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軽自動車と言えば日本独自のガラパゴス規格というイメージでしたが、軽自動車規格が660ccになった1990年1月以降はスマートKや近年でもケータハム セブン160などいくつかの「輸入軽自動車」が登場しました。ポーランド製のフィアット 126も、そんな1台です。

フィアット 126 / Photo by Sludge G
かの名車、フィアット 500(ヌォーバ500)の後継車、126

フィアット 126 / Photo by Tony Harrison
フィアット 126とはどんな車かと言えば、一言で言うとフィアット 500の後継車です。
アニメ「ルパンIII世」でルパンの愛車として登場することが多いため知名度は高く、ミニやビートル同様、世界中で愛される古きコンパクトカー、500(チンクチェント)の後継となると、「名車の後継車」にはよくありがちな問題があります。
それが「偉大過ぎる先代に対し、どうしても色あせてしまい影が薄い。」というもので、販売開始された1972年はイタリア国内もあまり景気が良く無く、しかも代を譲ったはずの500が同じエンジンを積んで5年ほど継続生産されていたもので、必要性すら疑われる事に。
メカニズムは500とほぼ共通のRR(リアエンジン・後輪駆動)車、燃料タンクなど装備品のレイアウト変更で車内の有効スペースを拡大する努力が払われ、グリルレスのフロントマスクなど、ヘッドライトが角型なのを除けば、初代スバル R2を思わせるところも。
ただ、どうしても500ほどデザイン上のインパクト、つまり「可愛らしさ」が無いとされ、単なる安い日常のアシとして、それほど愛されることも無いという不遇の車でした。
結局1980年頃(一説には1987年とも)までイタリアで生産された後は、1973年から権利を得てライセンス生産していたポーランドのFSM社、1992年以降はフィアットに買収されてフィアット・オート・ポーランド社での生産に移ります。
一方、日本では1990年1月に軽自動車規格が改正され、排気量上限が660ccに。
そうなるとサイズ的には従来から軽自動車規格に収まっていたので、500から受け継いだ空冷直列2気筒の594cc、652ccエンジン搭載モデルが1990年1月以降生産されたものなら、軽自動車として新規登録が可能になりました。
そこから注目を集めたのは1997年に登場し、並行輸入ながら1998年には日本での販売も始まった初代MCC スマート フォーツークーペが登場した時です。
600ccターボエンジンを搭載、リアフェンダーを除けば軽自動車規格に収まる2シーターのマイクロカーだったので、フェンダーを加工して軽登録仕様での販売も始まり、後に正規輸入販売が始まった時には正式な軽自動車仕様、スマートKもラインナップされました。
「輸入車でも軽登録ができる車があるのか!」と人気になったところで、もしかして他にもそういう輸入車があるかもしれないと思い探してみたところ、フィアット 126が既に少数ながら軽自動車として登録、販売されていたのでした。
とにかくひたすら古くてチープ!しかし「軽自動車登録可能な輸入車」という一点で魅力的

フィアット 126 / Photo by Tony Harrison
スマート登場と共に脚光を浴びた126ですが、輸入車らしく日本車に無い素晴らしい乗り味や上質な内装を持っていたのかといえば話は別です。
搭載していた空冷直列2気筒エンジンは前述のようにフィアット 500から受け継いだ、つまり元をたどれば1950年代後半の年式の古いエンジンで、排ガス規制に対応するため、改良を受けていたとはいえ振動や騒音面で厳しい事には変わりません。
一時期リアハッチとラゲッジスペースを設けていましたが、そのスペースをヒネリ出すためにエンジンを横倒しにするとエンジンの故障が増えたため、衝突安全性を高めるボディ補強など改良を行った際にリアハッチをやめ、普通の2ドアボディに戻りました。
エンジンが多少改良され、燃料タンクがリアシート下に移ったのでフロントのトランクスペース(リアエンジンなのでフロントがトランクになる)が広く、ボディ形状が変わって車室が多少広いものの、定員の4名乗車はかなりキツイ車内。
とにかく低コスト車なのでエアコンなどは無く、空調といえばベンチレーター(吸気口)と熱風と常温を選べるファンのみ。
乗り味は、多少悪路を走ると天井に頭をぶつけるほどボヨンボヨンと跳ね、オートマなどは当然無いどころか4速ミッションの1速はノンシンクロなので、ダブルクラッチでも駆使しない限り走行中には、まず入れられません。
それでも国産車らしからぬデザインと、「軽登録できる輸入車」という点には価値がありました。
2000年まで生産され、改造車ながらオープンカーもあり

フィアット 126改「POP2000」(日本ではPOP650) / Photo by peterolthof
なお、イタリア本国での生産終了後も2000年までポーランドで生産を続けられた126は、基本的には1990年以降生産されたものが軽自動車登録可能です。
そのため、「軽自動車登録可能な輸入車」として並行輸入された新車のほか、中古車を輸入して日本で軽自動車として新規登録されたものもあるかもしれません。
そうした中古車の場合、1990年より前に生産されたものは軽登録できない場合もあり、純粋に126が好きだ、イタリア製の126に乗りたいといった希望が無い限りは、注意が必要です。
また、1989年に並行輸入業者によって少数が輸入されたと言われている、カブリオレ(オープンカー)モデルがあります。
西ドイツ(当時)のコーチビルダー(架装業者)によって製作、POP 650の名で販売されたこのカブリオレモデルは、1989年製でも軽自動車登録は可能だったようで、1990年1月以降の軽登録を見越し652ccエンジンを搭載していました。
フィアット 126、代表的なスペックと中古車相場

フィアット 126 / Photo by Eamonn Stack
フィアット 126 elx 1999年式
全長×全幅×全高(mm):3,109×1,377×1,335
ホイールベース(mm):1,840
車両重量(kg):600
エンジン仕様・型式:空冷直列2気筒OHV4バルブ
総排気量(cc):652cc
最高出力:17.6ps/4,500rpm
最大トルク:4.2kgm/3,000rpm
トランスミッション:4MT
駆動方式:RR
中古車相場:139万~194.4万円(軽登録不可のものも含む)
まとめ

フィアット 126 / Photo by nakhon100
フィアット 500のように、古い小排気量の外車を軽自動車登録で所有できないか?
その答えは残念ながら大抵の場合「NO」で、国産車でもホンダS500 / S600や三菱 500のように排気量は現在の軽自動車より小さいながらも、生産時点の規格に適合しないため軽登録ができないのと同じ理由です。
しかし、それが長い間生産されていくうちに軽自動車規格の方が拡大して「新車生産時点で軽自動車規格に適合している」なら話は別。
そんな車はそうそう無いだろうと思ったら、数少ないながらも事例あり!として夢がかなったのがフィアット 126です。
それもスマートKやケータハム セブン130、フレイザー FC-4のように、「ベース車を軽自動車規格に合わせて手直し」したのではなく、そのまんまノーマルで軽自動車規格に適合する新車、という珍しい例です。
基本的には古い車を排ガス規制に何とか適合させながら作り続けていただけなので、近代的な車の快適性を望むのは難しいとはいえ、古い外車が好きで乗り続ける意思のある人なら苦にはならないと思います。
名車フィアット 500と異なり熱烈なオーナーズクラブというのは数少ないのですが、フィアット車繋がりで比較的情報も豊富なだけに、どうせ乗るなら変わった車にしよう!という人にとっては、満足できる車だと思います。
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