「歴代モデルを通じてコンセプトが安定せず、波乱万丈の歴史を歩んだ代表的車種」のように言われる日産 レパードですが、よく見ると2ドアハードトップのみだった2代目が特異なだけで、基本は「日産店向けの4ドア高級車」だったとも言えます。やけに地味になったと言われる4代目レパードも、セドリック/グロリアの姉妹車として、日産店/サニー店向け高級サルーンとしての役割を果たしました。

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波乱万丈から一転堅実?しかしよく考えれば「必然」

4代目日産 レパード / 出典:https://www.favcars.com/nissan-leopard-jy33-1996-99-pictures-209043.htm

日産「レパード」という車に対する世間の評価は厳しく、人気刑事ドラマでの活躍などから現在でも大人気の2代目はともかく、初代は「ソアラに勝てなかったライバル車」、3代目(レパードJ・フェリー)はズバリ「ザ・珍車」、4代目は「急に落ち着きすぎて存在感がない」という扱いです。

しかし歴史を振り返ると、初代は5代目810型までの直6エンジン搭載型ブルーバード後継で、セドリック(モーター店)/グロリア(プリンス店)を販売していない日産店向けの高級パーソナルカーとして1980年に発売、同様にチェリー店向けの「レパードTR-X」もありました。

4ドアとともに2ドアハードトップも同時に発売したため、翌年に登場したトヨタの初代「ソアラ」と比較されがちですが、当時はまだ高級4ドアサルーンにスポーティな2ドア仕様をラインナップしており、初代レパード2ドアも直前に廃止されたセドリック/グロリア2ドアハードトップ後継と言えます。

直6ブルーバード後継ゆえ、重厚感より軽快でシャープでスポーティな印象でしたが、レパードという車のそもそもの本質は「高級パーソナル4ドアサルーン」です。

ソアラを明確に意識して2ドアハードトップのみとなり、1986年から1992年まで販売していた2代目の6年間がむしろ、4代20年にわたるレパードの歴史の中では「異質」であり、「ソアラを意識しすぎた気の迷い」だったかもしれません。

2代目の販売期間、日産店ではV6エンジンを得て舞い戻ったブルーバードの高級版「マキシマ」と、R32スカイライン/C33ローレル姉妹車の「セフィーロ」を販売していましたが、いずれもセドリック/グロリアより格下ですから、高級セダンの3代目JY32「レパードJ・フェリー」が後継になったのは、むしろ自然な流れです。

あいにく北米向け高級車のデザインは日本でウケなかったものの、Y32セドリック/グロリア姉妹車でV8エンジン搭載車もラインナップするレパードJ・フェリーは、シーマもない日産店にとって貴重な大型高級セダンでした。

こうした流れを経て1996年3月、日産店とサニー店(1991年にフォルクスワーゲンとの提携解消でサンタナとパサートを失っていた)向けの4ドア高級サルーン、4代目JY33「レパード」がとして登場したのは、歴史を丹念に振り返ればまさに「必然」だったのです。

ただのY33セドリック/グロリア姉妹車ではなかった

4代目日産 レパード/ 出典:https://www.en.japanclassic.ru/booklets/82-nissan-leopard-1996-jy33.html

基本的に4代目レパードはY33セドリック/グロリアの前後デザインを変えただけ、ほとんど同じ車と思われており、それは事実でした。

「半年遅れてきた販売店対策の姉妹車」、「ずいぶん地味になった名前だけのレパード」などと言われればマシな方で、自動車関連のメディアでは非常に扱いが小さく、一応はCMも放映されていましたが、「グランツーリスモ」シリーズのチョイ悪路線でクラウンなどとは一線を画していたセドリック/グロリアほど知名度を得られず、発売とともに忘れ去られていきます。

しかし、4代目レパードの前後デザインは、セドリック/グロリアのブロアム系ほど保守的ではなく、軽快で若々しさを感じさせ、グランツーリスモ系ほど威圧感やダークさを感じさせないなど、また別種の小気味よくまとまった高級スポーツサルーン的な趣がありました。

セドリック/グロリアでは認められないであろうデザインが通用し、姿形は違えど初代レパードが目指したコンセプトの再来と考えれば、「やはりレパードに違いない」と思わせる雰囲気、噛めば噛むほど味わいが深まるように感じさせます。

1997年のマイナーチェンジでは、日産初の直噴エンジン、3リッターV6の「VQ30DD」搭載車を追加。

三菱のGDIやトヨタのD-4に出遅れていた日産の直噴エンジンが、様子見で販売台数の少ない4代目レパードへ回ってきたように思えるものの、セドリック/グロリアでは次世代のY34から搭載するための先行採用だったため、一応は「当時の日産でもっとも最先端の技術を搭載した高級サルーン」と言えました。

主要スペックと中古車価格

4代目日産 レパード / 出典:http://www.webcarstory.com/voiture.php?id=5157

日産 JHY33 レパード XRグランスポーツ 1997年式
全長×全幅×全高(mm):4,895×1,765×1,425
ホイールベース(mm):2,800
車重(kg):1,600
エンジン:VQ30DD 水冷V型6気筒DOHC24バルブ
排気量:2,987cc
最高出力:169kw(230ps)/6,400rpm
最大トルク:294N・m(30.0kgm)/4,000rpm
10・15モード燃費:11.2km/L
乗車定員:5人
駆動方式:FR
ミッション:4AT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)マルチリンク

(中古車相場とタマ数)
※2021年4月現在
38万~69.8万円・2台

スタイリッシュさは2代目にも負けないと思うのに…惜しい

4代目日産 レパード / 出典:https://www.en.japanclassic.ru/booklets/82-nissan-leopard-1996-jy33.html

4代目レパードが発売された頃の日産は、既にバブル崩壊後のモデルチェンジや新型車が不振を極めて経営悪化が著しく、4代目レパードも最低限のコストで投入された販売店対策車、「波乱万丈のレパードが最後にたどった末路」のように見られがちです。

もちろんそれを完全に否定することはできませんが、だからこそ「よくもあの状況でここまでセドリック/グロリアベースでスタイリッシュに仕上げたものだ」と、今はむしろ感心してしまいます。

今や「レパードといえば2代目が最高」とファンが多いものの、4代目レパードにも刑事ドラマなどで活躍する舞台があれば、今頃は「あの○○で活躍したセド/グロベースのスポーツセダン」と紹介されていたかもしれませんし、それだけの素質はありました。

しかし悲しいかな、そうした花道を飾ることなく日産の再建途上、販売系列や車種の整理が進む中で4代目が「最後のレパード」となり、販売も振るわないまま忘れられようとしています。

2020年代に入って旧車ブームが起きようとしている中、元から大人気の2代目だけでなく、「最後のレパード」も再評価されないでしょうか?