今やマツダを代表するコンパクトカーに成長したデミオ。その始まりは極端な経営不振で消滅の危機に晒されたマツダを救った「救世主」でした。急造ながら革命的な車としてマツダを支え、モータースポーツでもエントリーモデルとして活躍した歴代デミオに迫りたいと思います。

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マツダが迎えた崩壊の危機!

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マツダは、1980年代後半からのバブル時代には、マツダ本体のほか、ユーノス / アンフィニ / オートザム / オートラマ(フォード系)と5チャンネル体制で、多くのブランドを抱えていました。

さらにレクサス(トヨタ)やインフィニティ(日産)、アキュラ(ホンダ)といった各メーカーの高級車ブランドに対抗する高級志向ブランド「アマティ」の立ち上げも計画していたのです。

しかし、1991年2月のバブル崩壊に端を発する極端な不景気「失われた20年」が始まると全てはご破産、アマティ計画は中止され、既に立ち上がっていた5チャンネル全てが存続の危機に陥ります。

そもそも、マツダの企業規模からすれば5チャンネルそれぞれに新車を供給することは困難な事でした。

そのために開発された「クロノス」シリーズのプラットフォームを使った新車は、そのほとんどが雑誌のユーザーレビューで酷評されるなど、マツダそのもののブランドイメージも地に落ちていた時期だったのです。

 

マツダを救った「初代FFファミリアの再来」初代デミオ

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実は、マツダにとって消滅の危機を迎えたのは2度目でした。

1度目は1973年の第一次オイルショックの影響で、燃費の悪いロータリーエンジン車が全く売れなくなり、在庫の山を抱えた時の事です。

ロータリーエンジンそのものは、1978年デビューの初代RX-7(SA22C)で復権するのですが、マツダそのものが本格的に復活を遂げたのは、1980年にデビューしたコンパクトカー、初代FFファミリア(BD系。通算では5代目)の登場でした。

そして1990年代のマツダを救ったのもまた、奇しくも初代ファミリアのようなコンパクトハッチバック、デミオだったのです。

1996年にデビューした同車は最大のスペース効率を求めた上で、タワーパーキングに入る車高に収め、「コンパクトカーでミニバンの要素を兼ね備えたミニミニバン」として、市場に受け入れられました。

見た目は通常の5ドアハッチバック車ながら、十分な動力性能とフルフラットが可能なシートレイアウトなど実用性が高いデミオは大ヒットし、マツダはギリギリ消滅の危機を免れたのです。

なお、当時の同クラスのライバルでデミオに敗れたのはダイハツ パイザーでした。

2列シートで「よりミニバンらしく見えた」パイザーが全高1,595mmでタワーパーキングに入れなかったのに比べ、1,500~1,535mmのデミオは日常的な使い勝手に優れたクルマと認められたのです。

まさに初代デミオは、マツダの地道なマーケティングが産んだ「救世主」でした。

 

モータースポーツでも活躍した初代デミオ

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初代デミオ(DW系)はそれまでのマツダの標準コンパクトカー、”ファミリア”よりさらに下のセグメントを受け持つエントリーカーであり、当時としては画期的な小型5ドアハッチバックミニバンでした。

同時にベースになったオートザム レビューと、フォード フェスティバの後継も兼ねており、車高が低く車重も軽かったので、フェスティバで戦われていた初心者向けワンメイクレースにも多く投入されたのです。

富士チャンピオンレースのエントリー部門などで設定されたデミオレースは、比較的にお金をかけずに参戦できたので、サンデーレーサーが出場しやすく、マーチやスターレット、ヴィッツのワンメイク同様、多くのレーサーの登竜門にもなったのでした。

マツダ DW5W デミオ(初代・GL-X・FF・1996年式)のスペック

全長×全幅×全高(mm):3,800×1,670×1,535
ホイールベース(mm):2,390
車両重量(kg):960
エンジン型式:B5-ME
エンジン仕様:直列4気筒SOHC16バルブ
総排気量(cc):1,498
最高出力:100ps/6,000rpm
最大トルク:13kgm/4,500rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古相場価格:147,000〜207,000 円

 

好評を受けて進化した2代目

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初代デミオは元々安価な上に、ディーラーでもたびたび激安な特別仕様車が設定されるなど購入しやすかったことから大好評で、ボディのチリ(外板パーツ間の隙間)を縮めるほどの細かいマイナーチェンジを繰り返しました。

「使いやすく、安いだけでなく高品質」それは2002年デビューの2代目デミオ(DY系)にも受け継がれたのです。

基本的に「小型ミニバン的な5ドアハッチバック」というコンセプトは変わらないものの、プラットフォームを一新、デザインも現代のマツダ車に近いものへ大きく変化しています。

