ワイドトレッド化の為、フレームの形状まで変更!
車体を構成するフレームにも大がかりな改造が施されていて、画像の様にワイドタイヤを履く為に前後ともにフレームのナロー化が図られ、20インチのタイヤがホイールハウスにねじ込まれているのです。
エンジンとフレームの徹底的なカスタムに対し、内装は市販車と比べると大幅な改造は施されていません。
実は高速走行時のトラクションを重視する為、敢えてほとんど軽量化が行われていないのです。
故に、バケットシートとロールバーの装備、リアシートの撤去といった最低限の改造にとどめられ、内張りやインパネはそのままとなっています。
NASCARドライバーによるトライアルで、見事世界新記録を達成!
本番となったスピードトライアルは、カリフォルニア州 モハーヴェ飛行場の4kmを超える滑走路で行われました。
トヨタの元NASCARドライバーであるカール・エドワーズがステアリングを握り、GPSを用いた精密な計測が実施されたのです。
結果は……なんと370km/h(230mph)という前人未到の記録を見事達成!
極限までブーストを高めたその排気音は、クルマというよりジェット戦闘機のサウンドに近いかもしれません。
1993年にマクラーレンF1が達成した「372km/h」という世界記録と比較すれば、このランクルの凄さは一目瞭然。
しかも純ドラッグマシンではなく、市販車とほぼ同じ車重、エンジンも市販車がベースとなっている正真正銘の「ランクル」なのです。
まとめ
オフロードから飛び出し、スーパーカーの舞台であるはずの最高速チャレンジに挑んだ勇敢なランド・スピード・クルーザー。
動画からも恐ろしいほどの迫力が伝わってきますが、この一見型破りなマシンがトヨタ・ワークスの高い技術力とノウハウによって作られているのです。
米国トヨタは他にも「NASCARのシャシーに市販カムリのカウルを被せる」など、本気の遊び心を持ってクルマ作りを進めています。
ちなみに、ランド・スピード・クルーザーのカスタム費用は100,000ドル(約1130万円)ほどに抑えられており、車両本体の83,000ドル(約943万円)と足しても標準的なポルシェと同程度。
高級スポーツカーと、世界一速いSUV…あなたなら、どちらを選びますか!?
※ちなみに市販化の予定は…もちろん無いとのことです。
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