基本は大ヒットとなった先代からのキープコンセプトとなった6代目マツダ ファミリアですが、DOHC16バルブターボと日本では初となるフルタイム4WD車の追加や、WRCなど国内外モータースポーツにおける4WDターボの活躍で、非凡さを発揮します。一方で、4代目以来のモデルチェンジとなったバン/ワゴンは、マツダオリジナルとしては最後のモデルとなりました。

6代目マツダ ファミリア /出典:https://gazoo.com/catalog/maker/MAZDA/FAMILIA/198501

キープコンセプトながら、さらに洗練されたデザイン

5代目からキープコンセプトの正常進化版として登場した、6代目マツダ ファミリア ハッチバック/Photo by crash71100

1985年1月のモデルチェンジで登場した6代目ファミリアは、先代が大ヒットとなった事や、その完成度の高さもあって、基本的にはキープコンセプトでした。

しかしフラッシュサーフェス(平滑)化されたデザインはさらに洗練され、3ドア/5ドアハッチバックはもちろん、4ドアセダンはそれ以上にスタイリッシュとなり、低く伸びやかなデザインは同クラスライバルの4ドアセダンと比べてもスポーティな印象を受けます。

インテリアは、ヘッドレストを外してフルリクライニングすれば、フルフラットにもできる前席や、左右独立リクライニングで快適性が高く、前に倒せばラゲッジ拡大も容易なハッチバック車の後席、トランクスルーが可能な4ドアセダンの後席など、使い勝手や快適性もそのままです。

格段にスタイリッシュでスポーティさを増した、6代目マツダ ファミリア 4ドアセダン/ Photo by Grant.C

ただし全てが先代のままというわけではなく、1.7リッターディーゼルエンジン車が追加されたことに加え、先代にもあったターボエンジンは少し遅れてDOHC16バルブ化。日本初のフルタイム4WDの同時追加により、「フルタイム4WDターボ」という、日本で猛烈に発達するジャンルの先駆けとなりました。

また、先代から継続された1.5リッターSOHCターボは、DOHC16バルブ自然吸気エンジンへ置き換えられ、3ドアハッチバックだけでなく、4ドアセダンにもDOHC自然吸気エンジンのGTや、4WDターボのGT-Xが設定されます。

4代目以来のモデルチェンジとなった6代目ファミリアバン/ワゴンだったが、マツダオリジナルとしては最後のバン/ワゴンボディ版ファミリアとなった /Photo by Rutger van der Maar

また、先代では見送られ、先々代(4代目)がフェイスリフトの上で継続販売されていたライトバンも、ついにFF化されて6代目に登場。

初代以来途絶えていたステーションワゴン版も、追加されました。

しかし、バン/ワゴンはこれがマツダオリジナルとして最後のモデルチェンジとなり、7代目の時代も1994年8月まで継続生産され、それ以降は日産のADバン/ADワゴン(後のウイングロード)のOEMとなります。

そして2018年6月以降はバンのみトヨタ プロボックスをファミリアバンとして、現在も販売されています。

6代目の特徴はDOHCターボ、フルタイム4WD、カブリオレ

6代目ファミリアに搭載されたB6ターボ/ Photo by orion

キープコンセプトな上に、モデルチェンジ当初はエンジンも先代と同じE3(1.3リッター)/E5(1.5リッター、ターボもあり)でしたが、数か月後に歴代初のディーゼルエンジン(1.7リッター)が追加されます。

しかし何といっても6代目でインパクトがあったのは、ネット140馬力を発揮する新型のB6型1.6リッターDOHC16バルブターボで、グロス115馬力の1.5リッターターボより格段にパワーアップされ、国産車初のセンターデフ式フルタイム4WDと組み合わせられました。

これは海外とは異なり、日本では大衆車で大流行りした「4WDターボスポーツ」というジャンルが誕生した瞬間で、軽自動車からスーパースポーツまで設定されたおかげで、後にWRCなどモータースポーツにおける日本車黄金時代が到来する事になりますが、ハッチバック/セダン双方に設定された4WDターボのファミリアGT-Xは、その先駆けです。

さらにハッチバック車ではリアにビスカスLSDが追加され、装備を簡素化した競技ベースのGT-A、GT-Aへ快適装備を追加し、開口部の大きいフロントバンパーが特徴のGT-Aeも販売されました。

