シロンやディーヴォ、ラ・ヴォワチュール・ノワールといった新型車の発表が相次ぎ、積極的な動きを見せているブガッティが、ブランド110周年を迎えた2019年、ペブルビーチで世界限定10台の特別な限定仕様車を発表しました。’90年代の同社を代表するモデル『EB110』をオマージュした『チェントディエチ』と呼ばれるモデルです。(「チェントディエチ」とは、イタリア語で「110」の意)。今回は、往年の名車、EB110を振り返ると同時に最新のブガッティであるチェントディエチについてもご紹介したいと思います。
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90年代を代表するモンスターカー・EB110
EB110は1991年、ブガッティの創立者であるエットーレ・ブガッティの誕生から110年目を記念して発表されました。
車名の「EB」は、氏のイニシャルから名付けられたもので、3.5リッターV型12気筒DOHC60バルブエンジン(1気筒につき吸気2、排気3の5バルブを搭載!!)に、4基のターボチャージャーを組み合わせるという、当時としては過剰とも思えるくらいのパワーとスピードを追求したモンスター級のスペックでした。
最強タッグでスタートした設計&デザイン
プロジェクトの発足当時に中心人物となったのは、経営者であるロマーノ・アルティオーリと、かのカウンタックの設計者であるパオロ・スタンツァーニ、そして同じくカウンタックのデザイナー、マルチェロ・ガンディーニの3人でした。
当初ガンディーニがEB110のデザインに求めたのは、名車カウンタックに残した唯一の課題である空力を解決すること。
カウンタック以降数々の名車を手懸け、空力に関する知見を蓄積したガンディーニの初期案は、安定して340km/hを出すことが出来る優れたものでした。
また、ガンディーニ同様、スタンツァーニもカウンタックにおける課題の解決に協力的で、開発は順風満帆のスタートをきります。
馬蹄型エアインテークをめぐる攻防
しかし、経営者であるアルティオーリは、ブガッティ伝統の馬蹄型のインテークグリルにこだわり、譲りませんでした。
これを拒否したガンディーニは、プロジェクトメンバーから外されてしまうこととなります。
その後、ザガートが途中から加わる等の紆余曲折を経て、最終的には後任のベネディーニによる修正案が採用となりました。
EB110にオマージュを捧げたチェントディエチ
色々な開発秘話が存在するEB110ですが、90年代のブガッティを代表する名車であることに変わりはありません。
そんなEB110にオマージュを捧げるハイパーカーが、2019年のペブルビーチで発表されたチェントディエチです。
EB110SSを彷彿させる5つの穴が空いたエアインテークの形状や、馬蹄型のフロントグリル、Aピラーを覆うように施されたウインドスクリーン、三段構えのフロントスポイラー等、随所にEB110へのオマージュととれるディテールが施されているのが分かります。
しかし、全体的なシルエットは最先端のハイパーカーに相応しく、非常に低い構えとなっており、特に空力を意識したであろうボンネット形状や、つり目型のヘッドライトは、チェントディエチ特有のユニークなデザインであると言えるでしょう。
シロンを超える運動性能
エンジンはシロンと同じ8リッターW16気筒のクアッドターボをベースに、100psものパワーアップが施された仕様となっています。
最高出力は1600psで、0-100km/h加速は2.4秒。(ちなみにEB110は3.5リッターV12にクアッドターボで、SSと呼ばれるスポーツグレードでは611ps、0-100km/h加速は3.5秒でした。)これは、ボディ全体で20kgの重量減が行われていることも、影響した数値だと思われます。
まとめ
2021年後半にデリバリーが開始される予定のチェントディエチ。
気になる価格は約9億4500万円と、最近の並み居るハイパーカーたちと比べてもかなり高額な印象です。
さらに、ブガッティの記念碑的な存在となる可能性もあり、その価値は実際のスペック以上に深いものとなっていくでしょう。