先代モデルとなるダットサン フェアレディが1970年に生産終了する一年前、1969年に「Z」を冠する後継車、フェアレディZ S30が発表されました。このS30型はSOHCのL20エンジン搭載の「Z」、「Z-L」、DOHCのソレックス3キャブレター装備のS20エンジン搭載の「Z432」の3グレードがラインナップされ、Z432は高性能バージョンとして販売されたモデルです。そんなS30型フェアレディZの高性能グレード、Z432の魅力はどこにあり、どんな影響を次代の車に与えたのでしょうか。

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S30型フェアレディZ(Z432)の魅力

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先代モデルのダットサン フェアレディに続き、発売された初代S30型フェアレディZ。この開発計画の陣頭指揮を執ったのが、当時の日産アメリカ支社社長の片山豊氏でした。

アメリカ市場のニーズを見据えていた片山氏は、市場に適合したスポーツカーの開発を本社に打診し、当時の本社社長 川又克二氏から許可を得た後は、初代S30型開発の主導者として具体的なコンセプトを提示します。

この甲斐あって、初代S30型 フェアレディZは片山氏の「ジャガー Eタイプのような車を」という要望を十分に満たす、高性能なスポーティマシンとして完成。

先代とは異なる、軽量なクローズドモノコックボディには、4輪独立懸架サスペンションが装備され、ハードな走りに適応できるように手堅いセッティングが施されました。

エンジンは2.0リッター直列6気筒L型エンジンで、動弁機構はSOHC。低速領域でも豊かなトルクが得られる極めて実用的な性能は北米市場にマッチし、ポルシェ911やジャガー Eタイプにも対抗できるポテンシャルを秘めていました。

このS30型 フェアレディZには3種類のグレードが存在。「Z」、「Z-L」グレードは先述のL20型エンジンを搭載し、最大出力は130ps。これだけでも高性能でしたが、3番目の「Z432」グレードは、ソレックス3キャブレター装備の直列6気筒S20型エンジン(動弁機構:24バルブDOHC)が搭載され、最大出力は160psと、さらなる高性能な仕様でした。

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「4バルブ、3キャブレター、2カムシャフト」という、S20型エンジンの構造をグレード名にし、「Z」が最高時速185km/h、「Z-L」が195km/hだったのに対し、「Z432」の最高時速は210km/hを実現。同じエンジンとギアボックスを有するスカイライン2000GT-Rに匹敵する性能を誇りました。

S30型フェアレディZ(Z432)の伝説

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S30型フェアレディZ(Z432)は、1970年にレースデビューしました。

同排気量のスカイライン2000GT-Rと重ならないように一つ上のクラスへ出場し、高回転時の振動トラブルに見舞われながらも、レース・ド・ニッポン6時間耐久レースで優勝。続く富士300kmでも、同社のGT-Rを追い抜いて優勝しています。

また、同時期には公道走行を度外視した「Z432R」を発売。この「Z432R」はレースへの出場を見据えたモデルで、内装の簡素化やFRP製ボンネットフード、リアスポイラーの採用などにより、徹底的に車重が軽量化されました。

一方で、日産のシャシーとプリンス系統のS20型エンジンは、公道走行ではなくレースにおけるトラブルの原因だったとされており、その相性の問題が数多くのトラブルを招いたと言われています。

しかしその高回転モデルとしての特徴は、同時期のアメリカ向けグレード、240Zにはないものであり、富士300kmでのGT-Rとの接戦は、同じS20型を搭載しているからこその面白さがあったとの見方がある事も事実です。

S30型フェアレディZ(Z432)のスペックと中古車価格

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S30型フェアレディZ(Z432)の基本スペック

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フェアレディZ 432

年式 1969年
型式 PS30型
全長 4,115mm
全幅 1,630mm
全高 1,290mm
ホイールベース 2,305mm
トレッド(前/後) 1,355/1,345mm
車両重量 1,040kg
エンジン S20型 ( 直6・4バルブ DOHC) 1,989cc
最高出力 118kW(160ps)/7,000rpm
最大トルク 177N・m(18.0kgf・m)/5,600rpm
サスペンション(前/後) ストラット / ストラット( 独立)
ブレーキ(前/後) ディスク/ドラム( アルミフィン付)
タイヤ 6.95-H14-4PR
その他 1969年10月発表、11月発売、1978年6月生産終了

引用元:NISSAN-HERITAGE-COLLECTION|日産自動車

S30型フェアレディZ(Z432)の中古車価格

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S30型フェアレディZ(Z432)の中古車価格は、レストア済みも含めて応相談の個体がほとんどです。

まとめ

「ジャガー Eタイプのような車を」というコンセプトのもと開発された、S30型フェアレディZ。

そのハイグレードモデルの「Z432」はレースへの出場こそ少なかったものの、同社のGT-Rを破って6時間耐久レースで勝利するなど、確実にその爪痕を刻んだ車です。

「排出ガス規制対策」を理由に1973年9月にZ432の生産は中止され、約4年の間にたった419台しか製造されなかったこのマシンは、その高性能さと希少さで今も人々を魅了し続けています。

そんな日産を代表する名機、Zの伝説は今後も受け継がれていくでしょう。

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