当初1,500ccターボで登場、マイナーチェンジで1,600ccDOHCとなったカブリオレ /出典:https://www.en.japanclassic.ru/booklets/63-mazda-familia-1987-cabriolet-bf.html

また、1986年には4人乗りのカブリオレも追加。当初1.5リッターSOHCターボでの登場でしたが、マイナーチェンジ後の後期型では1.6リッターDOHC自然吸気となっています。

しかし、少し遅れて登場した2代目RX-7カブリオレ(FC3C)のように電動ではなく手動ソフトトップの5速MTのみで、初代シティカブリオレのように固定ロールバーも装備されたため、あまりスタイリッシュに見えずレアモデルとなっていますが、歴代ファミリアで唯一のコンバーチブルです。

全盛期は短いものの、WRCなどラリーやダートラで大活躍

ファミリア初のWRC総合優勝となった1987年のスウェディッシュラリー /出典:https://www2.mazda.com/ja/100th/virtual_museum/gallery/gallery038.html

4WDターボのGT-Xが登場したのに伴い、それまでグループBのRX-7(初代SA22C)で参戦していたWRCに、1986年よりグループA仕様のファミリアGT-X(海外名MAZDA323 4WD)で参戦します。

そしてライバルが軒並み2リッター4WDターボで挑んでいるのに対し、1.6リッターターボのファミリアはいかにも分が悪かったものの、1987年第2戦および1989年第1戦のスウェディッシュラリー、1989年第7戦のニュージランドラリーで優勝。

小型軽量が活きるという事なのか、雪上ステージを得意としたため「雪の女王」と呼ばれました。

しかし、次の7代目では1.8リッターへ拡大されたものの、熟成が進んだ2リッターターボには太刀打ちできず、6代目ファミリアで上げた3勝がWRCにおけるマツダの貴重な勝ち星となっています。

6代目マツダ ファミリア後期型GT-Ae /Photo by Zac Bennett

また、国内モータースポーツでも全日本ラリーや全日本ダートトライアルで活躍しますが、1988年から日産のブルーバードSSS-R、三菱のギャランVR-4が参戦してくると、やはり分が悪くなってしまいます。

しかし、全盛期は1986~1987年と短かったゆえに、酷使される間もなく戦闘力に見切りをつけられた6代目ファミリアの競技車が安く放出され、初心者の入門マシンとして長らく役立ったという逸話も残っています。

主要スペックと中古車価格

6代目マツダ ファミリアGT-X(前期型)/ Photo by orion

マツダ BFMR ファミリア GT-X 1987年式
全長×全幅×全高(mm):3,990×1,645×1,355
ホイールベース(mm):2,400
車重(kg):1,110
エンジン:B6 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:1,597cc
最高出力:103kw(140ps)/6,000rpm
最大トルク:186N・m(19.0kgm)/5,000rpm
10モード燃費:10.4km/L
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F・R)ストラット

 

※2021年2月現在
ハッチバック/セダン/バン:皆無
ワゴン:108.8万円・1台
カブリオレ:88万~99.8万円・2台

ラインナップも豊富でファミリア全盛期と言える6代目

パワー不足で悪戦苦闘するも、雪では強かったファミリア4WD/Photo by Dustin May

1994年まで継続販売されたバン/ワゴンを除く6代目ファミリアが販売されていた1980年代後半は、マツダが無謀な5チャンネル販売体制を築いて自滅する以前であり、ある意味では「マツダがもっとも健全な状態で勢いのある時代」でした。

5代目ファミリアで息を吹き返した勢いをそのままに、6代目ファミリアを手堅くキープコンセプトで送り出し、DOHCターボのフルタイム4WDマシンをWRCで活躍させて世間をアッと言わせたり、オシャレなカブリオレ、待望のバン/ワゴンもラインナップします。

ファミリアに頼り過ぎな面はあったとはいえ、同様の路線で上級車種も手堅く進化させていって地固めをしていれば、その後のマツダはまた違った歴史を歩んだかもしれませんが、6代目ファミリアの時点で派生車エチュードという「不吉な予感」が既にありました。

しかし、復活しては倒れ、倒れては起ち上がるという「七転び八起き」がマツダらしいところであり、手堅くも大胆な6代目ファミリアという名車を振り返りながら、その後のマツダを振り返ってみるのも面白いのではないでしょうか。

 

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