1990年代の日本ではシルビア、180SX、RX-7など、数多くの名車が誕生しました。時を同じくしてイギリスでも、1台のスーパーカーが産声を上げています。それがジャガー XJ220でした。

XJ220

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%BBXJ220#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:JagXJ220.JPG

ル・マン制覇の血を継いだジャガー XJ220

Photo by Phil Parker

1980年代、フェラーリ テスタロッサ、F40の販売を機に始まった「第二次スーパーカーブーム」は、イギリスの高級車メーカー、ジャガーにも影響を及ぼします。

そして1988年、ジャガーはバーミンガムモーターショーに、1台のスーパーカーのプロトタイプを出展。ジャガーの生産モデルに冠されるXJの名に続くのは、220という数字でした。

この220は時速220マイル(約354km/h)を意味しており、名前の通り、このスーパーカーは時速220マイルを目指して、V型12気筒エンジンが搭載されました。

駆動方式はミッドシップ4WDで、アルミニウム製のボディとモノコック構造のシャシーを採用。足回りにダブルウィッシュボーン式サスペンションを装備するという、至れり尽くせりの仕様に早くも応募が殺到します。

このXJ220は、元々社内非公認で開発されたという経緯があり、本来市販化を考えていたモデルではなく、“こういうスーパーカーがあればな”というエンジニア達の想像の具現化でした。

しかし予想を超える反響があったことで、ジャガー上層部はXJ220の市販化を本格的に考えざるを得なくなります。

しかし、市販化の際に課題となったのは、V12エンジン+ミッドシップ4WDという仕様でした。

この仕様では車重が1,700kgを超えてしまい、時速220マイルでの走行はできません。

そこでル・マンのグループCクラスで活躍した、XJR-10の3.5リッターのV6ツインターボエンジンを搭載し、駆動方式もRWDに変えることで最高出力550ps、最大トルク65.4kgmを達成します。

さらに、最高速度も216マイル(約348km/h)に到達し、当初の構想通りのコノリレザーを用いたラグジュアリーな内装を備えるなど、高級車メーカーらしい“走行時の快適性”へのこだわりを見せました。

悲運のスーパーカー、ジャガー XJ220

Photo by Andrew Bone

残念ながら最高速度は220マイルに達しなかったものの、「最高速度200マイル以上」がカタログの謳い文句となり、1991年の東京モーターショーで、ついにジャガー XJ220の市場モデルが発表されます。

世界経済の好調を受け、当初220台だった生産台数も350台に増やし、エンジンの問題解決のために、1年遅れて1992年に販売が開始されました。

しかしその年、世界経済は悪化しており、同時に元レーシングドライバーをオーナーとする、トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)がジャガーと共同開発したXJR-15と競合してしまいます。

XJR-15はプロトタイプのXJ220と同様、6.0リッターのV型12気筒エンジンを搭載しており、スーパーカーを求めるユーザーはこちらに殺到。

結果的にXJ220は281台ほどしか売れず、生産計画も縮小し、日本にも正規輸入はされませんでした。

しかし現在のジャガーではXJR-15を正式な生産車とは認めていないようで、「最速のジャガー」の称号は、XJ220に与えられています。

「公道で走れるレーシングカー」というイメージが持たれていたXJR-15でしたが、実際は高速で走っていないとオーバーヒートするという仕様で、公道走行には向いていません。

XJ220のラグジュアリーな内装や、スタイリッシュさはXJR-15にはないものであり、“速さを求めたマシン”として造られたXJ220は、XJR-15と比較されることで、“車は速さが全てではない”と物語るマシンになったのです。

ジャガー XJ220の基本スペックと中古車価格

Photo by Jaguar MENA

ジャガーXJ220
全長×全幅×全高(mm) 4860×2000×1150

ホイールベース(mm):2640
重量(kg):1470
エンジン:V型6気筒 DOHCツインターボ
最大出力:542ps/7,000rpm
最大トルク:65.4kgm/4,500rpm
駆動方式:縦置きミッドシップRWD

中古車価格:SOLD

まとめ

200マイル超えのスーパーカーとして販売されたジャガー XJ220ですが、同時期に売り出されたXJR-15と競合し、悲運のスーパーカーとなってしましました。

しかしそのスタイリッシュさや内装のラグジュアリーさなど、走る楽しみ以外の魅力も持った名車として、ジャガー XJ220は今も輝き続けています。

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