MR-Sは、トヨタが1999年に発売したライトウェイトミッドシップ2シーターオープンカーです。エンジン音が背中から聞こえるという、ミッドシップ特有の楽しさに加え、オープンカーとしても非日常を楽しめる車となっています。MR-Sと名称が変更され、MR2(SW20)後継として、かなりの路線変更が行われました。今回は、そんなMR-Sを詳しく紹介します。

本来の運転する楽しさを目指した原点回帰

トヨタ MR-S / 出典:https://pressroom.toyota.com/

MR2は、ミッドシップレイアウトというレーシングカーにも通ずるところから、スポーツ性能を期待され、初代(AW11)、2代目(SW20)と、動力性能とスポーツ性能を向上させていった結果、リアルスポーツになりました。

しかし、「戦闘力は高いが、ピーキーで乗りにくい車」という評価がついてしまいます。

そんなMR2の名前の由来は、「Midship Runabout 2sheeter(気軽に乗り回せるミッドシップ2シーター)」という点を見ても、メーカーが当初目指した立ち位置とは、少し違った成長をしていたのです。

そこでトヨタは原点回帰をし、「運転が楽しい車」を目指し、動力性能はさほど高くないが、軽量で軽やかに走るというライトウェイトスポーツに仕立て直したのが、MR-Sでした。

スペシャリティカーとしての割り切りを行い、リアのトランクが無くなった代わりに、オープンカーという新たな楽しさが組み込まれました。

軽量なボディと適度なエンジンパワーが作り出すミッドシップライトウェイトスポーツ

photo by 高原友希

ミッドシップレイアウトには、ざっくり言うとFFのシャーシを反転させたものが流用できる為、MR-Sでは軽量コンパクトなヴィッツ(SCP10)をベースにシャーシが作られました。

エンジンはカローラやセリカの廉価グレードに設定されていた1.8Lの1ZZ-FE型(140PS/17.4kg・m)が搭載され、NAのみの設定。

カタログの数値上では少し寂しく感じるかもしれませんが、グレードによっては1トンを切る軽量ボディにより、ワインディングをヒラヒラと走り抜けるライトウェイトスポーツとして、十分な動力性能を誇っています。

またカタログ値では前後重量配分が42:58と、エンジンが積載されている後方が重く、MR2のように限界領域での走りがピーキーなのではないかと、心配になる数値ですが、そこはMR2を育ててきたトヨタ。

MR2よりも長くしたホイールベースと車重に対し、しっかりとしたホイールサイズで、不安感を感じさせない足回りに仕上げられています。

またMR-SにはシーケンシャルMT(SMT)が設定され、オートマ車ながらマニュアルのようにギアを選択して走ることができるという、楽しさもありました。

マイナーチェンジは2回

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BBMR-S

1999年に発売されたMR-Sは、2002年8月に最初のマイナーチェンジが行われ(中期型とも呼ばれます)、マニュアルミッションが5速から6速へと変更されました。

さらに2005年に再度マイナーチェンジ(後期型)が行われ、エクステリアデザインが変更されています。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BBMR-S

しかし、スペシャリティカー全体の市場が減少する中で、販売に苦戦したMR-Sは、2007年に販売終了。後継は、設定されませんでした。

トヨタはその後、新型86(ZN6)の登場までスポーツカー不在という時代に突入したため、トヨタの前期最後のスポーツカーと言っても良いでしょう。

チューニングカーはサーキットでも活躍

photo by:高原 友希

タウンカーとしての原点回帰を果たしたMR-Sは、第一線級のハイパワーマシンではなくなりましたが、ライトウェイトスポーツカーとしての性能を評価されはじめます。

また搭載されていた1ZZ-GE型エンジンには、上級スポーツエンジンとしてセリカの最上級グレードなどに搭載されていた2ZZ-GE型エンジン(同じく1.8LNAだが190ps)が存在し、MR-Sには比較的容易に乗せ換えることができたので、ハイパワーマシンに作り変えるチューニングショップが現れます。

そして2ZZに乗せ換えられたチューニングカーは、筑波サーキット(TC2000)で1分切りを達成するなど、他の本格的スポーツカーと比べても、遜色ない性能を誇らりました。

主要スペックと中古車価格

トヨタ MR-S(ZZW30型 1999年式)
全長×全幅×全高(mm):3,885×1,695×1,235
ホイールベース(mm):2,450
車両重量(kg):970-1,020kg
エンジン仕様・型式:1ZZ-FE型 直列4気筒DOHC
総排気量(cc):1,794
最高出力:140ps(103kW)/6,400rpm
最大トルク:17.4kg・m(170.6N・m)/4,400rpm
トランスミッション:5MT/6MT/SMT
駆動方式:MR
中古車相場:40万~200万円
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BBMR-S

まとめ

photo by 高原友希

MR-SはMR2の後継ではあれど、別ジャンルの楽しさを持ったモデルとして人気があります。

世界中のメーカーを探しても数少ないミッドシップオープンカーで、エンジン音を背中から感じ、ゆっくりとしたオープンドライブはいかがでしょうか。

また、ライトウェイトスポーツとして見れば、十分にスポーツ走行も対応可能!

オーナーの好みによって、自由な遊び方ができる1台です。