現在でこそカイエン、マカン、パナメーラとポルシェのフロントエンジン車は珍しくありませんが、かつてリアエンジン、あるいはミッドシップからの脱却を目指して開発された、一連のFRスポーツ・ポルシェがありました。それは、911のイメージがあまりにも強いことや、結果的に現在までその流れが続いていないことから『ポルシェの一時の迷い』と考えられることもありますが、販売台数的にはむしろ成功作!その中でもエントリースポーツの座を担ったのが924と、高性能版924ターボでした。

 

ポルシェ 924 / 出典:https://www.porsche.com/japan/jp/accessoriesandservice/classic/models/924/924/

 

 

『可能な限り既存パーツを用いた高性能車開発』で魅せたポルシェのセンス

 

ポルシェ 924 / 出典:https://www.porsche.com/japan/jp/accessoriesandservice/classic/models/924/924/

 

ポルシェ924といえば、914に続くVWグループとの合作モデルであり、914がワーゲンポルシェなら924はアウディポルシェだ、とも揶揄されたモデルです。

”ポルシェ”ブランドを若者に手が届くレベルで広めた914の後継である以上は、それほど高額にはできず、やや遅れて投入される高級グランドツアラーの928はもちろん、911よりも安価である必要があったため、924には積極的なコストダウン策が図られました。

そのため、シャシーやボディはともかくとして、サスペンションや駆動系、操舵系、さらにスイッチやメーターなど内装類に至るまで可能な限りフォルクスワーゲン車(ゴルフやシロッコなど)やアウディ車(100)から流用されていたのです。

そして何より、エンジンはアウディ 100に搭載されているものを元にした水冷直列4気筒SOHCユニットで、特にベーシックモデルはわずか125馬力(※)と平凡な動力性能もあり、ポルシェと言ってもやはりエントリーモデルとして格下に見られるのは避けられませんでした。

(※日本仕様に至っては当初わずか100馬力、後に115馬力に過ぎなかった。)

 

2.5リッター版924S  / 出典:https://www.porsche.com/japan/jp/accessoriesandservice/classic/models/924/924/

 

おまけに、開発初期には”ポルシェ”ブランド市販車としては初のFF(フロントエンジン・前輪駆動)車とすることすら、検討されていた始末。

要はアウディ 100クーペ(初代)のポルシェ版になりかけたわけですが、走行性能面での懸念やアウディ 100が幸い、FF車でありながら縦置きエンジンだったことが、成功のポイントとなります。

すなわち、アウディ 100ではエンジン直後でドライブシャフトを左右に伸ばして前輪を駆動していたトランスアクスルを、そのままリアに移したFRトランスアクスルレイアウトに変更し、前後重量配分を最適化させたのです。

これによってバランスに優れ高出力化にも対応。

それでいてミッドシップの914のように後席を潰すことなく定員4名の2+2シート化が可能な、テールゲートつき2ドアスポーツクーペを実現できました。

スポーティなデザインと格納時の優れた空力特性を約束するリトラクタブルの採用と合わせ、後に944、968まで続く基本レイアウトを確立し、他メーカーのスポーツカー(国産車ならマツダ RX-7など)に影響を与えた924は、こうして完成し、1975年に発売されます。

量販車のパーツを利用して高性能スポーツを作り上げる手法は、コーチビルダーやチューナーの得意とすることですが、「ポルシェが本気を出してそれをやった。」という意味において、924もまたポルシェ渾身の1台と言えるのです。

 

911後継を狙った924ターボ

 

ポルシェ 924ターボ / 出典:https://www.porsche.com/japan/jp/accessoriesandservice/classic/models/924/924-turbo/

 

924は優れたバランスを持ったFRスポーツでありましたが、ポルシェ独自のチューンや排気量アップが為されたとはいえ基本的にはアウディ 100エンジンで、決してパワフルというわけにはいきません。

また、デビュー当初の2リッターから排気量アップされてた2代目930型では、NA(自然吸気)版でも2.7~3リッターに排気量拡大・高出力化されていた911とは性能面で大きな開きがありました。

しかも後々968まで悩まされる、容量だけでなくバランス面も含めたエンジンルーム問題から、水平対向エンジンなど他のエンジンへの換装は困難です。

実際、後に2.5リッターNAの924Sや、968では3リッターまで登場しましたが、最後まで直列4気筒エンジンのままでした。

そこで、911との間を埋める高性能バージョンとしてターボ化が図られ、1978年に発売されたのが924ターボです。

 

