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真の名車はライバルを育て合う!!伝説の名車に立ちはだかった好敵手、初代ダイハツ ムーヴ!

軽自動車カテゴリは、1993年に登場したスズキの軽トールワゴン、初代「ワゴンR」により、価値観の大きな変化がもたらされましたが、他メーカーも同種の軽モデルを発売して追撃を開始します。デビュー時点で最強のワゴンRフォロワーであり、使い勝手という面では上回る部分すらあったダイハツ 初代「ムーヴ」が生まれたのもそんな時期で、「標準車と純正カスタム系を常に準備する車」の先駆けでもありました。

ダイハツ L602S初代 ムーヴSR / 出典:https://www.favcars.com/photos-daihatsu-move-sr-l602s-1995-98-20355.htm

「ワゴンRにないもの」を武器に追撃開始したダイハツ初の軽トールワゴン

ダイハツ L601S 初代ムーヴ輸出仕様 / Photo by Vetatur Fumare

軽自動車規格という寸法の制約に対し、ハイルーフ化によってスペース効率を向上させ、実用性を高めるという発想は意外に古く、市販車としては1972年にホンダがFF軽乗用車「ライフ」をベースにハイルーフ型ボンネットバンとした「ライフステップバン」が元祖です。

そして、その後も商用・乗用問わず、明確に高さ方向のスペースを拡大することで使い勝手の向上を狙ったモデルが多数存在しました。

しかし、1993年に登場したスズキの初代「ワゴンR」は、単にハイルーフというだけでなく、座面を高めたアイポイントの上昇による視界の改善と同時に、座席下スペースに多用途に使えるバケツ(ボックス)を設置するなど、「室内高の付加価値を高める努力」を積極的におこない、さらにはベース車と異なるスポーティなオリジナルデザインを施すなど、大ヒットとなります。

当時、既に軽ボンネットバン/乗用車ベースのトールワゴンとしては、初代「ミニカトッポ」が1990年にデビューしており、ダイハツも同種の車を開発していたと言われていますが、ともかく先手を打って軽トールワゴンの付加価値を高めたのはスズキであり、ライバル各社は大ヒット作となった「ワゴンR」の追撃が課題となりました。

中でも追撃第一陣であり、初代ワゴンRへの対抗車種として最右翼だったのが、1995年8月に発売されたダイハツの初代「ムーヴ」で、後席両側ドアを持つ5ドアや、4気筒DOHCターボ「JB-JL」をはじめとする全車DOHCエンジンの搭載、開閉が容易な横開きバックドアや、視認性の高いハイマウントの縦型テールランプを特徴としています。

これらの装備は一部、他のライバル車にもありましたが、初代ワゴンRにはどれもなかった装備で、ハイルーフの軽トールワゴンである事を除けば、全くの別物。単純にワゴンRを模倣したものではなく、短期間に研究し尽くした「ワゴンRにないものだらけ」が売りの1台です。

もっとも、4代目(L500系)ミラをベースにした急増車ではあったため、座面とアイポイントの低さ、それに伴うトップヘビー気味な乗車感覚は残っています(代わりにスーパーローダウンシートレールとスポーツシートを組んだ、フロアの低重心化は可能だった)。

後に5ドア化やDOHCターボエンジンの搭載など、初代ワゴンRも可能な限りの対策を矢継ぎ早に行い、コラムシフト化も先行されましたが、初代ムーヴも可能な限り「ワゴンRにないもの」で対抗していきました。

最初から高い動力性能や5ドア化、安全性向上にも熱心だった「表ムーヴ」

ダイハツ L601S 初代ムーブ輸出仕様 Phpto by Dennis Elzinga

当初ラインナップされていたのは後述する「裏ムーヴ」、登場後は「表ムーヴ」とも呼ばれた標準モデルで、既に紹介したように後席両側ドアを持つ5ドア、簡単に開閉可能な横開きバックドア、そして後席シートスライドによって、デビュー時点から使い勝手は初代ワゴンRに勝る部分がありました。

加えてエンジンは、上級グレードはEFI(電子制御燃料噴射装置)、廉価グレードも電子制御キャブレター式の全車DOHCが搭載され、初代ワゴンRと同程度の燃費とパワフルさを両立。

トップグレードの「SR」(後にSR-XX)はFF車のみながら、4気筒DOHC16バルブターボの「JB-JL」に4速ATという組み合わせで、静粛性能や動力性能は上回ります。

さらに、当初はともに設定のなかった運転席エアバッグも、モデル末期まで上級グレードすらメーカーオプションでしかなかった初代ワゴンRに対し、初代ムーヴでは、いちはやく標準装備化に踏み切り、モデル末期には廉価グレードですら標準になるなど、安全性の向上という点での努力では、差をつけていました。