この代のデミオはワンメイクレースなどの設定が無く、モータースポーツでの実績はほとんどありませんが、1.5リッターモデルをベースにした「SPORT」グレードが初めて設定されました。

マツダ DY5W デミオ(2代目・スポルト・FF・2002年式)のスペック

全長×全幅×全高(mm):3,925×1,680×1,530
ホイールベース(mm):2,490
車両重量(kg):1,080
エンジン型式:ZY-VE
エンジン仕様:直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,498
最高出力:113ps/6,000rpm
最大トルク:14.3kgm/4,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古相場価格:132,000〜472,000 円

 

スポーツコンパクトへ生まれ変わった3代目

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2007年にモデルチェンジした3代目(DE系)は見る者を驚かせると同時に、デミオが大きく変革し、さらにマツダそのもののクルマづくりの転換点になっていきます。

それまでタワーパーキングに入庫できるギリギリの高さだった全高は1,475mmまで下げられ、ミニバンからスポーティな低重心コンパクトカーへとチェンジしました。

そして現在の「アテンザ/アクセラ/デミオ」という、基本的にスポーティなマツダ乗用車のピラミッドを完成させる事になります。

2011年には現在のマツダの柱となっている「スカイアクティブ・テクノロジー」が初めて採用され、新型ガソリンエンジンSKYACTIV-G1.3とCVTの統合制御、そしてアイドリングストップ制御「i-stop」で低燃費を実現しました。

さらに低くなった車高はモータースポーツにも最適で、初代に引き続き富士チャンピオンレースにワンメイクのデミオカップレースで採用されています。

また、当時盛り上がりを見せていた1.5リッタークラスの競技車両のベース車としても最適で、ラリーやダートトライアル、ジムカーナでエントリークラスのマシンとしても活躍したのです。

マツダ DE5FS デミオ(3代目・15C・FF・2007年式)のスペック

全長×全幅×全高(mm):3,885×1,695×1,475
ホイールベース(mm):2,490
車両重量(kg):980
エンジン型式:ZY-VE
エンジン仕様:直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量(cc):1,498
最高出力:113ps/6,000rpm
最大トルク:14.3kgm/4,000rpm
トランスミッション:5MT
駆動方式:FF
中古相場価格:291,000〜1,132,000 円

 

さらに新世代へ。SKYACTV-Dを搭載した4代目

Photo by Tomohiro Yoshita

2014年には4代目(DJ系)にモデルチェンジされました。

コンセプトに変更はなく、躍動感あるデザインでさらにスポーティさを増しています。

さらに注目されたポイントは、日本の小型車では約10年ぶり、コンパクトカー向けとしてはトヨタのスターレット/ターセル/コルサ/カローラII以来約15年ぶりとなる、ディーゼルエンジンの投入でした。

4代目デミオに初搭載されたSKYACTIV-D 1.5は、低排出ガス・低燃費を実現するため、常識破りの低圧縮比を実現した新型のクリーンディーゼルターボなのです。

昔ながらのガラガラとしたアイドリングから重苦しい唸りを上げて走るイメージを一新し、ガソリン車と遜色無い走りを実現したSKYACTIV-D車はディーゼル車の概念を大きく変えました。

モータースポーツでもその低回転から力強いトルクが期待されて、レースやジムカーナ、ラリーと幅広く投入され、現在は富士チャンピオンレースのデミオカップでもディーゼル車が走っているのです。

マツダ DJ5FS デミオ(4代目・XD・FF・2014年式)のスペック

全長×全幅×全高(mm):4,060×1,695×1,500
ホイールベース(mm):2,570
車両重量(kg):1,080
エンジン型式:S5-DPTS
エンジン仕様:直列4気筒DOHC16バルブ ディーゼルターボ
総排気量(cc):1,498
最高出力:105ps/4,000rpm
最大トルク:22.4kgm/1,400~3,200rpm
トランスミッション:6MT
駆動方式:FF
中古相場価格:1,204,000〜1,931,000 円

 

まとめ

今回は、1990年代のマツダの救世主となった初代から時代をリードする画期的コンパクトカーとして大きな役割を果たしてきた、マツダ デミオをご紹介しました。

マツダがトヨタと提携して以降は、北米でサイオンiAとして、サイオンブランド廃止後はトヨタ ヤリスiAに改称されて現在もトヨタのスポーツコンパクトという一面も持つようになっています。

さらに、RX-8やプレマシーとともにEV(電気自動車)やレンジクステンダーEV(ノートe-powerのようなシリーズ式ハイブリッド)の実験車にも使われており、新技術開発の最前線にも立っている車です。

特にレンジクステンダーEVは開発にロータリーエンジンも使っているため、いずれロータリーエンジンを発電機として搭載したデミオが、モータースポーツシーンにも登場するかもしれませんね。

 

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