ポルシェ 924ターボ / 出典:https://www.porsche.com/japan/jp/accessoriesandservice/classic/models/924/924-turbo/

 

924ターボは排気量こそ1,983ccのままでしたが、ターボチャージャーの装着とそれに伴う再設計が行われ、170馬力(日本仕様150馬力)を発揮。

後に924カレラGTや同GTS、GTRにまで発展し、圧縮比変更やブーストアップで最終的に375馬力を出力します。

デザイン上もフロントに設けられたブレーキとオイルクーラー冷却用のバーチカルエアスロット(空気取り入れ口)が特徴で、後に924Sにも装着されたテールゲートのリアスポイラーを先行装備していました(発売当時の日本では認可されず非装備)。

そして、この924ターボにより満足いく動力性能が得られたとして、911後継を担うものと一度は決定。

911は2代目930型が最後のモデルになるはずで、カレラGTはその布石となるグループ4ホモロゲーションモデルとして400台が生産・販売されました。

しかし、前述のエンジンルーム問題での発展性の乏しさと、市場からの強い要望もあって911が継続されることになり、1988年に924が生産を終えて以降もポルシェFRスポーツは独自の進化(924→944→968)を経て、現在のミッドシップスポーツ、ボクスターに至ります。

 

ル・マン24時間レースへの参戦

 

現在もレースで多用されるポルシェ 924  / Photo by James Willamor

 

924はイギリスでワンメイクレースシリーズがあるほか、アメリカでも944のワンメイクレースシリーズに2.5リッター版の924Sで参戦可能です。

そして、それらに参戦するプライベーター向けクラブスポーツ版、924S SEや924Le Mansといった特別仕様がアメリカやイギリスでは販売され、盛んなレース活動が行われました。

もちろん924のモータースポーツにおける最高のキャリアはポルシェワークスによる耐久レースへの参戦で、1980年のル・マン24時間レースには2リッターターボの924カレラGTを3台出場させ、最高位は総合6位・GTPクラス3位。

翌1981年にも2.5リッターターボ化して”944LM”(1983年に発売される944の前身)の名で1台、前年に続き2リッターターボながらよりパワーアップした924カレラGTR2台(1台はフランスのプライベーター)で出場、944LMが総合7位、GTP+3.0クラス優勝しています。

 

ポルシェ 924カレラGTR / Photo by The359

 

1982年はアメリカやイギリスのプライベーターチームが合計3台の924カレラGTRを走らせて、最高位が16位・IMSA GTOクラス優勝で、これが924によるル・マン最期の出場となりますが、その後もニュルブルクリンク1000kmレースへは1984年まで出場していました。

 

主要スペックと中古車相場

 

インタークーラーを追加した924カレラGT / Photo by Ben

 

ポルシェ 924 カレラGT 1980年式

全長×全幅×全高(mm):4,230×1,735×1,270

ホイールベース(mm):2,400

車両重量(kg):1,180

エンジン仕様・型式:M31/50 水冷直列4気筒SOHC8バルブ ICターボ

総排気量(cc):1,984cc

最高出力:210ps/6,000rpm

最大トルク:28.6kgm/3,500rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FR

中古車相場:158万円(1977年式924)

 

まとめ

 

ポルシェ 924 / Photo by Thibault Le Mer

 

“ポルシェ”というブランドに憧れ、かつスポーツカーに乗りたいという人ならば、まず憧れるのは911、あるいはエントリーモデルながら高い性能を誇るミッドシップのボクスターやケイマン、オールドカーファンなら356や550の名も上がるでしょう。

その一方で、914と並び924 / 944 / 968といった一連のFRスポーツの名が挙がることは、他のモデルと比べて、あるいはSUVやパナメーラ、928と比べても少ないかもしれません。

しかしスーパーカー世代にとっての憧れや、現在のリアルな存在より身近では無いとしても、968までの累計で20万台以上を売りさばき、特にそのうち半分以上を占める924は、決してそれらより劣るものでは無いのです。

発展系の944ターボがBNR32スカイラインGT-Rなど、黄金期の国産スポーツがベンチマークにされたことでもわかるように、924は立派なポルシェ一族の1台でした。

 

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