主要スペックと中古車価格

ダイハツ L600S系初代ムーヴ 出典:https://u-catch.daihatsu.co.jp/catalog/MOVE/GRADE__5002108/

ダイハツ L602S ムーヴ SR 1995年式
全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,695
ホイールベース(mm):2,300
車重(kg):770
エンジン:JB-JL 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:659cc
最高出力:47kw(64ps)/7,500rpm
最大トルク:100N・m(10.2kgm)/4,000rpm
10・15モード燃費:15.6km/L
乗車定員:4人
駆動方式:FF
ミッション:4AT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)セミトレーリングアーム

 

(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
8万~20万円・8台

現在まで続く「標準車とカスタム車」2モデル体制の起源、「裏ムーヴ」

ダイハツ L600S系初代ムーヴカスタム 出典:https://u-catch.daihatsu.co.jp/catalog/MOVE/GRADE__5002050/

「ワゴンRにはない良いところ」を売りにしていたムーヴですが、その真骨頂は1997年5月に追加された「裏ムーヴ」こと、「ムーヴカスタム」でした。

それまでも、スバルのサンバーディアス クラシックやヴィヴィオ ビストロ以来のブームによる「クラシック調フェイスリフト版」が、ダイハツも含む各軽自動車メーカーから登場していたものの、前後バンパーやグリル、灯火類を入れ替えた程度が多かったクラシック調モデルに対し、ムーヴカスタムはフェンダーも含めゴッソリと入れ替えられています。

さらに表ムーヴのSR-XXに相当するFF4気筒ターボグレード、「エアロダウンカスタムXX」は、ローダウンサスで15mm車高が落され、大型角目2灯ヘッドライトとビレット風グリル、クリアウィンカーと合わせるなど、「表ムーヴ」とはだいぶ雰囲気が異なりました。

このように、同じモノコック(一部外装も含む基本骨格)やメカニズムから、標準車と純正カスタム車の2種類(あるいはそれ以上)を生み出す手法を、それも販売チャンネル別というわけでもなく、同じ販売店で同じように扱う車として本格的に売り出したのは、おそらくこの初代ムーヴが初と思われます。

現在ではSUVでもミニバンでも「標準車」と「純正カスタム車」、2種類の併売は当たり前のように行われていますが、この「裏ムーヴ」のヒットがなければ、日本車の、なかでもミニバンやトールワゴンの歴史は、だいぶ違ったものになっていたかもしれません。

主要スペックと中古車価格

 

ダイハツ L600S系初代ムーヴカスタム 出典:https://u-catch.daihatsu.co.jp/catalog/MOVE/GRADE__5002050/

ダイハツ L602S ムーヴカスタム エアロダウンカスタムXX 1997年式
全長×全幅×全高(mm):3,295×1,395×1,680
ホイールベース(mm):2,300
車重(kg):780
エンジン:JB-JL 水冷直列4気筒DOHC16バルブ ICターボ
排気量:659cc
最高出力:47kw(64ps)/7,500rpm
最大トルク:100N・m(10.2kgm)/4,000rpm
10・15モード燃費:15.6km/L
乗車定員:4人
駆動方式:FF
ミッション:4AT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)セミトレーリングアーム

 

(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
11.8万~19.8万円・2台


軽トールワゴンを一過性のブームに終わらせなかった、功労車

ダイハツ L600S系 初代ムーヴカスタム Photo by Dennis Elzinga

結果的に、初代ムーヴは「初代ワゴンRにはないよいところ」をたくさん持ちつつも、座面の低さなど基本パッケージに急増車として未完成な部分もあったため、2年先行して既に定番ブランド化していたワゴンRを、販売面で脅かすまでには至りませんでした。

しかし、パッケージングはともかく使い勝手や性能面では初代ワゴンRもまた未成熟であり、初代ムーヴという強力なライバルがあったからこそ、軽トールワゴンというジャンルの完成度の向上と、その後の急速な発展に至ったとも考えられ、当時の軽トールワゴンを「ただのワゴンRブーム」で終わらせなかった功績は、非常に大きかったと言えるでしょう。

車に限った事ではありませんが、工業製品とはジャンルは何であれ、何らかの壁を破った先駆者だけではなく、追撃する優秀なライバルがいてこそ発展するという好例が、初代ダイハツ ムーヴでした。

 

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著者:兵藤 忠彦

ダイハツ党で、かつてはジムカーナドライバーとしてダイハツチャレンジカップを中心に、全日本ジムカーナにもスポット参戦で出場。 その後はサザンサーキット(宮城県柴田郡村田町)を拠点に、主にオーガナイザー(主催者)側の立場からモータースポーツに関わっていました。

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