国土交通省は今後の車検事項に自動ブレーキをはじめとした運転支援装置・自動運転機能・排ガス関係装置の検査を盛り込むと発表しました。事故を未然に防ぐために自動ブレーキが搭載されるようになり、これからは装置の不具合による事故の発生を未然に防がなければならなくなったのです。

出典:写真AC

自動運転/運転支援装置が車検対象に

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国土交通省は、2018年6月に自動ブレーキなどを車検の確認項目に盛り込み、道路運送車両法の改正を進めていると明かしました。

そして、2019年の3月13日には今後の方向性について報告書を公開。

それによると運転支援装置、自動運転機能、排ガス関係装置を検査対象に追加し、検査にはOBDを活用する自動車検査手法を新たに取り入れるとしています。

政府は、未然に事故を減らす取り組みとして、自動ブレーキやペダルの踏み間違い防止装置などを搭載した”安全運転サポート車”について『セーフティ・サポートカーS(サポカーS)』、自動ブレーキ搭載したクルマに『セーフティ・サポートカー(サポカー)』という愛称をつけ、普及啓発に取り組んでいます。

これにより自動ブレーキは、平成24年には4.3%でしたが平成29年には77.8%、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は5.3%から47.5%まで搭載率が向上し、2006年から2016年の10年間で死亡事故を5,713件から3,410件にまで減少させることに貢献しました。

一方で電子制御の不具合もいくつか報告されており、国土交通省によると、高速道路を走行中に突然機能が停止し、強い回生ブレーキが作動したり、上り坂を走行中、自動でブレーキが誤作動し、急減速したなどの事例が報告されています。

そのため、自動ブレーキが搭載されるクルマが増えていくなかで、その機能を維持しているか、また不具合による事故が発生しないかなどを考慮すれば、車検の検査項目に加えるのは賢明でしょう。

OBDとは

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OBD(On-board diagnostics)は自己診断機能装置と呼ばれ、クルマの異常を感知し、それを電子信号化させて、エンジンに異常があればインストルメントパネルの警告ランプを点灯させる装着です。

クルマのDLC(データリンクコネクター)と呼ばれる接続コネクターにDTCスキャンツールを装着し、表示された故障コードから、故障個所と不具合の内容がわかります。

【OBDやDTCに関する記事:クルマが故障箇所をお知らせ!自己診断機能を活用しよう!!

運転支援措置とは

© SUBARU CORPORATION. 2019.

運転支援装置とはABS(アンチロックブレーキシステム)、ESC(横滑り防止装置)、ブレーキアシスト、自動ブレーキ、車両接近通報など、事故を起こさないために搭載された機能の総称を示しますが、これは国土交通省が用いている名称であって、自動車メーカーによっては使っている名称が異なります。

例として、ホンダではホンダセンシングを『安全運転支援システム』、トヨタはトヨタ・セーフティ・センスを『予防安全技術』と呼んでいます。

自動運転機能とは

© 著作権 2019 日産自動車株式会社

自動運転機能は、自動車車線維持、自動駐車、自動車線変更など、ドライバーの負担を軽減させるために搭載された機能の総称です。

具体的には、日産の『プロパイロット』やレクサスの『レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)』があげられます。

車検時の検査方法は

© 2008 MLIT Japan.

運転支援装置/自動運転機能/排ガス関係装置の検査には、OBDを活用した検査方法が実施される予定です。

自動車メーカーは故障コードに必要な技術情報(ECU情報)や保安基準不適合の故障コード(特定DTC)を国土交通省に提出し、(独)自動車技術総合機構において、一元管理して全国の車検場や整備工場へ提供します。

現在の自己診断機能装置は全メーカー共通の規格に統一した『OBD2』が採用されており、日本やアメリカ、欧州メーカーはOBD2に従い故障コードを設けています。

車検時に使用されるDTCも国際標準規格(ISO15031-6)と米国自動車技術会(SAE J2012)により規格を統一してるため、故障個所や故障内容を示すコードもほとんどが共通。

そのため、自動車メーカーが提示する自動ブレーキの故障におけるコードも共通化されているでしょう。

しかし、現在の車検ではOBDを使用することはなく、OBDはディーラーや民間整備工場が故障を特定するために用いられてきました。

それが車検でも行われるということは、自動ブレーキ等に異常が見つからなくても、他の部分で故障が判明すると車検場や試験官によっては車検を不合格にすることも考えられます。

そんな運転支援装置/自動運転機能/排ガス関係装置の検査開始時期は国産車で2024年、輸入車で2025年を目標としています。

まとめ

出典:http://waspa.or.jp/gobo/insti/

現在、自動車産業が大変革期を迎え、そのなかでCASE(ケース)という言葉が頻繁に聞かれるようになりました。

CASEとはC『コネクティビティ(接続性)』、A『オートノマス(自動運転)』、S『シェアード(共有)』、E『エレクトリック(電動化)』の4つを合わせた造語。

今までのクルマにはなかった技術や使用目的かふんだんに組み込まれ、モビリティの概念すら変わろうとしているのです。

そうなれば、自動ブレーキ等の車検項目が増えたことを皮切りに、今後どんどん車検の検査項目は増えていき、OBDを活用する場面が増えるでしょう。

車検がさらに高度で精密になっていけば、その分車検にかかる費用も増えるかもしれません。

それでも運転支援装置や自動運転機能は、我々が運転するうえで必要不可欠なものになりつつあります。

命を守るための機能でもあるため、十分なメンテナンスや故障したときの即座の整備は必須です。

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